arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

世界で愛される日本発IP~国別「現在地」から読み解く海外戦略~

日本発のマンガ・アニメ・ゲームIPは、この10年で海外売上が大きく伸び、2023年には5.8兆円(※映像、アニメ、ゲーム、出版、音楽の5分野合計の値)に到達しました。さらに2025年6月には経済産業省により発表された「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」では、2033年の海外売上高20兆円の目標達成に向けたアクションプランが示され、IPの海外展開は多くの企業にとって避けて通れないテーマになっています。一方で、実務の現場では海外展開を検討する際に、「どの国で何が起きているのか」「自社IPはどこで戦うべきか」「何を強みに戦うべきか」といった、戦略判断の出発点となる“共通言語”が不足しがちです。
そこでインテージは2025年7月、アメリカ/中国/タイ/インドネシア/フランスの5カ国において、15–59歳の生活者を対象に、計60作品のIPについて認知・好意・接触実態を測定しました。本稿では、得られたデータを元に、国ごとのIP受容構造の違いを可視化し、海外戦略の考え方を整理します。

海外戦略のカギは「国ごとの前提条件」にある

調査の結果、アメリカ・フランスの欧米圏では「トムとジェリー」、「スパイダーマン」、「ハリー・ポッター」といった米国発のIPが高い認知を集めました。一方、中国・タイ・インドネシアといったアジア圏では「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」、「NARUTO」といった日本発IPが上位に入り、地域ごとに強いIPの構成が異なることが分かりました。(図表1)
この分析からみえてきたのは、単純な人気の違いだけではありません。地域によって育まれてきた文化的背景や、生活者が触れてきたコンテンツの歴史、メディア環境の違いなど、「海外」と一括りにはできず、そもそもIPが受け入れられる“前提条件”が国によって異なるということです。
完成度・ブランドで競う成熟市場なのか、浸透・拡張が進む成長市場なのか、さらにIPが評価される“軸”がどうなっているのか、海外展開は「どの国で戦うか」だけでなく、「どの前提のもとで、どう戦うか」を設計することが重要です。

図表1

5カ国のIP認知率ランキング

市場の「競争状態」をポジションでみる~アメリカ、中国、タイ

IPの認知(どれだけ知られているか)と好意(知っている人のうち、どれだけの人が好意をもっているか)を掛け合わせて整理すると、市場構造の違いがより鮮明になります。
高認知×高好意に位置するIPは、ヒット型で既に市場を獲得している状態。低認知×好好意に位置するIPは奥行き型で潜在需要が存在すると解釈できます。以降、この視点で各国の特徴を見ていきます

アメリカでは「スパイダーマン」、「アベンジャーズ」、「スター・ウォーズ」、「スポンジボブ」、「ミッキーマウス」など多くのアメリカ発IPが“ヒット型(高認知×高好意)”に位置しており、成熟したエンタメ市場であること、すなわち競争が激しいレッドオーシャンであることがわかります。その中でも「ONE PIECE」、「となりのトトロ」は“奥行き型(低認知×高好意)”に位置し、ファンの熱量が高く、今後大衆層に広がる余地があるIPと捉えられます。(図表2)

図表2

アメリカ:認知×好意ポジショニング

同じ欧米圏であるフランスでも、“ヒット型”に位置するIPはアメリカとおおむね共通していますが、「ポケットモンスター」、「ドラゴンボール」、「ONE PIECE」、「ゼルダの伝説」などの日本発IPも含まれていました。成熟市場における日本発IPの存在感の強さがうかがえます。

ではアジア地域の国はどうでしょうか。中国とタイを例に、詳しく見ていきます。
中国では、「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」といった日本発IPが「トムとジェリー」、「ハリー・ポッター」、「ミッキーマウス」などと並んで“ヒット型”に位置しています。日本でもなじみ深いキャラクターが、中国市場でも広く浸透していることがわかります。また、「ハローキティ」、「機動戦士ガンダム」、「ゼルダの伝説」、「遊戯王」など、複数の作品が“奥行き型”に位置しており、今後の成長余地が示唆されます。(図表3)

図表3

中国:認知×好意ポジショニング

タイでは、「ドラえもん」が認知・好意ともに突出して高い人気を示しました。さらに「マリオ」、「バイオハザード」、「機動戦士ガンダム」、「ミニオンズ」、「遊戯王」、「となりのトトロ」など、今回調査した5カ国の中で最も多くのIPが“奥行き型”に位置しています。すでに熱心なファン層が形成されており、認知を拡大することで、市場全体が大きく伸びるポテンシャルを持つ国と考えられます。(図表4)

