With コロナ ~ 心を守り、心を健康にする栄養とエネルギーの補給のために ~

この記事は、インテージが生活者理解の拠点として立ち上げた、生活者研究センターセンター長 田中宏昌による「Withコロナの新しい日常」に関するコラムの第10弾です。

【目次】

  1. はじめに
  2. ながびく緊急事態宣言と冷え込む消費マインド
  3. 買い物意識と行動の変化~減ったモノ・コトと増えたモノ・コト~
  4. むすびにかえて(東京国立博物館 副館長 井上洋一氏 メッセージより

1.はじめに

3回目の緊急事態宣言の延長が2021年6月1日から20日までと決まりました。対象となっている都道府県は東京、大阪、兵庫、京都、福岡、愛知、北海道、岡山、広島、沖縄の10都道府県です。その他神奈川、千葉、埼玉をはじめとした8県においては「まん延防止等重点措置」が同じように6月20日まで延長されています。(5月31日時点)。

このコラムの冒頭でふと漏らすコロナ下におけるわたしの日常について、いろいろな方からメールやお声がけをいただきます。社内はもちろんのこと、昔の職場の先輩や後輩、仲間などが目を通してくれているらしく、記事に書いたさまざまなことがらについてコメントをいただきます。
前回のコラム(Vol.8日常化する新しい日常)についてはことのほか反響が大きく、今はなき川崎は宿河原の名店「たぬきや」を懐かしむ声やロードバイクや多摩川サイクリングロードの話が舞い込みました。みな、新型コロナの影響によって、以前のようにのんびりと居酒屋巡りやロードバイクなど趣味の時間を謳歌することはできないながらも、健康第一かつ法令を遵守しつつ楽しんでいるようでした。
そして、多くの結びの言葉は「収束したら、ぜひ、一緒に」でした。

昭和の香りを色濃く残した居酒屋探訪や自分の呼吸音とロードバイクのペダリングの音だけが響き渡る峠道。このコラムのおかげで新しい縁も生まれそうです。

2.ながびく緊急事態宣言と冷え込む消費マインド

ながびく行動自粛要請の中、生活者の心はどのような動きをしているでしょうか。いつものように定点アンケートの結果を見ていきましょう。

3月初旬からの感染者数の増加に伴い、感染拡大に関する不安は再び増加傾向にありました。しかしながら、緊急事態宣言の発令もあり、ゴールデンウィークを過ぎると新規感染者数は減少へと転じています。新規感染者数の減少に伴い、感染不安もまた減少に向かっています。また、今後の家庭の暮らし向きについては、「今より悪くなる」も減少の動きをみせています。この質問は「今後3ヵ月では」と少しだけ先の見通しについて尋ねていることから、第3波が減少に向かい、新型コロナワクチンの接種もはじまったことにより、「今よりもきっとよくなっているだろう」という希望を映しているように感じます。その一方で、「節約意識」についてはわずかに減少したものの底堅く6割付近を推移していることから、お財布の紐の引き締めモードは実感が伴うまではなかなか緩みそうにありません。(図表1)

図表1
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内閣府が景況感の測定のために毎月観測している「景況ウォッチャー」をみてみると、現在の景況感をあらわす「景気の現状DI」は第4波の感染拡大に呼応して大きくマイナスとなっています。中でもとりわけ「飲食」や「サービス」などで構成される「家計動向関連(濃い青線)」の落ち込みが大きくなっています。緊急事態宣言による営業自粛や酒類の提供禁止などの厳しい状況の続く飲食店の現状を反映しているように映ります。
また、将来を表す「景気の先行きDI」についてもすべてが大きなダウントレンドになっています。新型コロナワクチンの接種もはじまり、7月にはTOKYO 2020オリンピック・パラリンピックの開催が控え、平時であれば景気の回復も期待できるところですが厳しいマインドを反映した結果となっています。(図表2)

図表2
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「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」、さらには「国内旅行」といった不特定多数の人との接触リスクが心配される場所への外出行動については、「感染不安」の減少と連鎖して僅かながらですが不安は減少しています。(図表3)

図表3
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緊急事態宣言やまん延防止重点措置などの効果もあって新規感染者数は減少に向かっています。また、都市部、地方部を問わずワクチンの接種も進んでおり、東京や大阪では大規模接種会場も稼働し始めました。とはいえ、主たるウィルスは感染力の強い変異株に入れ替わり、重症患者の受け入れにより病床のひっ迫が続いています。また、最新のニュースでは英国型とインド型が混合したベトナム型の発生も確認されたことが報道されていました。このベトナム型は従来株よりも空気中での感染力が強いとのことで、より警戒が必要と言われています。不安減少と感染者数の相関については、別途、折を見て振り返りたいと思います。

3.買い物意識と行動の変化~減ったモノ・コトと増えたモノ・コト~

新規感染者数の減少やワクチン接種の普及によって、「感染不安」は減少傾向にありましたが、経済的な不安に起因する「節約志向」については昨年の7月以降、常に6割付近に高止まりして推移しています。どのようなモノ・コトについて、「節約」の意識が働いているのか、をアンケート結果からみていきましょう。(図表4)

図表4

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「レジャー」については緊急事態宣言をはじめとした行動抑制もあり常に高い数字となっています。「節約」という意識が働いていることもありますが、一方で、レジャー施設が休業していたり、営業時間の短縮や人数制限など、気軽にレジャーを楽しめる状況ではないこともこの結果の要因になっているはずです。「趣味活動(コンサート、映画鑑賞など)」も同じような理由があてはまりそうですね。

