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「レンタル友達」が映し出す、若年層の新しい一人行動―ひとりで完結しない消費とは

本コラムでは巻末に無料ダウンロードレポ―トのご案内があります。ぜひ最後までご覧ください。

はじめに

「一人行動」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。一人カラオケ、一人テーマパーク、一人焼肉…。

「一人行動」自体は年代問わず強まっている行動ですが、近年では、Z世代の約4割が一人行動を経験しているというデータもあり、近年では若年層においても一人行動が身近なものになっているのかもしれません。※1

筆者自身も若年層に含まれますが、日常的に一人行動をしています。とはいえ、それは「一人で何かをしたいから」でも、「一緒に行く人がいないから」でもありません。ただなんとなく、そうしたいからです。

例えば、2025年の年末。有馬記念の入場券を手に入れた私は、一人で現地に向かいました。普段から競馬を見ているわけでもなく、誰かを誘うこともできたかもしれません。それでも、「なんとなく行ってみたかった」という理由で、一人で行きました。同世代にこの話をすると共感されることが多い一方で、親世代からは「なぜ一人で?」と不思議がられることも少なくありません。その「なぜ」に対して、自分でもうまく説明できない状態でした…。

今回、「レンタル友達」を利用している若年層へのインタビューを皮切りに、若年層の一人行動について調査を行ったことで、この“言語化できなかった感覚”の正体が見えてきました。

1. 「3つの要素」 から成り立つ若年層の一人行動

早速、今回のインタビューの中でも特に特徴的だったある高校生の発言をもとに、若年層の一人行動について解説していきます。そこには3つのプロセスがありました。

【起点】一人で自由に体験する

図表1

【起点】一人で自由に体験する

この高校生は、カラオケや焼肉、遊園地についても「一人の方がいい」と話しており、一人がいい理由として次のように語っています。
・誰かに遠慮しなくていい
・好きなことを好きなだけできるのは一人

ただし、単に「一人がいい」わけではなく友人と過ごす際に生じる様々な調整を意識してのことでした。具体的には、
・歌いたい曲がマイナーなので、気を遣ってランキングから場が盛り上がりそうな曲を選ぶ
・本当は焼肉では思う存分、網の上にホルモンを広げたいけれど、みんなはカルビとかが好きなので気を遣う
・遊園地では、遠慮なく自分の乗りたい乗り物に乗れない

などです。つまり他者と過ごす際に避けることができない調整や遠慮が、「一人の方が良い」と感じる理由の要因となっていたのです。

さらに特徴的な行動として「レンタル友達」を利用している点があげられます。
レンタル友達とは、お金を払って友達のように一緒に過ごしてもらうサービスのことです。会話や食事、買い物、イベントへの同行など、依頼者の要望に応じて、契約した時間内で楽しむことができます。
このサービスについては、次のような価値を感じているといいます。
・相手も商売なので、悩み事など肯定的に話を聞いてくれるので安心して話せる
・話し相手にも聞き手にもなってくれるし、一定の距離を保ちながら人といることができる

ここからも先ほど説明した配慮、他者と過ごす際に避けることができない調整や遠慮が必要ない点がこのサービスを利用した大きな理由であるとご理解いただけると思います。

これらの発言から見えてくるのは、若年層にとってコミュニケーションとは“調整の連続”であるという点です。
食べるものや、会話の内容、時間配分、それ以外にもLINE(ライン)の返信タイミングなど、対面でもオンラインでも「相手に合わせること」が前提になっています。
その結果、若年層はそのような“調整”から解放されたいという気持ちが高まり、一人行動へとつながっていると考えられます。

【内面化】その体験を自分の中に貯める

図表2

【内面化】その体験を自分の中に貯める

若年層にとっての一人行動は「その場で完結」しているわけではありません。
先ほどご紹介した高校生は、レンタル友達の経験をSNSに投稿しており、次のような発言が続いていました。
・SNSは自分が見返すための日記のようなもの
・「この日こんなことがあった」と記録する役割が大きい

SNSは承認欲求のための発信と思われがちですが、実際には、”感情の整理・記録のためのツール“として使われている側面が強いことが分かります。
これは一人行動に限らず若年層全体に見られるSNSの使い方ではありますが、一人行動においても、体験を自分の中で“ためる”ことが、その価値を高める一つの要素になっている可能性が示唆されました。

【共有】会話のネタとして共有する

図表3

【共有】会話のネタとして共有する

若年層の一人行動の最も特徴的なポイントは「共有の目的」にあります。
インタビューをした高校生は、レンタル友達の経験をSNSに投稿をする目的として次のように語っていました。
・投稿したSNSを友人に見てもらうことで、「レンタル友達したんだ?どうだった?」といったような反応を期待している
・友人から反応が来ることで、そこからまた仲良くなったり、次の遊ぶ約束を取り決める話に発展したりすることもある

この方はレンタル友達の例に限らず、一人で行った「ハーバリウム作り体験」についても次のような発言をしています。
・綺麗だから行ってみたいという気持ちと同時に、SNSに投稿したら友人から「反応が来そう」という期待もあり、一人で行ってみたし、SNSに投稿した

これらの発言から見えてくるのは、一人行動を友人との会話のネタとしてSNSに投稿しているという点です。

若年層にとって一人行動は、“孤立”ではなく“友人との関係を自然に深めるための前段階”として捉えられているようにも思えます。一人で体験したことを蓄積し、SNSで共有することで、相手に負担をかけずにコミュニケーションが生まれ、「次の関係」につながるきっかけになっていることがうかがえました。

