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なぜ、Z世代はSNSで複数のアカウントを使い分けるのか?

諸説はありますが1996年〜2012年頃に生まれた世代を「Z世代」と呼んでいる年代層です。物心ついた頃からインターネットにつながったデジタル機器やSNSが身近にあったことから「デジタルネイティブ」な世代とも言われています。また、タイパやコスパ、多様性といったキーワードとともに、かれらの特徴が語られることも多いようです。そこで、今回は多様性やその尊重にもつながる「自分自身の使い分け/(SNS)アカウントの使い分け」をテーマにお届けいたします。SNSで複数のアカウントを保有し、目的や気分によって使い分けを行っていることはよく知られていますが、その背景にはどのような理由があるのか、あるいは、どのような心理が働いているのか、に迫りたいと思います。

なお、今回のテーマは私だけで心もとないので、入社1~2年目のZ世代の社員とともに探求を進めました。
最後にリアリティのある会話形式のやりとりも収録していますのでお楽しみに。

1. 大人とZ世代で真逆。「自分自身の使い分け」の理由

直近の自主調査(2026年4月)において、15~79歳の男女に「自分自身の見せ方や素の自分(本当の自分)を状況に応じて使い分けていることがありますか?」という質問を投げかけてみたところ、全体では3割弱の人が「使い分けている(よく使い分けている+ときどき使い分けている計)」と回答しました。
年代別にみると15~29歳のZ世代では49%と約半数が使い分けを強く自認しています。そして、30~49歳では36%、さらに上の50~79歳では18%と、年代が上がるにつれて、使い分けの意識は弱くなっています。50~79歳に至っては「使い分けることはない」が約半数を占めており、自分自身の見せ方や素の自分の使い分けに関する自認や実行の機会は下の年代層と比較してかなり少ないようです(図表1)。

図表1

自分の見せ方や素の自分の使い分けに関する自認状況

自分の見せ方や素の自分を使い分ける理由について確認したところ、全体(15~79歳)では「相手に合わせて円滑にコミュニケーションしたいから(38%)」が4割弱を占めトップに。次いで、「場の空気や相手に配慮したいから(33%)」、「場にふさわしい振舞いを意識しているから(27%)」が続きました。上位を占めたこれらの項目には「場の雰囲気や相手の気持ちを重視する」といった意識が通底しているように映ります。

ここで、Z世代の回答に着目してみると、自分を使い分ける理由に別の意識が横たわっていることが浮かんできます。
Z世代も「場の空気や相手へ配慮したい」という理由はあるものの、「自分のイメージや気分を守りたいから(33%)」や「自分が気持ちよくいられるか(26%)」、「自分が楽しめる雰囲気をつくりたいから(25%)」といった、「自分の気持ちや周囲からの見られ方」を重視していることが理由になっていることが浮かび上がってきました(図表2)。

図表2

人に対して自分を使い分ける理由

また、あらかじめ準備した選択肢による回答に加えて、使い分けの理由や実態を自由に記述してもらい、その回答を生成AIと一緒に読み解くという試みもしてみました(図表3)。その結果、15~29歳は「多様性・距離感」、30~49歳は「役割・世間体」、50~79歳は「礼儀・TPO・配慮」というキーワードが導出されました。15~29歳は「自分らしさとの距離感の確保」、30~49歳は「社会的役割・トラブル回避」、50~79歳は「礼儀・TPO・相手への配慮」という理由も先のキーワードの背後にあるものとして提示されました。これらのキーワードを先のアンケート結果と一緒に眺めてみると、Z世代が「自分の気持ちや周囲からの見られ方」を理由に使い分けをしている、という結果と通じる文脈であることに気づきます。そして、Z世代より上の年代に見られた「場の雰囲気や相手の気持ちを重視する」という意識も、「役割・世間体」や「礼儀・TPO・配慮」といったキーワードと親和性の高いものであると思います。

