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インタビュー調査でより深い生活者の理解を

マーケティングリサーチには、大きく分けると「定量調査」と「定性調査」の2種類の調査があり、調査目的によって使い分けをされます。この記事では、定性調査の代表的な手法であるインタビュー調査について、その強みや調査技法をインテージクオリスのモデレーター 松元 一隆が解説します。

インタビュー調査で、生活者の考え・気持ちを明らかに

定性調査では様々な形でインタビュー調査を行っています。インタビュー調査の良いところは、生活者の考えや気持ちをより深く理解できることです。

人が行動を起こしたり、何かを判断したりする時には様々なことが影響しています。それは、本人の中で整理されていない場合もあり、時として本人も意識していない、すなわち潜在的な意識であることもあります。

顕在化していること=自覚していることは言葉として表現できますが、自分で意識していないこと=潜在的な意識は言葉にできません。

また、本当はいろいろな要因が影響しあった上で、その結論(商品・サービスや銘柄の選択、購買など)にたどり着いているのですが、本人でさえもそれをきちんと整理して、整然と説明できるとは限りません。皆さんも、「深く理由は考えたことはないが」でも「BよりAが良い」と思うことは多々あると思います。

時には、第三者から見れば不合理と思えるような判断もします。 こちらの方が明らかにお得なのに、便利なのに・・・、と思うような行動がしばしば見受けられます。

でも、その時に、深く考えたつもりはないが、「その方が良い」と思って選択し、行動しているのです。本人が強く意識していないだけで、何かしらの理由はあるものです。

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インタビュー調査の良いところは、その場で質問をどんどん重ねていくことができることです。定量調査では、回答に対して質問を重ねていくにも限界がありますが、インタビュー調査であれば、意図しているところまで何度も質問を重ねることができます。

そうして質問を重ねていくことで、インタビューをされる人の考えや気持ち、それに影響を与えている背景などを深く理解し、その因果関係や意識構造を解きほぐして、マーケティング課題の本質に迫ることができるのです。

「違うこと」と「同じこと」に注目する

とはいえ、意識構造を明らかにしたいからといって、

「なぜ、そう思ったのですか?」
「その理由は何ですか?」
「どんな動機があったのですか?」
といった、直球の質問ばかりでは、なかなか本質に迫ることはできません。本人が意識していないことや、なんとなく自覚はしているけれど整理しきれていないことを、うまく説明することができないケースもあるからです。

では、インタビュー調査において、そんなうまく説明できない考えや気持ちを掘り下げ、明らかにするためには、どうすればよいでしょうか。

そんな時の解決方法のひとつは、「違い」や「同じこと」に注目することです。

(1)比べることで、「違い」を探る
まずは、比べてみること。たとえば、同じような事柄や商品、行動について、比べてみるのです。

比べてみると、「こっちの方が○○です」、「これよりは△△です」と言いやすくなります。そこで違いが感じられるのであれば、その違いの理由を、同じだと思われているのであればそこに共通することは何かを探ることで、本質に迫ることができます。
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(2)なくす/置き換えることで、「違和感」を引き出す
また、「なくしてみる」「置き換えてみる」ことも効果があります。

普段あたりまえのように行っていることをやめたなら・・・、使っている商品などがなくなってしまったなら・・・。そんな場合に、どんな違和感、不都合が生じるのかを想像してもらうのです。

そんなことは普段はあまり考えないものですが、普段のあたりまえの行動パターンや環境が「ない」状況を仮定して考えてもらうと、不都合や違和感、満たされないことが浮かび上がってきます。

その際に、普段とは別のものに置き換えてみることで、同様に「同じこと」と「違うこと、違和感があること」を浮かび上がらせることもできます。

これらは、インタビューの中でインタビュアが調査の参加者に想像してもらうことで、それを突破口にして色々と質問を重ねていく方法です。

これ以外にも、「飢餓調査」又は「違背調査」と呼ばれる調査技法もあります。これは、普段使っている商品をあえて数日間使わないようにしてもらったり、普段習慣的に行っている行動を行わないようにしてもらい、そこで生じる「違和感」を探ることで、普段あまり意識せずに使用している商品が、自分にとってどういう価値があるのかを明らかにする調査技法です。その違和感を体験してもらった上でインタビューでお話をうかがうことも、頻繁に行われています。

いずれにしても、まずは実際の行動などの明確なことから、その先に考えていたことや感じていたことなどへと少しずつ迫っていくことになります。

投影法でホンネを引き出す

また、投影法という調査技法があります。投影法は、心理学において被験者の深層心理を探るために使われる技法で、言葉、絵、ストーリーを使うなど、様々な方法があります。その中でも、インタビュー調査の現場でよく使われるものを、ほんの一部ですが、ご紹介しましょう。

(1)人物像に投影する、パーソニフィケーション
たとえば、あるブランドのイメージを明らかにしたい時に、「パーソニフィケーション(擬人法)」という技法を使うことがあります。ブランドの価値につながるイメージは、そのまま聞いても表面的なことに終始しがちです。 そこで、あるブランドや商品を“人”に喩えてもらうのです。もしも、そのブランドが人間に姿を変えたとしたら、どのような容姿なのか、年齢は、仕事は、趣味は、性格は、友達関係は、・・・など、その人物像を描いていきます。

さらに、なぜそのような人物像を思い描いたのか、その理由を突っ込んで質問していくことで、そのブランドのイメージ構造とその要因を探ることができます。この場合も、競合する複数のブランドで行い、比較をすることで、それぞれのブランドの価値構造やパーセプションの違いがより明確になります。
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(2)登場人物の会話のセリフに投影する、カートゥーンテスト
さらに、自分の意見として発言するのをためらうような、商品やブランドに対する批判的なことや、言葉にするのが恥ずかしいと思うこと、その他にも、インタビュー参加者がその場の空気を読んでしまって、ホンネを言いにくいケースもあります。そんな時には「カートゥーンテスト」を使うことがあります。

カートゥーン(cartoon)とは、マンガのことです。この技法では、会話をしている人のマンガを見せて、空白の吹き出しを埋めるセリフを考えてもらいます。
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例えば、Aさんの言っていることに対して、Bさんのセリフを記入してもらいます。

Aさん「なんで、●●(=商品名・ブランド名など)を使っているの? ▲▲を気にする人が多いのに」

Bさん「☆☆☆☆☆☆☆☆☆(セリフを答えてもらう)」

これは、自分ではない第三者同士の会話(意見・気持ち)として置き換え、代弁してもらうことで、言いにくいことを言いやすくしています。 また、インタビュアも、本人の意見としては直接聞きにくいことでも、第三者の意見として問うことで、聞き出しやすくなります。

また、ホンネと建前があることを前提に、言葉にした会話のセリフと、心の中の声というように、二種類のセリフを記入してもらうようなこともできます。この会話のシチュエーションや会話の中身は、その時のテーマに応じてアレンジしていくことになります。

定性調査をうまく活用して生活者を理解し、課題の解決に

あらためて、定性調査、特にインタビュー調査では、生活者の行動の裏側にある意識を探り、その要因や因果関係などを構造的に把握することができます。

定量調査の結果がどうも腑に落ちない、課題に対する仮説が見えてこない、結果から見えた新たな疑問点を解明したい、もっと深く探りたい、などと感じている方は、定性調査の活用を考えてみてください。


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