ランキングを眺めながら気になるのは多くの食品関連があがっているところです。「お菓子・デザート」や「くだもの」については、日々の暮らしの中の小さなお楽しみとしての価値を提供していると思いますが、そうした小さなお楽しみ、暮らしにおける彩りについても「節約」や「買い控え」の意識が働いていることが想像されます。そして、その他の食品にも目を移すと、「お肉・お魚」「野菜」などもあがっていて「日常の食卓」にも「節約意識」が影を落としているようです。
「日常」という視点ではほかに「携帯電話の通信費」「電気・ガス」などもあがっています。コロナ下において携帯電話のキャリア各社が手ごろな料金プランの新サービスを相次いで発表しました。また、電気の自由化によって、ガス会社と電気を一本化することで割安にできるような魅力的なサービスも次々と登場しています。そして、在宅勤務の活用によって、わが家の電気・水道・ガスなどの固定費やインターネット回線の通信速度を意識する機会も増えているようです。
ながびくコロナインパクトによって、食卓をはじめとした「日常」が変化しています。
ワクチンの普及とともに「彩り」が戻ることを期待しています。

最後にもうひとつ、ながびくコロナインパクトにおいて、気になっている「健康志向」と「簡便志向」という食の潮流について触れておきたいと思います。
コロナ下において生活者の「健康」への意識が高まった、と言われています。定点アンケートにおいてもその傾向は確認できていますが、ここでも「日常」という言葉がキーワードになっているように思います。「規則正しい生活を心がける」「より健康的な食生活を送るようになった」といった項目にあらわれているように、なにか特別なことをするのではなく、「日々の暮らしから健康に」という心理が働いていると思います。また、「(食生活や衛生など)家族の健康に対してより気を配るようになった」というスコアも一定の高さを保ったままとなっています。(図表5)

図表5

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また、外出の抑制など家の中での食事の機会も増えていることから、家族の健康を意識しつつもできるかぎり簡便に、という心理も働いており、総菜や冷食を活用して一品プラスするような工夫も増えているようです。ニュースでも2020年においては家庭向けの冷凍食品が業務用を初めて上回ったことが報道されていました。また、栄養バランスを考慮して野菜をとりやすいメニューの提案をするサービスなども現れているようです。さらに、簡便・簡易だけでなく手間をかけずに本格的な洋風料理が楽しめる商品も登場しています。(資料1・資料2)

資料1
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資料2
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ワクチンの普及により、新型コロナウィルスに対する備えは落ち着くかもしれませんが、健康であることやそのために免疫力を高めることなど、コロナ下において再認識した健康への取り組み意識はウィルスへの恐れとともに定着するものと思われます。

4.むすびにかえて(東京国立博物館 副館長 井上洋一氏 メッセージより)

2021年6月1日から東京都では映画館や博物館の休業要請を緩和し、営業時間の短縮要請に切り替えることになりました。この日を待ち望んでいた人も多いのではないでしょうか。私ももちろんその一人です。リアルな美術館や博物館、そして動物園などに行けない間は、さまざまな施設が苦心しながらも積極的に発信するYouTubeの動画などを見てその「空気」を感じていました。

最後に3回目の緊急事態宣言下にYouTubeでみつけた東京国立博物館 副館長(当時)井上洋一氏のメッセージを紹介させていただきます。


【オンラインギャラリーツアー】副館長・井上洋一が語る、土偶からひもとく、時代を生き抜くヒント

みなさんの身近にある博物館や美術館に展示されている絵画や彫刻といった様々な作品も、きっと皆さんの心を癒し、心を豊かにしてくれると思います。現在私たちはコロナウィルスの影響で心が尖り、なんとなく社会全体がですね。ギスギスしているように感じませんでしょうか。
もしそう感じたら、ぜひ近くの博物館や美術館に足を運んでみてください。そして、ゆっくり自分のお気に入りのですね。作品と対話をしてみてください。きっと心が軽く、気持ちが落ち着くと思います。
不安で先がよく見えないこういう時だからこそ、心を豊かに保つため、文化・芸術は私たちの生活に必要不可欠なものであり、こうした現状を冷静に分析するためにも歴史に学ぶ必要もあります。
私は医者ではありません。ですので人の命を救うことはできません。しかし、私は文化や芸術の力が人の心は癒せると信じています。そして、一歩踏み込んでいえば、我々は文化・芸術の力で人の心を守るエッセンシャルワーカーでもあると思っています。
それゆえ、その具現化のために だれもが安全で安心して楽しむことができる総合文化展、そして特別展を開催できる博物館を目指さなければならないと思っています。
心を守り、心を健康にする栄養とエネルギーの補給のために、そして、心たおやかにこの時代を生き抜くためにも、ぜひ当館にもお越しください。数々の名品が皆様をお待ちしています

東京国立博物館 副館長 井上洋一 ※1


興味を持たれた方は、ぜひ、Youtubeの「TokyoNationalMuseum【オンラインギャラリーツアー】」にアクセスして、直接、井上洋一氏の声に耳を傾けていただけたら、と思います。



※1 〈出展〉TokyoNationalMuseum【オンラインギャラリーツアー】
副館長・井上洋一が語る、土偶からひもとく、時代を生き抜くヒント
https://www.youtube.com/watch?v=Ef3jHh7Zdjs

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生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

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生活者研究センター センター長
田中 宏昌(たなか ひろまさ)

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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