2.一人行動が「一人で完結しない」理由

図表4

まとめ

では改めて、ここまでの具体例を整理していきたいと思います。
本調査からは、若年層の一人行動は、「気を遣わず一人でいたい」と「誰かとつながりたい」という、一見矛盾する2つの思いを両立する行為として捉えられていることがうかがえました。
その行為を分解すると、
①【起点】一人で自由に体験する(=調整コストをなくす)
②【内面化】その体験を自分の中にためる(=感情を整理・記録する)
③【共有】あとで会話のネタとして共有する(=関係づくりに活用する)

という3つの要素が順番に、そして互いに関連しながら、一人行動の価値を形づくっている可能性が示唆されました。
つまり、若年層にとっての一人行動は単なる個人的な楽しみ方に留まらず、あとから誰かとの関係の中で意味づけられる行動として機能している側面がセットであると考えられるのです。

3. 企業は”次のつながり”まで設計できるか

図表5

若年層の一人行動

ではそんな若年層の一人行動を、サービスや体験設計に反映させるにはどうすればよいのでしょうか。シンプルに以下のような要素を追加することが有効だと考えます。
・少し珍しい体験
・人に話したくなる要素
・自分なりの楽しみや発見ができる余白
・写真や動画として残したくなる体験

これらの要素を加えることで、体験は「その場で完結するもの」ではなくなります。
一人で過ごした時間が、個人の記憶として蓄積され、さらには他者との会話や関係へとつながっていく、“広がりのある体験”に変わっていくのです。

ただし注意すべき点もあります。
あくまで筆者の実感として、一人で訪れた場所に後日友人と再訪するケースはそれほど多くないように感じます。
本調査をもとに考えると、若年層にとって「同じ場所へ再訪すること」よりも、「体験をきっかけに新しい行動へ広がること」に価値が置かれている可能性がうかがえます。その背景には、ここまで見てきたように若年層にとって人との行動は、調整の連続であるため、「すでに自分が体験したものに相手を付き合わせること」自体に気遣いが生じるのかもしれません。
したがって、本調査を踏まえると、単に「一人客を増やす」ことだけでは十分な効果につながりにくい可能性があります。
一人での体験を入り口として、「別の体験へと自然につながる導線」を設計できているかという視点が重要になるのではないでしょうか。

例えば、以下のような例が考えられます。
・一人でハーバリウム体験へ行ったあと、友人と自然園や植物イベントなど、関連性のある別体験へつなげる
・一人焼肉に行った後、系列店の焼肉以外の食べ放題やグループ向け店舗へ誘導する
・一人で美術館に訪れた後、ワークショップに参加し友人と限定写真を撮ったり、限定展示へつなげる

こうした導線を設計することによって、一人行動はより広がりを持つ消費へと変わります。
繰り返しになりますが、一人行動は「個で完結する消費」ではありません。
むしろ若年層にとっては、「個から始まり、関係へと波及していく消費の起点」と捉えることが重要です。

この前提に立ち、どのように体験を設計するのか、どのようにコミュニケーションを取るべきか。
今後もインタビューを重ねながら、さらに解像度を高めていきたいと思います。


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エンタメ経験の「情報共有」頻度
情報共有が経験価値に与える影響
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新しさ・希少性を感じるポイント
具体的に価値あると感じたエンタメ経験
コミュニティ内での推奨情報を見て行動した経験
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Z世代の人間関係やつながりのひとつである“界隈”
Z世代が“界隈”に感じている価値
Z世代が所属する“界隈”が活性化するポイント
【考察】Z世代に刺さるエンタメ経験とは
【考察】エンタメ経験を後押しする“界隈”での発信

■個票
Z世代の大学生・予備校生・高校生8名

今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
調査概要 
期間:2025年12月
対象者:まねきねこ会員様から抽出 7名(男性3名、女性4名)
調査手法:オフラインデプスインタビュー(1人60分)
調査地域:東京都

本稿では、一人行動を起点としながらも、その体験がSNSでの共有やコミュニケーションを通じて人とのつながりへ広がっていく可能性について考察しました。こうした若年層のコミュニケーションや関係構築のあり方などについて、より広い視点から知りたい方は、以下からダウンロードできるレポ―トもぜひご覧ください。

関連サービス

【デプスインタビュー(DI)】
一対一でインタビューを行うことで、表層的な情報収集ではなく、対象者の生活・行動実態を深く、詳細に掘り下げて聴取することができます。また、質問への答え・反応に応じて、生活・行動実態の裏側にある理由・動機・願望・不満・価値観など、対象者の深層にインタビュアが深く入り込んで質問し、明らかにしていくことができます。

参考文献

参考サイト 
※1:「僕と私と」むしろ、ひとりが楽しい!?Z世代の4割が“ソロ活”経験あり。「ひとり時間の過ごし方」に関する意識調査を実施


著者プロフィール

青柳 怜那プロフィール画像
青柳 怜那
エクスペリエンス・デザイン本部 アドバンストリサーチディレクション3部
2025年に大学卒業後、インテージに新卒で入社。
定性調査のリクルーティング・フィールド業務に従事。
最近は一人映画や一人プラネタリウムを楽しんでいる。

エクスペリエンス・デザイン本部 アドバンストリサーチディレクション3部
2025年に大学卒業後、インテージに新卒で入社。
定性調査のリクルーティング・フィールド業務に従事。
最近は一人映画や一人プラネタリウムを楽しんでいる。

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