

近年、毛穴の汚れや角栓除去、毛穴詰まりや黒ずみのケアを目的とした「毛穴ケア」のスキンケア市場が好調に推移しています。従来から市場の中心を担ってきた洗顔料やクレンジングに加え、美容液やパックなどの周辺カテゴリーにも需要が広がり、市場規模は拡大を続けています。
本記事では、毛穴ケア市場の動向ならびに毛穴悩みの実態について、特に女性における購買行動や意識に焦点を当てながら、他の肌悩みとの立ち位置の違いやユーザー意識の特徴を分析し、毛穴ケア市場拡大の背景を探っていきます。
インテージSLI® (全国女性消費者パネル調査)データから毛穴ケア市場をみると、この5年間で市場規模は132.9%と拡大しています。
毛穴ケア市場の中でのカテゴリー構成をみると、洗顔クリーム・クレンジングカテゴリーが大きな割合を占めますが、近年では美容液やパックといったスペシャルスキンケアカテゴリーでの伸長が目立っています。
図表1

続いて、毛穴ケア市場の拡大要因を「購入者数」「1人あたり購入金額」の観点から見ていきます。毛穴ケア市場全体では、購入率と1人あたり購入金額の双方が上昇傾向にあり、毛穴ケアを新たに始める生活者が増えているだけでなく、毛穴ケアへの支出額も拡大していることがうかがえます。また、カテゴリー別で見ると特に美容液・パックの購入率の上昇が目立ち、毛穴ケアはより幅広いカテゴリーで実践されるようになっている可能性が考えられます。
図表2

従来、毛穴ケア市場は洗顔料・クレンジングでの「洗浄」が中心でしたが、近年美容液やパックといったスペシャルスキンケアが伸長していることを踏まえると、毛穴ケアに求める機能は毛穴汚れや角栓を除去するような対処だけでなく、毛穴の開きやたるみなど、毛穴が目立つ原因そのものへのアプローチに広がっていると言えそうです 。
今度は、毛穴ケア市場における年代層の変化を見ていきます。70代を除くすべての年代で市場規模の拡大がみられますが、中でも30代~60代のミドル・シニア層では、この5年間で約130%拡大しており、市場を牽引しています。
図表3

毛穴悩みというと、これまでは皮脂分泌の多い若年層の悩みというイメージが強いですが、近年では加齢に伴う毛穴の開きやたるみといった、エイジング由来の悩みが顕在化しているようです。毛穴ケア市場の拡大は、従来のような「皮脂対策市場」に加えて「アンチエイジング市場」へ裾野を広げていることもひとつの要因と考えられるかもしれません。
ここまでは購買データから毛穴市場の動向を見ていきましたが、ここからは生活者の肌悩みの観点から掘り下げていきます。
図表4は2025年に調査した肌悩みのランキングです。「毛穴の開き・毛穴のたるみ」は全肌悩みの中で3位となっています。また、特に30代では「毛穴の開き・毛穴のたるみ」が全肌悩みの中で最も高い回答率となりました。
図表4

具体的な数値を見ると、女性全体のうち35.3%が「毛穴の開き・毛穴のたるみ」、28.3%が「毛穴の角栓」、25.8%が「毛穴の黒ずみ」に悩んでいると回答しています。なかでも30代では、半数以上が「毛穴の開き・毛穴のたるみ」を回答しており、そのほかの毛穴悩みについても高い回答率となりました。
さらに、それぞれの毛穴の悩みが各年代で何位にランクインしたかを示したのが図表5です。
図表5

年代別での差異を見ると、10~20代ではニキビにつながる角栓や毛穴詰まり、30~40代ではエイジングに伴う毛穴の開きやたるみが上位に挙がっており、年代を重ねるにつれて毛穴悩みの内容が変化していることがうかがえます。毛穴悩みは特定の年代に限られたものではなく、幅広い年代層に共通する悩みとなっており、多くの生活者にとって身近な肌悩みのひとつであると言えるでしょう。
一方で、市場規模という観点では、毛穴ケア市場は依然として、美白市場やアンチエイジング市場と比較すると小規模であり、「毛穴悩みの保有者数」と「市場規模」の間にはギャップが見られます。
図表6