図表3

自分の使い分け方(テキストによる自由回答を生成AIとともに分析)

《各世代の主なコメント》 ※原文ママ
〈15-29歳〉
・初対面や、知り合い程度の人であれば、基本笑顔でマイナスの感情は一切出さないけれど、本当に親しい人や家族には、悩み事や、嫌なことは嫌と伝えている(女性21歳)
・大学の友達と昔からの友達は使い分けています。昔ながらの友達はなんでも言えるしずっと喋っていますが大学の友達はなかなか上手く喋れないし自分を出せません(女性20歳)
・仕事のアカウントとプライベートアカウントを使い分けていたから趣味とかバレなかった(男性18歳)
〈30-49歳〉
・SNSのサブアカ(素)と本アカ(礼儀正しい)で使い分け(女性41歳)
・友人の前ではダルダル、職場ではしっかりした人間を演じる(女性32歳)
・家族、友人、職場、応対する相手や場所によって全部異なる  正確には異なる自分を使い分けるというよりは、自分の中のどの部分を相手に見せるのかの使い分け(男性34歳)
〈50-79歳〉
・仕事では丁寧で落ち着いた話し方をしていても、プライベートでは砕けた話し方をしたりしている(男性52歳)
・SNSでは仕事と趣味のアカウントを持ち、使い分けている。仕事用では上品で丁寧な自分を見せているが、趣味用では実際に自分を知っている人からもフォローされているので少し素の部分を出している(女性63歳)

さらに、「キャラ変・テンション調整・素の種類を保持」という使い分けのスタイルにも着目してみたいと思います。これらの言葉は、「Z世代はいくつかの素と思えるキャラクターを自分の中に持っている」ということを言い当てていそうです。30~49歳に対して「本音を隠す・良い人を演じる」といった形で、素(本音)は別のところに隠している、と指摘しているのとは対照的な読み解きとなっています。また、Z世代が「意識的に切り替える」としているのに対して、30~49歳は無意識、50~79歳では当たり前として染みついている、という違いも見られました。

これらの読み解きから、Z世代はいくつかのキャラクター(人格)を自己に内在させており、周囲の環境や自分の気分・テンションにあわせて自分自身を上手に切り替えて、過ごしやすい状態を保っている、と言えそうです。

2. Z世代におけるSNSの中の「自分自身」の使い分け

先の表の15~29歳の「場面」の中に‘SNS’という言葉が挙がっていました。
ここからはXやInstagramといったSNSにおける自分自身の使い分けについて見ていきましょう。

調査結果によると、Z世代に該当する15~29歳の半数(52%)がXやInstagramのサブアカウント(本アカウントの他に所有しているサブのアカウントのこと。以下サブアカ)を持っていると回答しました。SNSのサブアカの保有率は30~49歳では2割、50~79歳では1割と年代が上がるにつれて大きく減少していくので、SNSのサブアカの活用はZ世代の特徴的な行動と言えるでしょう。

世代別に詳しくみてみると、Z世代ではXのサブアカ保有率は46%、Instagramは45%と拮抗しています(図表4)。一方、ここで挙げた3つのSNSの中では一番新しく登場したTikTokは23%、4人に1人程度と、XやInstagramと比較すると半分程度に留まっています。上の世代に目を移すと、30~49歳では一番スコアの高いXでも24%とZ世代の半分程度に。そのまた上の50~79歳となるとトップのXでもそのまた半分(13%)となります。

図表4

サブアカウントの所有状況

XやInstagramはサブアカも作りやすく、家族、学校・職場、趣味(コミュニティや界隈)で使い分けている人も多いようです。推し活をはじめとした趣味の世界では、おなじ嗜好を持った人とつながりたい、という欲求も満たしてくれます。また、SNSのアルゴリズムが自分の嗜好用に最適化した情報を表示してくれることから、趣味目的でサブアカを利用している人にとっては、使えば使うほど使いやすいものになることも、その背景にあると思われます。

