【イノベーションの論点】Vol.4 輸出販売に失敗しないために必要なレギュレーション調査とは【前編】~薬事Overview調査

この【イノベーションの論点】は、ビジョン・オリエンティッド・コンサルティング(VOC※)を標榜し、企業や業界のビジョン創発を支援しているインテージのコンサルタントメンバーが、企業の課題解決に向けた独自の視点やアプローチについて解説するコラムです。今回はシニアコンサルタントの尹錦花が海外向けに自社製品を輸出販売する際に必要なレギュレーション調査について、薬事関連を例に解説します。

【目次】

はじめに

日本で定評がある製品を海外市場に輸出販売する際に、マーケットポテンシャルやローカルユーザーニーズなどから市場チャンスを見極めることは言うまでもないプロセスだ。
一方、各国における法規制などが販売可否および販売方法に影響するため、レギュレーションの観点からその販売可能性を調査することも忘れてはいけない。

特に近年は健康食品や機能性化粧品、OTC医薬品などの輸出販売も増えており、これらのカテゴリーに関しては、各国の薬事規制について事前に確認する必要がある。

レギュレーション関連事項は文書化されていることが多いので、必要な時にデスクリサーチで調べればいいものだと思うかもしれない。しかし実際に、自社製品の輸出販売を検討し、レギュレーションを調べようとすると、下記のような悩みが発生することが多い。

  1. 製品の輸出販売を検討するたびに個別に販売可否に纏わるレギュレーションを調べると、意思決定までに時間がかかる
  2. デスクリサーチで海外のレギュレーションを調べても、得られる情報が限られたり、曖昧な内容があったりして、判断に困る
  3. 参考となる過去の類似事例をうまく探せない
  4. どのような場合にレギュレーションに引っかかるのか、具体的にイメージできない

ここで推奨されるのが、デスクリサーチだけでなく、現地の事情に詳しい関係者へのヒアリングを併せて行い、公開されている一般的な情報にとどまらず情報収集を行うことだ。インテージでも、この方法で顧客の実態に即したレギュレーション調査を行い、輸出ビジネスをサポートしている。

今回のコラムでは、過去の実施ケースからの知見をベースに、輸出販売の際に必要なレギュレーション調査と注意点などについて解説していきたい。

レギュレーション調査は大きく二つのタイプがある。
一つは、全体像を把握するためのOverview調査、もう一つは、特定製品の輸出販売可否を判断するための特定製品の薬事規制調査である。前編となるこの記事では、Overview調査について解説する。

薬事規制のOverview調査

“薬事規制のOverview調査”は、薬事規制の基本的な情報について網羅的に調べ、全体像を把握する俯瞰的な調査である。
調査項目には、カテゴリー定義や分類、薬事登録申請フローや申請に必要な期間、成分規制、包装ラベル規制、といった基本的な事項が含まれる。

Overview調査は例えば以下の様な背景で実施する。

【実施背景の例①:参入機会を探る】
海外市場への輸出販売について検討しているものの、まだ具体的な候補国や候補製品が決まっていない状況で、まずは各国の薬事規制の基本情報を網羅的に把握し、参入機会を探りたい。

【実施背景の例②:意思決定スピードアップのための社内基礎資料整備】
対象カテゴリーの製品を複数保有している場合、輸出販売を検討するたびに製品ごとにレギュレーション調査を実施するのは時間がかかり、意思決定スピードが遅れる。今後輸出可能性がある候補国に関しては、基本的な薬事規制関連情報を把握しておきたい 。

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Overview調査で網羅すべき確認点

下記はOverview調査のレポート目次例である。

  1. カテゴリー分類と定義
  2. 輸入販売規制、必要な行政手続
  3. 薬事申請プロセス
  4. 安全品質基準
  5. 成分規制
  6. 包装ラベル表示規制
  7. 広告宣伝規制
  8. その他補足情報および注意点等

上記の目次に沿って、確認すべき主な内容を具体的に説明する。

1.カテゴリー分類と定義

ここでは、法令で定められている対象カテゴリーの定義と分類について確認する。
例えば、日本では化粧品として販売されている製品Aは、ある国では、医薬品に分類されることもあり、この場合は医薬品の販売規制が適用される。

輸出販売に際しては、なるべく諸手続きを簡素化し、リリースまでの時間を短縮したいので、可能であれば規制が比較的少ないカテゴリーとして登録し、販売したいものだ。
例えば、健康食品や機能性食品よりは一般食品として、化粧品よりは日用雑貨として販売できたほうが、商品登録手続きも簡単で規制もより少ない。
そのためには、まずこれらの規制が少ないカテゴリーに分類される可能性があるかを確認したい。もしくは分類されるためにクリアすべき条件(どのような成分基準を満たさなければならないかなど)を確認する必要がある。

ここでは併せて、該当カテゴリーの製品に適用される可能性がある、最新の関連法規も確認する。例えば、健康食品・サプリメントに適用される可能性がある法的規制には、国にもよるが、医薬品売買関連法、医薬品ライセンス規定、禁止医薬品規制、広告販売規制、毒物法、などが挙げられる。

2.輸入販売規制、必要な行政手続

ここでは、対象カテゴリーとして輸出販売する場合に必要な、行政手続きや所管官庁などについて確認する。

行政手続きには、税関手続き、事前の許認可、製品登録手続き、などがあり、所管官庁として、これらの手続きにかかわる主な関連機関とそれらの役割、管轄範囲などを確認する。

