With コロナ ~新しい年を、新しい日常とともに~

With コロナ ~新しい年を、新しい日常とともに~

この記事は、インテージが生活者理解の拠点として立ち上げた、生活者研究センターセンター長 田中宏昌による「Withコロナの新しい日常」に関するコラムの第4弾です

【目次】

  1. マスク姿のサンタさん
  2. 第3波襲来。生活者の不安は再び
  3. 緩まぬ不安と緩まぬ財布の紐
  4. ‘健康’こそお宝なり
  5. 2020年ヒット商品番付に浮かぶ世相
  6. With リスク~備えよ、常に

1. マスク姿のサンタさん

私が暮らす東急東横線元住吉は駅の西口を出るとすぐに「ブレーメン商店街」という商店街が始まります。全長は約550メートル、加盟店は約180店舗にのぼり、平日、休日を問わずいつもなにかのイベントが行われているかのごとく大賑わいの商店街で、観光で訪れる方も多いようです。緊急事態宣言中は、「混雑する商店街」の代表格として、品川区の「戸越銀座商店街」とともに、位置情報を用いた混雑状況の計測結果が度々ニュースで取り上げられていました。
「ブレーメン商店街」はその名の通り、ドイツ・ブレーメン市ロイドパサージュと1991年に友好提携をしており、10月にはドイツ・ブレーメン市で975年もの長きにわたって開催されている「フライマルクト」というお祭りが開催されています。ビールやソーセージなどドイツやブレーメン市にちなんだお店も多く立ち並び、毎年10万人以上の人が訪れる一大イベントになっています。商店街の飲食店ではドイツのビール純粋令に基づいて醸造された本格派モルトのオリジナルビール、「モトスミブレーメンビア」も販売されています。
12月に入り、いつもと同じように元住吉駅西口に飾ってある「ブレーメンの音楽隊の像」のロバや犬、猫ににわとりが赤いサンタさんの衣装を身にまといました。いつもの風景と違うのは、みながマスクをしていることです。

東急東横線 元住吉駅 西口 「ブレーメンの音楽隊の像」
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筆者 撮影

2. 第3波襲来。生活者の不安は再び

10月下旬から恐れていた新型コロナウイルスの再々拡大が始まりました。第3波の襲来です。20年3月から日々収集している弊社の「Withコロナアンケート」では、コロナ禍における生活者の不安をさまざまな視点から観測をしています。生活者の消費意識や行動の変容において重要な要因となる「感染拡大不安」については、直近では8割弱の方が不安を抱いていると回答しています。ひと月前、第2波の底とも思えた時期と比較すると1割ほど増えています。感染者の増加に合わせて不安も増加しており、これまで以上のスピードで感染者や重篤者が急増している第3波を目の当たりにして、生活者の不安も連動して大きく増えていると考えられます。

「感染拡大不安」は生活者の行動にもブレーキをかけています。
「Go toキャンペーン」といった政府や自治体の経済施策が行われている中、「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街など人が大勢集まる場所」、さらには「国内旅行」に関する不安についてはすべてが増加しています。特に「飲食店での食事(不安計65%)」や「テーマパークや繁華街など人が大勢集まる場所(不安計76%)」は急激に増加しており、「不特定多数の人との接触」については警戒心が高まっていることがわかります。
「国内旅行(不安計71%)」については郷里への帰省が始まる時期ではありますが、今年のお盆同様に感染予防を第一とした判断や行動が一定程度なされるのではないかと想像しています。(図表1)

図表1ihr-column4_01_2.png

3. 緩まぬ不安と緩まぬ財布の紐

このところ、アメリカ、イギリス、そして、ロシアなどで相次いで新型コロナウイルスに有効と思われるワクチンの開発が成功し、通常よりも簡易な臨床実験を経て認可が進み、実際の予防接種もはじまりました。
日本においても、アメリアのファイザー社から6000万本のワクチンを確保して、早ければ2021年3月以降に予防接種をはじめるといった報道もありました※1。今後、有効なワクチンの普及や効果的な治療法の確立、さらには医療体制の充実などが揃ってくれば、生活者の行動を抑制する「感染拡大不安」は軽減に向かっていくと考えられます。臨床実験が少ないことや副作用などの検証が十分ではないことにより、現時点では人々の予防接種の意向はそれほど高くないようですが、今後、普及が進み安全性や効果が証明されれば、意向も高まるものと考えます。
それまでは、感染者数の変化に敏感に呼応しながら、「不安」もまた上下を繰り返すと思います。第3波、ピークアウトはいつになるのでしょうか。ワクチンの普及といった微光も差し込んできましたが、生活者の「不安」が緩むのは、当分先になりそうです。