毛穴悩みへの対処はスキンケアだけでなく、ベースメイクによるカバーが担っていた部分もあり、悩みの大きさに対して市場規模は限定的だった可能性があります。
しかし近年は、ノーファンデや薄付きメイクといったトレンドを背景に、素肌を隠すのではなく、素肌そのものを整えたいという志向が広がっています。こうした変化が、美容液やパックなど、洗顔料・クレンジング以外のカテゴリーにも毛穴ケア需要を広げ 、市場の拡大を後押ししていると考えられます。
毛穴ケア市場は「毛穴悩みの保有者」という観点では大きなポテンシャルを有しているため、現時点ではまだ顕在化していない需要も含めると、毛穴ケア市場にはまだ大きな成長の余地が残されているとみられます。
ここからは、実際に毛穴ケアアイテム購入者を掘り下げて、どのような価値観・購買行動を持つ人が市場をけん引しているのかを明らかにします。
毛穴ケア購入者の商品の選び方を見ると、女性平均と比較して、成分や科学的な根拠を重視する傾向が見られます。そのため、単に「毛穴に効きそう」というイメージ訴求だけではなく、「なぜ効果が期待できるのか」「どの成分がどのような仕組みでアプローチするのか」といった説明を求めていることがうかがえます。
図表7

今度は、毛穴ケアアイテム購入者のスキンケア商品の購買傾向について見ていきます。毛穴ケアアイテム購入者のスキンケア年間購入金額の平均は約4万円であり、女性全体の平均と比較すると約1.2倍と高い水準となっています。また、機能別に見ると、アンチエイジング商品や美白商品の年間購入金額は、女性全体の平均と同水準という結果になりました。このことから、毛穴ケアアイテム購入者はエイジングや美白ケアの支出を減らしているわけではなく、それらのケアにプラスしている可能性が考えられます
図表8

今回の分析から、毛穴ケア市場の拡大は単なる一時的なトレンドというよりも、多くの生活者が抱えていた毛穴悩みが顕在化してきた結果であることがうかがえました。毛穴悩みの対処は洗顔料・クレンジングによる洗浄が中心でしたが、美容液やパックなど、幅広いカテゴリーへ毛穴ケア需要が広がっています。
市場規模自体はアンチエイジング市場や美白市場と比較するとまだ小さいですが、現状の毛穴悩み保有者の多さを踏まえると、他の肌悩みと比較しても大きなポテンシャルを秘めていると考えられます。
また、今後の市場成長を考えるうえで、酷暑・夏の長期化といった環境変化も、市場を後押しする要因になりそうです。今年の春は過去2番目に高い平均気温を観測しましたが、こうした気温上昇に伴う皮脂トラブルや化粧崩れの増加が追い風となる可能性があります。また、先述したメイクトレンドの変化や、近年のスキンケア意識の高まりにより、毛穴に関する悩みは今後さらに顕在化していくと考えられます。
こうした需要を捉えていくことが重要となる一方、毛穴ケアの購入者には、成分や科学的な根拠を重視する傾向がみられました。そのため、悩みを抱える生活者を捉えるためには、単なるイメージ訴求に留まらず、悩みに対してどうアプローチするのか、商品の価値を論理的に伝えることが求められます。生活者の毛穴悩みに応えるだけでなく、その解決策をどう伝えて納得させるかが、今後の毛穴ケア市場における競争力の鍵となりそうです。
【SLI®(全国女性消費者パネル調査)】
全国の15~79歳の女性約4万人の消費者から継続的に化粧品やヘアケア用品、下着などといった美と健康に関連した買い物情報を収集し、蓄積したデータベースです。「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※バーコードがない商品に関して仮コードをセットすることで、ネットや通信販売系の商品も集計可能です。
※SLIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
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