例えば、医薬品に分類されると、輸入販売するために製品の国家登録証明書が必要となり、厳しいチャネル規制と広告規制がある。製品の取り扱い企業を規制する国もある。また、国によっては、医薬品を輸入できるのは自国の会社と自国に代理店を持つ外国会社のみとなっている場合もある。

一方で、国やカテゴリーによっては、事前の許認可と登録義務がない場合もある。ただし、実際の輸入時に税関で健康食品や化粧品を医薬品と判断されるなど、望ましくないカテゴリーに分類されてしまう可能性がある。このような税関でのトラブルを避けるためにも、事前にカテゴリー分類を確認し、必要に応じて交渉できる様に準備しておくことが望ましい。

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3.薬事申請プロセス

ここでは、薬事申請や製品登録に関する手続きについて確認する。申請フロー、申請項目、必要書類、所要期間などが含まれる。

カテゴリー分類が確認できれば該当カテゴリーの申請フローや必要な提出書類は明文化されていることが一般的である。
ただし、注意しなければならないのは、国によっては、明文化されている内容が非常にシンプルであり、実際書面に書かれている必要書類を準備して窓口に行ってみると、これでは不十分と言われ、追加書類を求められるようなことがよくある、ということだ。追加要求された書類を用意して再び窓口に行くと、また追加書類を求められることもある。

このような手間を省き、スムーズに手続きを進めるために、申請プロセスについてはあらかじめ事情に詳しい関係者に確認を入れることが有効である。

4.安全品質基準

ここでは、輸入業者、製造業者、卸売業者、販売業者に定められている各国の安全品質基準について確認する。
現在のところ、EUでの安全品質基準が最も厳しいと言われる。米国の場合は、州ごとに基準が違っていて、カルフォルニア州の基準が最も厳しいとされる。

5.成分規制

ここでは、安全性および人の健康に影響を与える可能性のある成分の配合量規制や、使用してしてはいけない成分などについて確認する。
制限されている成分を見ると、重金属(銅、鉛、水銀など)、微生物(酵母、カビ、など)、ビタミン、ミネラルなどが含まれる。
新成分の場合は、既存の法規では判断できないことがあり、その場合は事情に詳しい関係者に過去事例などから使用可否や対処方法などについて確認することが望ましい。

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6.包装ラベル表示規制

ここでは、パッケージや製品ラベルに記載すべき必要情報と記載に関する規定や注意事項などについて確認する。
また、カテゴリーによっては、容器の材質や形状に対しても規制されている場合がある。

ラベル表示に関してよくある疑問の一つが、特許情報の表示可否だ。日本もしくは第三国で取得した特許情報を製品ラベルに表示していいかどうか、国によって対応が変わってくるので、併せて確認しておきたい。

ラベル表示において、もう一つ大事なのが機能や効果効能に関する訴求文言である。
健康食品や機能性化粧品の場合は、製品パッケージやラベルで機能や効果効能を訴求する際、効能を強調する文言や対象部位などがどこまで容認されるかを確認する必要がある。また、容認される文言/表示の例、好ましくない文言/表示の例なども併せて確認しておきたい。虚偽、誤解を招くような文言は一般的に不正とみなされるので要注意である。

7.広告宣伝規制

ここでは、広告や販促の規制を確認する。ラベル規制と重複する内容もあるが、管轄部門や適用する法規が変わるので別途確認することが望ましい。
健康食品や機能性化粧品などに関しては、薬事広告および販促許可の管理対象となることが多い。
機能訴求に関する容認・禁止・注意事項、使用が好ましくない用語・表現の例示、容認される用語・表現の例示などを具体的に確認するほか、過去にどんな問題が起きたのかも調べておきたい。
一般的に、治療または予防効能訴求、虚偽内容(化学物質が入っているのに100%天然等)、科学的に十分に証明できていないことに関する訴求、消費者に誤解を与えるような表現などは問題になりやすい。

8.その他補足情報および注意点等

ここでは、上記1~7でカバーできていない対象国や対象カテゴリーに関する補足情報や独自事情、注意点などについて補足する。
また、過去の類似事例や、レギュレーションに引っかかって問題になったケース、最近の動向などについても必要に応じて確認する。

ここまで、Overview調査で抑えておくべき項目を具体的に説明した。これらを知っておくことにより、進出国での販売可否や進出に向けてのプロセスがわかるようになり、輸出対象製品が決まるごとに一から調べる手間が省け、より迅速でスムーズな意思決定が行える。後編では、実際に特定の製品を輸出販売することが決まった後に行うべきレギュレーション調査と、これらを行う際におすすめの手法について解説する。

※ビジョン・オリエンティッド・コンサルティングの詳細はこちらのページをご覧ください。

著者プロフィール

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尹 錦花 (イン キンカ)

北京大学卒業後来日。早稲田大学大学院国際関係学専攻。
調査会社2社を経て、2005年インテージに入社。
中国語・韓国語・英語・日本語のマルチリンガルを活かし、業種・業態特化せず、海外調査・海外進出支援に関するコンサルティングを多数行う。アジア全般、欧州、南北アメリカ、アフリカ、オセアニア等エリア問わずPJを推進。


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