「感染拡大不安」以上に長引きそうなのが不透明な先行きに起因する経済の不安です。もっと身近な言葉に置き換えるなら「暮らし向きの不安」や「家計の不安」です。そして、それらの不安が「節約」という意識や行動に結びつきます。
最新の定点アンケートでは2割の人が「暮らし向きが今より悪くなる」と回答しています。1か月前と比較すると8pt上昇しており、増加傾向が見てとれます。そして、「節約意識(家計の節約を心がけている)」は6割に達しています。こちらは第2波初頭の7月からほぼ変化がありません。(図表2)
以前から冬のボーナス削減のニュースがメディアを賑わせています。また、有期雇用者、派遣社員の契約終了のニュースも続いています。なんとか第2波までは持ちこたえてきた企業や飲食店も第3波の襲来により、より厳しい局面を迎えています。生活者が実感できる経済の回復がないかぎり、固くかたく結ばれたお財布の紐が緩むことはなさそうです。

図表2ihr-column4_02.png

4. ‘健康’こそお宝なり

長引く新型コロナによって、生活者の関心はマスクや手指の消毒といった新型コロナウイルスの感染予防だけでなく、より広義の「健康」を求めるように変化してきました。新型コロナの感染予防からマスクや手洗い、手指のアルコール消毒が日常化したことにより、インフルエンザの発生数は例年になく少ない状況が続いています。厚生労働省に発表によれば、最新(49週11月30日~12月6日)の指定医療機関のインフルエンザ報告数は「63」と前年同時期の「47,200」に比べて1%未満となっており、極端に少ない状態です※2

現在のコロナ下において生活者は病院に行くリスクをできるかぎり遠ざけて、より「健康」であることを目指したさまざまな取り組みを続けています。緊急事態宣言時には、外出自粛によって家の中での時間が増えたことや運動不足を理由に家の中でも行える運動に注目が集まりました。中でもヨガやプランクなどYouTube上にアップされた動画は無料で手軽にチャレンジできることから登録者を一気に増やしたチャンネルも登場しました。
「【地獄の11分】マンションOK!飛ばない脂肪燃焼ダンスで全身の脂肪をみるみる燃やす!」といった外出自粛で家の中に閉じこもっていた視聴者のハートを射抜くタイトル&コンテンツを次々と繰り出して一躍スターに駆け上がった竹脇まりなさんの「Marina Takewaki(略称たけまり)※3」チャンネルは187万人の登録者を誇り、現在も登録者を増やし続けています。
私も在宅勤務が始まってひとつき後くらいのときに、オンオフの境目があいまいな働き方にメリハリをつけるために、妻が見つけてきてくれた「たけまり」を仕事終了の区切りとして始めました。飛び跳ねたりするダンスもなく、マンションでも周囲を気にせずにできることから、とてもよいリフレッシュとなっています。「仕事が終わると勤務表に終了時間を入力する。おもむろに部屋にヨガマットを敷いて、デスクトップ上の「タケマリ」のショートカットをクリックする。」は終業時のルーティンとなっています。

たけまりさんの話だけをしていると編集長に怒られてしまうので、アンケートのデータも眺めてみましょう。

「新型コロナの影響を受けて、新しく始めたり、見直しをしたことはなんですか?」と尋ねたところ、約2割の人が「より健康的な食生活を送るようになった」と答えています。また、約1割の人が「健康を意識して運動をするようになった」と答えていおり、どちらの項目も女性の方が高くなっています。(図表3)

図表3ihr-column4_03.png

生活者の「健康」への意識が高まる中、日々の食生活を見直して栄養バランスの良い食事を摂るようにしたり、自分の体力や年齢に合わせて無理のない運動をはじめたり、といった動きが見て取れます。運動については、新型コロナの拡大当初、緊急事態宣言に伴う外出自粛要請時には運動不足の解消がきかっけになった人も多かったようですが、新型コロナの長期化によって、無理なく手軽に、そして気長に続けられる運動として家の中でもできるエクササイズが人気のようです。家の中であれば天候に左右されることもなく、なにより、「今年の漢字※4」でもある「密」を避けることができますから。
そして、「家族の健康」への意識も高まっているようです。2割弱の方が「家族の健康に対してより気を配るようになった」と回答しており、特に女性においてその傾向は強くなっています。栄養バランスが偏らないよう複数のおかずを準備したり、緑黄色野菜や食物繊維、さらには発酵食品など免疫力強化に効果があるという食べ物を用意したりと、日々の食生活においてさまざまな工夫がなされていると思われます。

運動とともに日々の食生活から健康を。
今、まさに‘健康’こそお宝です。

5. 2020年ヒット商品番付に浮かぶ世相

最後に2020年の締めくくりらしく、日本経済新聞社さんが毎年この時期に発表している恒例の「ヒット商品番付」を眺めてみましょう。(図表4)

