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何で選ぶ?自治体・返礼品ランキングから考える寄附先選び~ふるさと納税実態調査⑦~

※この記事は経済産業所(RIETI)のコラムに一部加筆・修正して掲載しています

私たちは2022年度、2023年度、2024年度のふるさと納税に関する調査を行い、その結果を発信してきました(※1)。今回も引き続き、全国約1万人を対象に、2025年度の「ふるさと納税実態調査」を実施しました。
総務省が公表する「ふるさと納税に関する現況調査」とは別の角度から最新動向を明らかにし、2026年度のふるさと納税の傾向を探ります。

これまでのふるさと納税実態調査の記事はこちらからご覧ください。

1. 2025年度版 ふるさと納税寄附先自治体トップ20

7月31日に総務省から公表された令和8年度「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、ふるさと納税寄附額は約1兆3,314億円、納税寄附件数は約5,963万件となり、いずれも過去最高を更新しました(※2、p.2)。
同調査結果内で発表されている納税受入額ランキングと、生活者が最も多くの金額を寄附した自治体ランキングを比較してみましょう。

図表1

2025年版ふるさと納税寄附先自治体人気ランキング(総合)

図表1左側の地図と中央の表は総務省が発表している「R7年度におけるふるさと納税受入額 上位20団体(※2、p.10)」です。1位は大阪府泉佐野市、2位は北海道白糠町、3位は宮崎県都城市でした。令和7年度の受入額の多い20団体のうち上位の顔ぶれは令和6年度と似ていますが、今年度新たに千葉県銚子市が18位にランクインしました。銚子市の寄附額は70億円を超え、前の年度の約26億円から2.6倍以上に増加しました。銚子漁港は、全国有数の水揚げ量を誇り、銚子市のふるさと納税推進班によると、「厚切り銀ざけ」や「骨取りさば」の切り身がお得感があると食卓で人気を集めているとのことでした。(※3)

次に、「ふるさと納税実態調査」の結果より、生活者サイドから人気の寄附先自治体ランキングを見てみましょう。図表1の右の表は、2025年1~12月にふるさと納税で寄附をした人のうち、寄附先の自治体を回答した8,492人の回答結果から作成しました。(同率順位の自治体があるため上位21自治体を掲載)。
ピンクの網掛けは、左側の総務省の納税受入額ランキングにも入った自治体で、13自治体が総務省の納税受入額ランキングの自治体と一致しました。

2. 2025年度版 寄附先上位21自治体の返礼品の特徴

図表2は、回答者全体を対象とした寄附先自治体人気ランキングと、それぞれの自治体に最も多くの金額を寄附した人が選択した返礼品(上位3位まで)を分析した結果です。

図表2

2025年版ふるさと納税寄附先自治体人気ランキング(総合)と返礼品の特徴

返礼品の特徴をみると、宮崎県都城市では1位から3位までを肉が占めていました。北海道白糠町や紋別市、別海町など北海道沿岸部の自治体では1位が海産物でしたが、2位に牛肉も選ばれています。肉類や魚介・海産物が1位に選ばれる自治体は全国的にも有名な地域名産品を有しており、寄附者は「肉類や魚介・海産物ならこの自治体」といった連想を強く持つため、毎年、ランキングでも上位になる傾向にあります。

また、1位に米が選ばれた自治体は6自治体あり、米価格が高騰した昨年は、返礼品としての米の需要の高さがうかがえます。黄色で示した日用品であるトイレットペーパーやティッシュペーパーといった紙製品が1位に選ばれたのは、静岡県富士市、富士宮市、栃木県小山市です。この中で富士市は「紙のまち」として知られ、全国のトイレットペーパー生産量の約4割を占める自治体であり(※4)、地場産業といえる製紙業から返礼品を用意し、多くの寄附者に選ばれたといえます。米や生活必需品は、近年の物価高の影響から家計を助けるとともに、地域農産業支援の役割も果たしていると考えられます。
ここで16位の愛知県名古屋市に注目してみると、ランキングで唯一、「美容・健康家電」が1位となりました。名古屋市の返礼品には、市内に本社がある企業の製品・ブランドとして「ReFa」や「SIXPAD」、「radiant」といった製品が用意されており、地域企業のブランド力のある返礼品が人気を集めています。紙製品が日常生活を支える実用品であるのに対し、美容・健康家電は、興味のあるブランド製品を試し、その魅力に触れる楽しみを提供しているといえるでしょう。

このように寄附者の返礼品の選び方をみると、肉類や魚介・海産物、果物など普段利用している食品よりも高級な地域名産品を選ぶ「ご褒美型」、物価高を受けて家計を少しでも楽にするためにお米や日用品などを選ぶ「生活防衛型」、地域企業が提供する暮らしの質を高め楽しさをもたらす商品・サービスなどを選ぶ「価値体験型」、といった特徴に整理できます。