SNSにおけるサブアカ利用の理由を尋ねたところ、全体では「興味・関心ごとに情報を整理したい」や「情報収集と発信を分けた方が効率的」、「個人情報やプライバシーを守りたい」など、情報管理の効率化やリスク回避といったデジタルサービスを使いこなすための理由が上位に並びました(図表5)。これらはZ世代も共通して高く、さらにZ世代特有の項目として、「同じ趣味の人だけとつながりたい」や「思い切り没頭できる場所が欲しい」といった理由が見られました。
また、全体ではスコアの低かった「相手や場によって見せたい自分を変えたい」や「自分には複数の側面(キャラ)があると感じる」が高めであるのも、Z世代ならではの傾向と言えるでしょう。

図表5

アカウントを使い分けている理由

これらの結果からZ世代はSNSの世界でもサブアカという便利な機能を用いて巧みに自分自身を使い分けている様子が浮かんできました。デジタルネイティブなかれらにとっては、SNSのサブアカという機能がかれらの持つ資質や特性とフィットして、情報ツールという存在以上に、現在の社会をより心地よく快適に生きる上で有用なツールとして、支持されているのかも知れません。

3. Z世代社員と語る、「キャラ変」のリアルとビジネスのヒント

ここまで、Z世代の「自分の使い分け」の実態やその背景にある心理について見てきました。では、心地よく生きることを重視し、自分を使い分けるZ世代にはどのようなアプローチが効果的なのでしょうか?最終章では本企画・分析を担当した若手社員のお二人とともに、マーケティングやコミュニケーションプランの立案におけるヒントについて語ってみたいと思います。

田中宏昌(以下 田中):探究前、‘自分自身の見せ方や素の自分の使い分け’という言葉にややネガティブな印象を持っていました。最近のワカモノはKY(空気を読まない人)であることを避け、ごく自然に周囲の空気を読みながら振る舞い、なかなか本音を言わない、と語られているからです。

丸山ひなた(以下 丸山):会議の時、山村さんと「状況によって服装や話題を切り替えている」、「ゼミではきれいめの服で“しっかり者”っぽくしてたし、サークルではカジュアルでラフな感じだった!」という話で盛り上がりました。

山村咲羅(以下 山村):そうそう!私も「久しぶりに友だちと会うときには相手がどんな服を着てたのか、昔の写真まで遡ってチェックしたりしています」なんて話をしました。

丸山:普段、自分たちが無意識的に行っている「自分の使い分け」、その理由を探求テーマにしたら、SNSの施策立案などに役立ちそうかな、と。

田中:調査票もお二人が企画してくれたことで、興味深い選択肢も生まれましたね。「キャラ」など、使い分けのヒントになる言葉も自然と織り込んでくれて、ここにも発見がありました。また、自由回答の読み解きも生成AIと‘対話’を重ねながら、というアプローチも興味深く見守っておりました。

山村:今回は世代による使い分けの違い以上に、Z世代の使い分けの理由の探究・深堀りが興味深かったです。「自分が心地よくいられるか」とか「楽しめるか」といった、ポジティブな理由だったことに少しホッとしました。

丸山:そうそう。逆に上の年代になるほど「礼儀だから」とか「役割的に必要だから」っていう“義務的な使い分け”が増えていくのも面白かったですね。また、無意識に、自然と、いう部分にも社会的な立場や経験がそうした振舞いをさせているとも読めました。若者は「自分が気持ちよく/自分が楽しめる雰囲気を」のように能動的でポジティブな使い分けでした。

田中: SNSのサブアカについてはどのような気づきがありましたか?

