多様な分野で活用が進む「生体反応計測」とマーケティング・リサーチへの応用

近年、「顔認証」や「表情解析」、「視線行動(アイトラッキング)検知」をはじめ、「脳波(EEG)センサー」といった、生体反応の計測(センシング)技術に注目が集まっており、多様な分野での活用が期待されています。

たとえば「顔認証」技術を応用した製品・サービスとしては、被写体の顔を認識してシャッター・チャンスを調整するカメラがすでに製品化されており、セキュリティ分野での入場管理システムが一部の施設において導入されています。今後はコンビニやスーパーにおける年齢確認や、クレジットカード決済など、より高度な認証システムへの発展が想定されています。

また、「表情解析」技術を用いた製品としては、解析した表情からその日のメイクのお勧めをしてくるミラーなど、ユーザーの表情・感情の変化に合わせたインタラクティブなコンテンツ配信なども実用化されています。

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一方で、生体反応測定技術は在宅医療や遠隔医療への分野でも導入が始まっており、急速な高齢化による深刻な人材不足を解消する手段として大きな期待を集めています。
例えば、高齢者や乳幼児の“見守り・安否確認”から各種“医療・診断支援”、さらには患者一人一人の細かいニーズに沿った医療・介護サービスの実現が、生体反応データの活用によって可能になります。

さらに脳科学を応用した「ニューロ・マーケティング」も盛んです。たとえば、「視線検知」と「脳波測定」を組み合わせることで、被験者が広告の特定部分を見ている時の反応を把握できるなど、従来にない調査が可能となっています。

生体反応計測技術を応用したサービスの市場規模は、2016年の300億ドルから2025年には740億ドルへと伸長すると予測されています。日本においても2016年の250億円から、2025年には2,280億円にまで拡大すると予測され、有望な新市場として注目されています。 

マーケティング・リサーチを発展させる技術 

今日、生体反応計測を最も積極的に活用している分野の一つが、マーケティング・リサーチです。無意識下で行われている生活者の消費行動を知り、消費インサイトを抽出できる手段として、急速に活用領域を広げています。

それまでのマーケティング・リサーチの手法は、質問紙調査やグループ・インタビュー、面接調査などが主流でしたが、こうした手法では、生活者の本音や言葉で表しにくい反応を収集することが比較的困難でした。
しかし、さまざまな技術革新によって生体反応の簡易な測定が可能になったことで、言語化・表面化しにくかった生活者の感情や感覚や、潜在意識の把握までができるようになっています。

一例として、「表情解析」技術を応用した調査手法に触れてみましょう。これは無意識に表れる顔の表情から、人の感情を読み解く手法です。

人の顔には30以上の表情筋があるといわれており、目や口、鼻などを細かく動かすことで複雑な表情を作り出しています。また、米国の心理学者ポール・エクマン氏は、人間には6つの基本的感情(表情)‐“ハッピー”、“驚き”、“悲しみ”、“怒り”、“恐怖”、“嫌悪”‐があると定義しています(表1)。

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表1 6つの基本的感情

表情解析を活用したマーケティング・リサーチでは、こうした理論を応用して表情筋の位置と動きを読み取り、データベースの感情と表情のパターンに当てはめることで、感情の強さを数値化します。これにより、従来は不可能だった生活者の感情の動きを知ることができるようになりました。

TVCM評価に「表情解析」技術を活用

この表情解析が最も多く活用されているのは、TVCMの認知度や好意度、イメージ評価などを測定する“広告クリエイティブ評価調査”です。これは、TVCMを視聴している被験者(視聴者)の表情をカメラで撮影し、表情の動きからTVCMへの反応を解析・分析するもので、被験者が“楽しい”、“理解できる”と感じたり、“注目している”タイミングなどがわかります。このデータはクリエイティブの改善点を明らかにし、カット割りや演出の変更を決定する材料として役立てられています。

現在はTVCMや動画の情報だけでなく、香りに対する反応など、視覚情報以外での応用に向けても研究が進んでいます。

“非言語的”な調査手法が主流に

このように、現在のマーケティング・リサーチは、言葉をベースとした伝統的調査方法と、生体反応計測技術を用いた“非言語的”な調査手法を組み合わせて、多面的に生活者を理解する方向に進化しています。

とはいえ、こうした技術の活用にまったく問題がないわけではありません。収集されるデータは、個人情報やプライバシーなどと背中合わせであるため、データの取り扱いには最大限の配慮が求められ、慎重に社会のコンセンサスを得ていく必要があります。

生体反応データの取り扱いガイドラインに関してはすでに議論が進んでおり、2021年頃を目途に一定の法整備が行われると予想され、法的な課題をクリアすることでさらに利用が活発化すると考えられています。

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生体反応の計測技術は日々進化を続けており、今後も複数の測定データとの統合・連携が図られていくと考えられています。
たとえば、スマートTVや家庭内のVR機器などから取得されるデータに生体反応データを組み合わせ、世帯ごとや個人の嗜好性を分析することで、効果的な広告・プロモーション活動につなげる運用が検討されています。
生活者のライフスタイルに最適な商品・サービスが提供できる未来はそう遠くなさそうです。

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