ふるさと納税が始まってから18年が経ち、寄附者が増え、近年の物価高の影響もあり、返礼品を選ぶ基準となるニーズは多様化しています。寄附者は、自分の価値観やニーズに合う返礼品を地域性のある自治体との組合せで選択していることがうかがえます。自治体や地場・地域産業の企業は、地域らしさや地域特性を持った返礼品を、寄附者の価値観に合うように伝える努力が、今まで以上に求められます。

3. 返礼品だけじゃない?ふるさと納税の理念と災害支援

ふるさと納税の制度は、寄附者の生まれ故郷、興味があり好きな地域、応援したい地域といった自治体を「ふるさと」とし、寄附によって「ふるさと」の地域創生を支援する仕組みとして導入されました。しかし、制度本来の理念(※5)が十分理解されず、寄附により得られる返礼品に多くの関心が集まっていることも事実です。では、寄附先の自治体を決める要因は、理念に沿っている寄附者/理念にそっていない寄附者で違いがあるでしょうか。図表3は、最も多くの金額を寄附した自治体を選ぶ際に最初に決定した要因を比較したものです。

図表3

寄附先の自治体選択で最初に決定した要因(理念に沿う人/沿わない人別)

「理念に沿って選んでいる」、「理念に沿って選んでいない」のどちらの寄附者も「返礼品のジャンルや品目」が寄附先を決める際に最初に決定した要因として最も高く、「理念に沿って選んでいない」寄附者では48.8%と約半数を占めています。一方、「寄附金の使い道や政策」や「自治体」を最初に決定した要因とする割合は「理念に沿って選んでいる」寄附者の方が高く、2つの要因を合わせた割合は37.6%と全体の3分の1以上となり、「返礼品のジャンルや品目」の割合を上回り、「理念に沿って選んでいない」寄附者(14.7%)の約2.5倍となっています。「理念に沿って選んでいる」寄附者の方が、自治体(ふるさと)の地域創生に思いを寄せている可能性がうかがえます。

このような、「理念に沿って選んでいる」寄附行動は、災害発生時において特に顕著に表れます。
2026年7月28日に起きた令和8年熊本地震では、発生から7日を経過した時点で、ふるさと納税を活用した被災自治体へ寄附額が約7億3,000万円を超えました(※6)。また、ふるさと納税は寄附者の税金控除などの手続きが発生し被災自治体の事務処理負担が増えるため、被災していない自治体が代わりに寄附を受け付ける代理受領(代理寄附)の制度があります。今回の熊本地震では、代理受領を含めると200を超える自治体が熊本地震への寄附を受け付けています。

ふるさと納税は被災した自治体を寄附の形で直接応援できるため、多くの寄附者がいち早く支援に動いていることがわかります。ふるさと納税は返礼品に多くの関心が集まっていますが、災害などの緊急時には、制度の理念を反映して自治体(ふるさと)を応援する寄附が実際に行われています。

まとめ 2025年度の結果から見えた2026年度ふるさと納税への示唆

2025年度の調査結果から、人気自治体への寄附は引き続き集中していることが確認されました。肉類や魚介・海産物など、地域を代表する返礼品を持つ自治体が上位を占める一方、米や紙製品などの生活必需品、美容・健康家電なども支持を集め、返礼品に対するニーズの広がりがみられました。

返礼品の選択は、地域名産品を楽しむ「ご褒美型」に加え、物価高を背景とした「生活防衛型」、地域企業の商品などを楽しむ「価値体験型」へと広がっています。

2026年10月には、ふるさと納税の指定基準の見直し等(※8)が予定されており、自治体側に募集費用の透明化と地場産品基準の明確化が求められます。返礼品の基準が見直される中、寄附先として選択してもらうために、返礼品の魅力に加え、地域産業や寄附金の使い道など、自治体ならではの価値をどのように伝えていくかが、これまで以上に重要になると考えられます。

図表4

ふるさと納税をした時期(2023年、2025年)

図表4は、10月に制度改定が行われた2023年と2025年について、ふるさと納税をした時期を比較したものです。いずれの年も、例年寄附が増える年末に加え、制度改定直前の9月にも寄附が増えています。2026年も10月に基準の見直しが予定されていることから、9月に寄附が増える可能性があります。 こうした中、令和8年熊本地震の発生後、ふるさと納税を活用した被災自治体への寄附が進んでいます。制度改正前の駆け込みと被災地への支援という二つの動きが、2026年の寄附の時期や寄附先の選択にどのように表れるのか、引き続き注目していきます。