山村:Z世代は「安心して楽しめる世界を確保する」ため、とも読み取れました。もともと持っている「自分らしさの尊重」という意識を実現するためのツールとして、SNSのサブアカがあるようなイメージです。

丸山:最近はワカモノ向けのコミュニケーション施策をプランニングする際、SNSを中心に置くことも多いです。今回の探究を念頭におくと、従来のような「〇〇クラスター」といった形で、あるワカモノをあるタイプにセグメントするような、これまでのアプローチが通用しにくくなっているのかもしれません。シーンやその時々の気分に合わせて、ポジティブに、そして、巧みに自分の“素”を切り替えて、心地よく生きるワカモノを捉えるための新しいアプローチが必要なのかもしれませんね。
SNSに限らずデジタルをうまく使えば、個人の中の「ある一面」を狙ったコミュニケーションを準備することも可能なはずです。SNSのサブアカを複数持っていることを前提に、さまざまな気分やシーンを想定して、メッセージやクリエイティブを準備することで、より目に留まりやすいコミュニケーションを創ることができるはずです。

山村:おススメされるなら「あなたにはこれ」というより、「こんな気分のときにはこれ」くらいの方が自然とメッセージも受け取れる気がします。それから、商品そのもの、というより、商品を使っている人やシーン、インスタならその商品を取り巻く世界観みたいなものがひっかかるポイントにもなっていると思います。

田中:たしかに「界隈マーケティング」などは、生活者の趣味・嗜好、推しなどの ‘とある側面(人格やキャラ)’ にフォーカスして、接点を創ろうというアイデアです。Z世代のポジティブな情報収集経路・発信経路の切り替えと接続しやすい接点を上手に設計することで、有効なタッチポイントが創れそうですね。「シーンやその時々の気分に合わせて」、さらには「世界観」というお二人の言葉をヒントにするとすれば、界隈とともに使われる「世界観」といった言葉もコミュニケーションデザインのヒントになりそうです。

著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 電通リサーチ(株式会社電通の100%グループ会社 当時)に入社。
1994年より電通の大規模生活者データベースの立ち上げメンバーとして参画。
以後、2012年まで消費者研究センターや電通総研などの横断機能組織に駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。
その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。

2012年 楽天グループ(株)を経て、2013年 インテージへ。
2020年より現職。

思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。
記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。
趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 電通リサーチ(株式会社電通の100%グループ会社 当時)に入社。
1994年より電通の大規模生活者データベースの立ち上げメンバーとして参画。
以後、2012年まで消費者研究センターや電通総研などの横断機能組織に駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。
その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。

2012年 楽天グループ(株)を経て、2013年 インテージへ。
2020年より現職。

思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。
記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。
趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

著者プロフィール

データドリブン推進本部 データマネジメントユニット サービスDX部 丸山 ひなたプロフィール画像
データドリブン推進本部 データマネジメントユニット サービスDX部 丸山 ひなた
インテージ2024年入社。
おもに飲料・アルコール業界を中心に、パネルリサーチを担当。
仮説を考えながらデータを掘り下げ、数字だけでなくその背景や要因を読み解くことが好きです。
趣味はミステリードラマ鑑賞、お笑い、コスパフレンチ料理巡りです。

インテージ2024年入社。
おもに飲料・アルコール業界を中心に、パネルリサーチを担当。
仮説を考えながらデータを掘り下げ、数字だけでなくその背景や要因を読み解くことが好きです。
趣味はミステリードラマ鑑賞、お笑い、コスパフレンチ料理巡りです。

著者プロフィール

マーケティング・プランニング 第1ユニット1部5グループ 山村 咲羅プロフィール画像
マーケティング・プランニング 第1ユニット1部5グループ 山村 咲羅
インテージ2025年入社。
主に外資・雑貨業界を中心に、パネルリサーチを担当。
データの背景にある消費者の意識・行動を想像することに面白さを感じています。
休日は旅行やドライブを楽しむことが多く、知らない土地を巡るのが好きです。

インテージ2025年入社。
主に外資・雑貨業界を中心に、パネルリサーチを担当。
データの背景にある消費者の意識・行動を想像することに面白さを感じています。
休日は旅行やドライブを楽しむことが多く、知らない土地を巡るのが好きです。

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「出典:インテージ「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

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