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実務で解説 ビジネスに活用できるブランドマネジメント第1回 ブランドエクイティは生活者の中に構築される

「実務で解説」シリーズを、ここまで2本連載させて頂きました。初連載となる「実務で解説 生活者中心で考えるマーケティングフレーム」では、生活者の意識や行動に基づくマーケティングフレームの使い方をお伝えしました。その後、マーケティングフレームを活用する考え方は理解できたが、それを日常の業務に取り入れ、実践するための具体的なリサーチ設計を知りたいというお声にお応えしたいという想いで、第2弾となる「実務で解説 生活者中心のビジネスマネジメントのためのマーケティングリサーチ」を連載いたしました。「実務で解説」シリーズは、 これまで多くの方にお読み頂いております。

これまでは、商品開発や、それに紐づくマーケティングリサーチといった、比較的短期的なマーケティング活動を扱いましたが、第3弾となる「実務で解説 ビジネスに活用できるブランドマネジメント」では、より中長期的な活動となるブランドマネジメントについて、5回にわたって解説していきたいと思います。国内市場では特に、人口減少を見据え、製品使用の習慣化やLTV向上に取り組む企業も増えてきているように思います。ブランドマネジメントは、それらに不可欠な要素の一つだと思いますので、ぜひ活用して頂ければと思います。

1. ブランドとは?

米国マーケティング協会の公式HP (https://www.ama.org/topics/brand-and-branding/)では、ブランドを以下のように定義しています。

A brand is any distinctive feature like a name, term, design, or symbol that identifies goods or services.
ブランドとは、商品やサービスを識別するための名称、用語、デザイン、シンボルなどの特徴的な要素である。

これだけを読むと、商品やサービスの名称、用語、デザイン、シンボルなどを定義さえすれば、ブランドができてしまうように思います。しかしながら、ビジネスでブランドを活用する場合には、「識別」できるか、「特徴的な要素」であるかの判断が、生活者(≒お金を支払う人)に委ねられるということに注意する必要があります。

同じくブランドエクイティは、以下のように定義されています

Brand equity is the intangible value a brand holds in the minds of consumers. It represents how well a brand is recognized, perceived, and trusted in the market. A strong brand equity equates to higher customer loyalty and increased market share.
ブランドエクイティとは、消費者の心の中に存在するブランドの無形の価値である。それは、そのブランドが市場においてどの程度認知され、どのように評価され、信頼されているかを表す。強いブランドエクイティは、高い顧客ロイヤルティと大きな市場シェアにつながる。

ブランドエクイティは、消費者の中にあると定義されています。ブランドをビジネスで活用するためには、商品やサービスの名称などを定義するだけでは不十分で、生活者に識別され(他の商品やサービスとの違いが分かる)、特徴的な要素があると判断され、さらに、強いブランドエクイティを構築することが必要であると言えそうです。本連載では、ブランドを立ち上げ、ブランドエクイティを構築し、維持、成長させること全体を、ブランドマネジメントと呼ぶこととします。

2. ブランドエクイティが構築されるプロセス

ブランドエクイティの構築は、ビジネス活用の視点で考えると、図1のように、「一つのブランド名を起点に、できるだけ多くの情報を紐づけること」と捉えることができます。

図1

ビジネス活用視点から見たブランドエクイティ

一つのブランド名から沢山の情報が想起されるほど、コミュニケーションコストが下がります。例えば、ブランドAと聞くだけで、「シャンプー」であると誰にでも分かってもらえるのであれば、ブランドAの広告宣伝で、それがシャンプーであることを言語化して伝える必要性が下がります。その結果、CMの尺やパッケージデザインのスペースにも余裕ができて、伝えたい新しい情報を伝えやすくなります。ブランドAのロゴを見るだけで「髪がパサついた時に良い」と思ってもらえているのであれば、それを言語化して伝えなくても、棚に置いてあるだけで、髪がパサついた時に購入してもらえるかもしれません。

このように考えると、生活者にブランド名を覚えてもらうことが、ブランドエクイティ構築の第一歩と言うこともできます。ブランド名は、一般的には固有名詞ですので、まず識別 してもらうことが第一歩と言っても良いでしょう。より多くの生活者にブランド名を覚えてもらい、より多くの情報をブランド名と紐づけ、コミュニケーションコストを下げることで、より効率的にビジネスを成長させることができると考えられます。