図表4ihr-column4_04.png

東の横綱は空前のブームとなっている「鬼滅の刃」。西の横綱は「オンラインツール」でした。吾峠呼世晴先生の「鬼滅の刃」は累計発行部数1億2000万部突破の大人気漫画ですが、ブームの最中、最終巻となる第23巻が2020年12月4日に発売されるやいなや売り切れが続出し、300万部にせまる勢いで売れています。また、最終巻の発売に合わせて2日連続で全国5紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、日本経済新聞)をジャック。12月4日の朝刊では「1億冊感謝記念広告」が4面にわたって掲載され、SNSでも大きな話題となっていました。メルカリでは、さっそく完全コンプリート版が出品されて高値を付けておりました。
また、映画の「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の興行収入も公開からわずか59日間で302億円を超え、歴代1位に迫っています。日本で公開された映画の歴代興行収入ランキング1位は「千と千尋の神隠し」(2001年)の308億円の記録を塗り替えるのも確実と言われています。
2020年は「鬼滅の刃」が席巻した年だった、と言えると思います。まさに横綱、名横綱です。

ランキングを眺めてみると、「健康」にまつわるモノ・コトが多くランクインしていることもわかります。家で過ごす時間が増えたことから「おうち料理」の機会が増え、その内容もより健康を考えたものにシフトしています。また、朝昼晩の食事以外にも「バナナジュース」や野菜ジュースなどで栄養バランスを整えたり、不足分を補うといったことも増えています。
「宅トレ」は「たけまりさん」(たけまりさん以外にもB-fileのマリコ先生なども人気でした!)。通勤・通学は3密を避けて「自転車」で、という人も話題となっていました。大手自転車販売店のサイクルベースあさひさんの2020年8月中間単体決算によれば前年同期比15%増の391億円、純利益が61%増の42億円と、中間決算としてともに過去最高だったとのこと。
また、リモートワークや在宅勤務でリアルに顔を合わせることが減ってしまったり、常にマスクを着用しているためにしっかりとしたメイクは減ったというニュースも目にしていますが、その一方で、「スキンケア」に時間とお金を投入して、ベースそのものをきれいに、という意識が高まったようです。TV会議などで自分の顔をモニタでみるたびに、「きれいでありたい」という気持ちがくすぐられたのでは、と考えます。男性についても同様で「男性用コスメ」に手を伸ばした方も多かったようです。
弊社の売れたものランキングに目を移すと、マスクを筆頭に、衛生用品が上位に並びますが、「プロテイン粉末」もしっかりランクインしており、「健康・食・運動」という世相を反映しているように思います。

「新型コロナ感染予防」を目的にした衛生行動にとどまることなく、より健康でありたい、免疫力を高めて病気に負けないカラダを手に入れたい、という意識が高まっていると考えます。また、長期化の様相から、「健康のために手軽にはじめられる・続けられるモノ・コト」が選ばれる傾向も継続しそうです。
2021年はどのようなランキングになるのでしょうか?
新型コロナ色のない、健やかなランキングになることを祈りたいと思います。

6. With リスク~備えよ、常に

生活者は新型コロナ対策としてだけでなく、根源的な「健康」を希求しています。職の安定や暮らしの安定が脅かされでも「健康」であればチャレンジもできます。病に倒れてしまうことを「リスク」として捉え、より長期的な視点から「視なおし」を進めているのだと思います。

新型コロナの長期化にあたり、いっそう視野を拡げ、「With コロナ」ではなく「With リスク」。
暮らしにおけるさまざまな「リスク」を想定し、常に備え、生きる。

「今年の漢字」よりも文字数が多いですが、私が選ぶ今年のことばは「With リスク」です。

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筆者 揮毫

おわり

※1 NHK 新型コロナ特設サイト 「ワクチン開発 進捗状況は」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medicine/detail/vaccine.html?tab=2

※2 Tenki.jp 「インフルエンザ報告数 まだ少ない状況続く」 2020.12.12
https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2020/12/12/10774.html

※3 Marina Takewaki チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCw7HTQv0F4CB9zGRhqosYsg

※4 日本漢字能力検定協会が毎年一年の世相を表す「今年の漢字」を発表している。
発表会場は京都市東山区の清水寺で、大きな和紙に貫主が揮毫するのが習わしとなっている。
2020年は「密」が選ばれ、揮毫した森清範貫主は「密は心のつながりも表す。新型コロナウイルスの
感染拡大で国民や医療従事者が苦労している中、日本中が努力してこの状況に向かっているのを
ありがたいと思いながら書いた」と語っている。
参考:Yahoo!ニュース 「今年の漢字は「密」 新型コロナ反映、京都・清水寺で発表」 2020.12.14 
https://news.yahoo.co.jp/articles/1000341a0482a8ad2a2b16ac97ed232652e44e77

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生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

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生活者研究センター センター長
田中 宏昌(たなか ひろまさ)

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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