※1 著者らのこれまでの発信
2022年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「これからどうなる?ふるさと納税~ふるさと納税実態調査①~」、インテージ「知るギャラリー」、2023年10月10日
https://gallery.intage.co.jp/furusato-nozei2023/
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「自治体・返礼品ランキングからみるふるさと納税~ふるさと納税実態調査②~」、インテージ「知るギャラリー」、2023年12月22日
https://gallery.intage.co.jp/furusato-nozei2023-2/
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「ふるさと納税の現在地~2つの調査結果より」、RIETIコラム、2023年11月17日
https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0738.html
小西葉子・小川光・伊藝直哉・伊藤千恵美「ふるさと納税におけるワンストップ特例制度の効果検証:寄附先の集中と制度の満足度に与える影響」、RIETI-DP 24-J-009, 2024年3月
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/24j009.html
 
2023年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「ふるさと納税1万人調査!利用者の本音と最新トレンド~ふるさと納税実態調査③~」、インテージ「知るギャラリー」、2024年11月12日
https://gallery.intage.co.jp/furusato-nozei2024-1/
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「もっと知りたい!ふるさと納税 いつにする?どこにする?なににする?~ふるさと納税実態調査④~」、インテージ「知るギャラリー」、2024年12月6日
https://gallery.intage.co.jp/furusato-nozei2024-2/
 
2024年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「速報!2024年度ふるさと納税の最新動向 ~ふるさと納税実態調査⑤~」、インテージ「知るギャラリー」、2025年6月6日
https://www.intage.co.jp/gallery/furusato-nozei2025-1/
 
2025年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「速報!2025年ふるさと納税の返礼品選択と制度改正の影響~ふるさと納税実態調査⑥」、インテージ「知るギャラリー」、2026年4月17日
https://www.intage.co.jp/gallery/furusato-nozei2026-1/
 
※2 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/001085011.pdf
 
※3 日本経済新聞 ふるさと納税、県内昨年度 銚子70億円、23年度の10倍(2026年8月1日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO97900310R30C26A7L71000/
 
※4 富士市 「紙のまち」富士市
https://www.city.fuji.shizuoka.jp/1035050000/miryoku/p007635.html
 
※5 総務省 ふるさと納税の理念
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/
 
※6 内閣官房 内閣官房長官 令和8年8月3日記者会見より
https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202608/3_a.html
 
※7 内閣府 令和8年熊本地震に係る災害救助法の適用について(令和8年7月28日)
https://www.bousai.go.jp/pdf/260728.pdf
 
※8 総務省 ふるさと納税の指定基準の見直し等
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zeimu04_02000144.html


【調査概要】
「ふるさと納税実態調査」
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
スクリーニング対象者条件:20~64歳男女/有職者/個人年収300万円以上(※)
本調査対象者条件:スクリーニング回答者のうち、2025年1月~12月にふるさと納税制度で寄附を行ったと回答した方
標本サイズ:n=10,850
調査実施時期:2026年1月28(水)~2026年1月30日(金)
(※)総務省の「全額(2,000円を除く)控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」に従い個人年収300万円以上を対象者条件と設定した。

著者プロフィール

小西 葉子(こにし ようこ)プロフィール画像
小西 葉子(こにし ようこ)
筑波大学システム情報系教授
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員(特任)
統計委員会臨時委員
経済・財政一体改革推進委員会 ワーキング・グループメンバー
総合資源エネルギー調査会臨時委員
独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業応援士

名古屋大学大学院にて博士号(経済学)を取得し、2025年より現職。2016年から経済産業省の「ビッグデータを活用した新指標開発プロジェクト」に携わり、コロナ禍にはインテージ社をはじめとする民間企業と協業し、消費動向把握とその発信を積極的に行った。計量経済学の知見を活かし、Well-being、消費、観光、省エネ政策等、幅広い分野の研究を行う。
https://www.rieti.go.jp/users/konishi-yoko/

筑波大学システム情報系教授
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員(特任)
統計委員会臨時委員
経済・財政一体改革推進委員会 ワーキング・グループメンバー
総合資源エネルギー調査会臨時委員
独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業応援士

名古屋大学大学院にて博士号(経済学)を取得し、2025年より現職。2016年から経済産業省の「ビッグデータを活用した新指標開発プロジェクト」に携わり、コロナ禍にはインテージ社をはじめとする民間企業と協業し、消費動向把握とその発信を積極的に行った。計量経済学の知見を活かし、Well-being、消費、観光、省エネ政策等、幅広い分野の研究を行う。
https://www.rieti.go.jp/users/konishi-yoko/

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