図表4

タイ:認知×好意ポジショニング

IPイメージの「中身」をみる:スパイダーマンの事例

では、なぜ国ごとにこのようなポジションの違いが生まれるのでしょうか。その要因を理解するために、IPがどのような捉え方をされているかイメージの「中身」を分解してみましょう。
グローバルで評価の高い「スパイダーマン」を例に、認知者がIPに対してどのようなイメージをもっているのかを分析します。先の3か国にフランス、インドネシアを加えた5か国を対象としました。(図表5)

図表5

スパイダーマンのイメージ

まず、共通項として、5か国平均では「ストーリー・シナリオが良い」、「かっこいい」、「キャラクターデザインが良い」といった、IPの核となる要素が認識されています。
一方で、国別に見ると認知のされ方に違いがあります。アメリカでは 「王道である」という“普遍性”、フランスでは「設定・テーマが良い」という“中身の完成度”、中国では「元気がある(出る)」という“前向きな感情”、タイでは 「かっこいい」、「個性的である」、「熱くなれる」といった“キャラクターのユニークさとパッション”、インドネシアでは 「かっこいい」「映像・ビジュアルが良い」という“映像コンテンツとしてのビジュアル”が強く認識されています。
同じIPでも、認識のされ方は国ごとに異なることが明らかになりました。この違いは、ヒーロー像の文化的背景、映像作品への期待、コンテンツ接触の歴史といった、受容構造の違いによって生まれていると考えられます。IPのポジションの背景となる、 “どの価値が認識されているか”まで捉えることで、より効果的なプロモーション戦略のヒントが得られるでしょう。
このようなイメージの違いが起きる背景のひとつとして考えられるのが、生活者のコンテンツ接触量の違いです。そもそも各国の生活者は、どれほどアニメやマンガに接触しているのでしょうか。アニメの週1日以上視聴率をみると、中国・タイ・インドネシアのアジア3か国は5~6割程度と非常に高い水準となりました。一方でアメリカ・フランスは3~4割にとどまっています。(図表6)
この結果からアジアは欧米圏に比べて日常的にIPに触れる環境にあり、この“土壌の違い”が浸透のしやすさや評価軸の差にも影響していると推察されます。

図表6

アニメ視聴頻度

海外戦略を考える際の3つのポイント

ここまでの分析を踏まえると、海外展開の打ち手として大きく3つに整理できます。

1つ目はどの市場で何を狙うか(市場選定と役割設計)です。ヒット型の市場は収益最大化を担う回収市場、奥行き型の市場は認知拡大による成長投資市場と捉え、市場ごとの役割を設計することが重要です。
2つ目はその市場でどう勝つか(競争戦略)です。欧米では差別化によるコアファン獲得、アジアでは既存IPの親和性を生かしたマネタイズ拡大や新規IP浸透が有効と考えられます。
3つ目は何を強みに伝えるか(訴求設計)です。欧米では完成度やブランド力、アジアでは感情やキャラクター性といったように、国ごとに訴求軸を変えることが重要です。
海外展開の成否は、この「現在地の把握」と「戦い方の最適化」にかかっているといえるでしょう。


※今回の調査で明らかになった詳細なデータやチャートは、無料のダウンロードレポートでご覧いただけます。

著者プロフィール

寺牛 友美プロフィール画像
寺牛 友美
インテージへ入社後、モビリティ業界におけるマーケティングリサーチ担当。
現在はアニメ・マンガ・ゲームを主としたエンタメ業界における、マーケティング課題の解決を専門とし、
定量/定性/GRなど、手法を問わず様々なカスタマイズ調査を経験。
国内最大規模のアニメ・マンガ・ゲームに関するパネル調査「IPファン-kit®」の企画~運用全般にも従事。

インテージへ入社後、モビリティ業界におけるマーケティングリサーチ担当。
現在はアニメ・マンガ・ゲームを主としたエンタメ業界における、マーケティング課題の解決を専門とし、
定量/定性/GRなど、手法を問わず様々なカスタマイズ調査を経験。
国内最大規模のアニメ・マンガ・ゲームに関するパネル調査「IPファン-kit®」の企画~運用全般にも従事。

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら