テレビ視聴実態のいま~視聴ログに見る「テレビ離れ」と逃げ恥の視聴者ジャーニー

近年、テレビコンテンツの視聴環境は大きく変化しています。テレビでリアルタイムに見たり録画を見るだけでなく、パソコンやスマホを通して公式の見逃し配信サービスや動画サイトから見ることも可能となっています。また、ネット上には公式サイトの発信やネットニュース、SNSでの実況など関連情報があふれており、コンテンツの楽しみ方や視聴スタイルは多様化しています。

インテージでは、協力モニターのテレビ、パソコン、スマホのメディア接触ログを捉えたデータベース、i-SSPを使用し、2016年のテレビコンテンツの視聴実態を調査しました。また、2016年の話題として外せないTBSドラマ、「逃げるは恥だが役に立つ」に焦点を当て、逃げ恥ブームまでの過程を追ってみました。

若者のテレビ離れはどのくらい進んでいる?

よく、「いまの若者はテレビを見なくなった」と言われます。テレビは、「若者の〇〇離れ」の代表格として挙げられますが、実際のところはどうなのでしょう。

図表1はテレビ、パソコン、スマホそれぞれによるメディア接触時間を性年代別に表したものです。

このデータからは、確かに男女ともに年代が若くなるほどテレビの視聴時間が少なくなっていることがわかります。最もテレビ視聴時間の長い60代に比べると10代は1/3以下、20代は1/2以下となっていました。
代わりに年代が若くなるほどスマホを見ている時間は長くなっています。女性は40代までがスマホの接触時間がテレビ視聴時間を上回るという結果に。若者に限らず、“テレビ離れ”とは言わないまでもテレビよりスマホ、となってきているようです。

図表1 各デバイスへの1日当たり平均接触時間

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データ:i-SSP 集計期間 2016年11月

ここで、もう一つデータを見ていただきましょう(図表2)。
このデータは、スマホでの動画アプリの利用率を年代別に調査したものです。
テレビ視聴時間の短かった若年層の多くがYouTubeやニコニコ動画といったユーザー配信コンテンツの多い動画アプリを利用していました。若年層ほどテレビコンテンツに限らない、幅広い動画コンテンツに触れているようです。

図表2 スマホ利用者における動画アプリ利用率

tv2016_2.pngデータ:i-SSP 指標: 集計期間 2016年11月 

Key Point 1

年代が若いほどテレビ視聴時間が短く、スマホ接触時間が長い。若年層は動画アプリで幅広い動画コンテンツを視聴。女性においては40代でも“テレビ視聴時間<スマホ接触時間“に。

WEBでテレビコンテンツを見る、という人はどのくらい?

テレビコンテンツ配信に特化したアプリも活況です。図表2からは2016年に登場した無料インターネットテレビ「AbemaTV(アベマティーヴィー)」や“見逃しコンテンツ”を配信する「TVer (ティーバー)」の利用率が比較的高水準であることわかります。

最近はほとんどのドラマで次回予告の後に見逃し配信の案内が入るようになりました。そんな公式の見逃し配信が進む中、WEBで見るという人はどのくらい現れているのでしょうか?

図表3は、ある1週間にテレビコンテンツがどうやって視聴者に見られたのか(届いたのか)、という実態である『トータルリーチ』を表したものです。テレビでだけ見たという人もいれば、テレビでもWEBの公式動画でも見たという人、WEBの公式動画でだけ見たという人もいます。この図からは、テレビコンテンツはテレビのみで視聴したという人が65%いた一方で、テレビとWEB両方で視聴したという人が19%も、さらにWEBだけで視聴したという人も5%いたことがわかりました。ここでのWEBとは公式動画のみとなりますので、YouTubeなどに上がっている違法動画も含めるとさらに多くの人がWEBでテレビコンテンツを視聴していることは想像に難くありません。

図表3 テレビコンテンツへのトータルリーチ

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データ:i-SSP 対象エリア:関東1都6県 対象年代:15歳から69歳までの男女 
集計期間 2016年11月(19時~23時)
TV接触  :リアルタイム+録画視聴 Web動画接触:動画サイト・アプリ

Key Point 2

公式見逃し配信アプリなどのサービスが充実してテレビコンテンツの視聴手段が多様化した結果、「テレビコンテンツをWEBだけで見た」という人が5%見られた。 

逃げ恥がヒットするまで~ネットがテレビの入り口に?