3. 顧客ベースのブランドエクイティ

一般に「顧客ベースのブランドエクイティ」と呼ばれるモデルに、筆者が加筆したものが図2になります。

図2

顧客ベースのブランドエクイティ

実務的には、セイリエンスからレゾナンスまでを、以下のように捉えると分かりやすいかもしれません。 セイリエンス、パフォーマンス、イメージは、「ブランド」が主語になり、ジャッジメント、フィール、レゾナンスは、「私」が主語になります

レゾナンス: 生活者とブランドとの関係性、「私にとって、ブランドXは●●のような存在だ」
ジャッジメント: 良し悪しの判断、「私は、ブランドXを●●の時に使うと良いと思う」
フィール: 好き嫌いの感情、「私は、ブランドXを使うと安心できる」
パフォーマンス: 機能的価値、「ブランドXは、洗浄力がある」
イメージ: 情緒的価値、「ブランドXは、革新的だ」
セイリエンス: 客観的に認識できること、「ブランドXは、柔軟剤だ」

このモデルは、ブランドエクイティが、Identification(ブランドの認知)⇒Meaning(ブランドの理解)⇒Response(ポジティブな反応)⇒Relationship(強いロイヤルティ)の順に積み上がっていくことを示しています。 先ほどのブランドAを例にすると、ブランドAと「髪がパサついた時に良い」は、生活者の中に全く情報がないところから一足飛びに紐づけることはできないことを示している、と解釈することもできると思います。 みなさんも、一人の生活者に戻ると、ブランドAが「髪がパサついた時に良い」と言われても、シャンプーのことなのか、ドライヤーのことなのか、美容室のことなのか、といったセイリエンスに関する疑問は自然に湧くと思います。 ブランドAが、シャンプーだと分かっていたとしても、「髪がどうなるから、パサついた時に良いのか?」といったパフォーマンスに関する疑問が湧くのも想像に難くないと思います。 ブランドエクイティを構築するためには、生活者がブランド名と、ブランドに関する様々な情報を紐づける順序に沿って、コミュニケーションし、製品体験を提供することが大事になります。

一方で、Identification⇒Meaning⇒Response⇒Relationshipの順に、生活者に情報を提供すれば、ブランドエクイティが構築できるという訳ではありません。IdentificationとMeaningは、情報や製品体験として提供できますが、Responseは“生活者の反応”ですので、情報や製品体験の提供だけでは獲得できないものです。同じ情報と製品体験を提供しても、それがどう評価(≒ジャッジメント)され、どう感じられる(≒フィール)は、生活者一人ひとりによって異なります。レゾナンスについても同様です。同じ情報と製品体験から、そのブランドを「子どもの頃から知っている美容師さん」のようだと思う人もいれば、「カリスマ美容師」のようだと思う人もいるかもしれません。

詳細は、次回以降に譲りますが、ブランドに対する生活者の反応(≒ジャッジメントとフィール)や生活者が感じるブランドとの関係性(≒レゾナンス)が、生活者の購買行動に影響を与えることを鑑みると、生活者理解なくブランドエクイティの構築を考えることはできないと言えると思います。

4. まとめ

『ブランドエクイティは、生活者の中に構築される』という大前提をお伝えしました。ブランドエクイティは、顧客ベースのブランドエクイティに表されるような順序に従って構築されます。これを考えると、ブランドマネジメントは、短期的な成果を求めるものではなく、ビジネスを中長期的に推進するツールと捉えるのが妥当であると思います。 これまでの「実務で解説」シリーズでもお伝えしてきました通り、ビジネスを動かすのは、生活者の意識と行動の変化です。残り4回も、生活者を中心に、ブランドマネジメントを考えていきたいと思います。

※このシリーズのまとめ読みはこちらから。

著者プロフィール

平井 公一 株式会社インテージ マーケティング企画推進部 プリンシパル・コンサルタントプロフィール画像
平井 公一 株式会社インテージ マーケティング企画推進部 プリンシパル・コンサルタント
大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

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