様々なデバイスでテレビコンテンツの視聴ができるという環境はユーザーの視聴スタイルを大きく変化させ、テレビコンテンツの見られ方も変わってきています。たとえば2016年に大ヒットしたテレビコンテンツ「逃げ恥」はどのように見られ、盛り上がっていったのでしょうか?
インテージでは、i-SSP協力モニターのメディア接触ログから、「逃げ恥」がヒットするまでの経緯を追ってみました。

図表4は、「逃げ恥」がテレビのリアルタイム視聴、録画視聴とWeb動画それぞれの見方でどれだけの個人視聴者に届いたかという『トータルリーチ』が、回を追うごとにどのように動いて行ったか、をまとめたものです。

図表4 逃げ恥のトータルリーチの動き

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データ:i-SSP 対象エリア:関東1都6県 対象年代:15歳から69歳までの男女
集計期間:2016年10月11日~12月27日
TV接触  :リアルタイム、録画視聴 Web動画接触:見逃し配信の動画

このトータルリーチは徐々に増加し、最終話は1話の2倍にまで伸びました。また、どの回も、見た人のうち4~5%はWebで見ていました。これは他のドラマと比べて高い数字です。話題を受けて後追いした人が多かったことがわかります。
一方で、最終話とその前の回はテレビでリアルタイムに視聴される割合が増えていました。早く結末を知りたいという視聴者の気持ちが感じられます。

次に、視聴者がどのように「逃げ恥」の視聴へと辿り着いたかを見てみました。
図表5は、モニターのひとりである50代女性Aさんのメディア接触ログから見えた最終話を見るまでの旅、「逃げ恥」視聴者ジャーニーです。

Aさんは、ネットニュースで「逃げ恥」に興味を持ち、情報を検索した後に、動画サイトで“イッキ見”しました。その後も公式サイトの記事を読んだり、番組中に登場した「瓦そば」の情報を検索するなど、関連する情報にも興味を持って「逃げ恥」というコンテンツを深く楽しんでいたことがわかります。恋ダンスの話題もさらに関心に火をつけたようです。10話まではWEBで視聴していましたが、いち早く結末を知りたかったのか、最終話だけはテレビでリアルタイムに見ていました。

図表5 Aさんの逃げ恥視聴者ジャーニー

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データ:i-SSP 集計期間:2016年10月11日~12月27日

また、40代女性Bさんはテレビのワイドショーの話題からドラマに興味を持ち、それまでの話をネット上のダイジェスト動画をイッキ見して本放送に追いついた後、テレビでリアルタイムに視聴しはじめていました。

図表6 Bさんの逃げ恥視聴者ジャーニー

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データ:i-SSP 集計期間:2016年10月11日~12月27日

多数のケースを追った結果から明らかになったのは、ネットニュースやSNSで盛り上がりに触れてコンテンツの存在を知り、「面白そうだから見てみよう」といって見始める、いわゆる「ヒットライダー」と呼ばれる層が、「逃げ恥」の人気を押し上げたという流れでした。前出のAさんやBさんも「ヒットライダー」のひとりと言えます。

WEB上に過去分の動画があり、イッキ見して本放送に追いつけるようになっているという環境も、途中から見始める敷居を下げているようです。

また、視聴のきっかけになったのは本編の面白さだけではありません。Aさんもネットニュースで触れた恋ダンスの話題。SNSやネットニュース、動画で恋ダンスの存在を知ったことがきっかけで本編を見始めたケースも数多く確認できました。

良質なコンテンツを見つけ出して発信する人と、その発信をキャッチして乗っかる、盛り上げ役となる人々。SNSでテレビの実況がなされたり、SNS上の動きをネットニュースが記事化したり、テレビがネットと連動したコンテンツを仕掛けたり、といったテレビとネットが入り混じった現在のメディア視聴環境ならではの現象が見られました。

Key Point3

「逃げ恥」はネットニュースやSNSの盛り上がりで興味を持った「ヒットライダー」の視聴者を徐々に獲得し、最終話に向けて順調にトータルリーチを伸ばした

テレビだけでなくスマホやパソコン、タブレットと様々なデバイスでテレビコンテンツを視聴でき、SNSや動画コンテンツなどのネット上の盛り上がりが視聴に繋がりやすくなっている現在。ネットを通してリアルタイムで制作側の想いに触れたり、ファンによる深い解釈に触れて新しく視点を得たり、とテレビコンテンツの楽しみ方も広がってきています。今年はどのようなきっかけでヒットが生まれるのか楽しみですね。


今回の分析には、i-SSPを用いました。i-SSPとは、インテージの主力サービスであるSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマホ・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマホ・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。

※ i-SSP(読み方:アイエスエスピー)/シングルソースパネルは株式会社インテージの登録商標です。

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