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ブランドの“病気”を早期発見し次の打ち手を探る「ブランド健康診断」とは?

消費者から長く愛されるブランドを育てるためには、常にブランドの実績を振り返って課題を洗い出し、次の打ち手を考えていく継続的なマネジメントが不可欠です。この記事では、ブランドの望ましい“健康状態”を維持するための、「ブランド健康診断」の方法について紹介します。

 

ブランドの活性化に欠かせない「健康診断」

新商品を市場に定着させることは難しく、新たなブランドの立ち上げに成功したとしても、その後も消費者に受容され続けていくかどうかは未知数です。

「最初の年は好調だったのに、2年目に入ると売上ダウン。原因と打ち手を知りたいが、どのようなフェーズで何を調べればいいのかわからない……」こうした悩みを持つブランドマネージャーは多いのではないでしょうか。そんな時に有効なのが「ブランド健康診断」です。
ブランド健康診断では、マーケティングの3C(市場、競合、自社)の視点で現状を分析し、課題を洗い出していきます。
どのように行うのか、3つのステップをケーススタディを交えながら見ていきましょう。

<ステップ1>市場を俯瞰し自社ブランドの競争環境を確認

対象となるブランドの課題を探り出すためには、まずブランドが属する商品カテゴリーの市場状況を調査しマーケットレビューをする必要があります。これにより自社ブランドの置かれている環境が明らかになります。

マーケットレビューのためには、市場規模や販売価格といったカテゴリーの販売実態を捉えられるデータや、どれだけの人に買われているのか、浸透しているのか、という購入率、購入量、リピート実態、ユーザープロフィール、購入チャネルといったカテゴリーの購買実態を捉るデータが有効です。

また、たとえば小売店パネルデータ、消費者パネルデータといった継続的に捕捉されているデータを用いることで、市場の拡大縮小、シェアや競争構造の変化、ユーザー拡大など、市場や消費者の観点から環境の変化を捉えることが可能です(図表1)。

図表1 競争環境を捉えるシェアトレンドデータ

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ステップ1でわかること例(ブランドAのケーススタディ)

・同じ価格帯の後発ブランドがシェアを伸ばし競争が厳しくなっている
・一方で新ブランド参入によってカテゴリーユーザーが拡大し、購入種類のバラエティが増えるなど市場全体が活性化している

<ステップ2>自社ブランドの購入実態把握

市場状況を把握した後は、消費者側の視点から自社ブランドの購入実態を確認し、抱える課題を明らかにします。ここで見ていくべき視点は3つあります。

視点1 ブランドの買われ方:
購入率、購入頻度、購入金額といったデータを用い、どう買われているかを把握します。これによりどれだけの人にトライアルされたか、リピートされたか、どれだけロイヤルティが育成されているかといったブランドの浸透状況が明確化され、この結果をもとに「購入者を増やすべきか」、「リピートを増やすべきか」といった今後の戦略の方向性が定まります(図表2)。

図表2 ブランドの浸透状況と戦略の方向性検討

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また、どのようなユーザーに買われているかというプロフィールを確認することで、ターゲットとして狙った通りのユーザー層に買われているかを評価することも、今後のターゲット戦略に必要です。

視点2 ブランドの買われ方の『変化』:
購入率、購入頻度、購入金額といったデータの時系列の変化を追い、ブランドの“買われ方”の変化を確認します。これにより新規ユーザーの取り込みができているか、固定ユーザーが流出してしまっていないか、などブランドのユーザー構造の変化が明確となり、危険信号があればキャッチできます(図表3)。

図表3 ユーザー構造の変化

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視点3 競合との関係性:
売上やシェア、購入率、ユーザープロファイル、などを競合ブランドと比較することで、市場における自社のブランドのポジションを客観的に捉えます。さらに消費者によるブランドの買い回り実態がわかると、 “他ブランドとのユーザー・シェアの行き来”から直接的な競合関係も明らかにできます(図表4)。

図表4 競合とのシェアの行き来の可視化

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ステップ2でわかること例(ブランドAのケーススタディ)

・以前ほど新しいユーザーを取り込めなくなっており、ブランドとしての鮮度が落ちていると推察できる
・他ブランドと買い回っているユーザーが増え、ユーザーの中のロイヤルティが下がっている

<ステップ3>生活者の意識から“なぜ?”を把握

このステップでは、消費者意識調査によって自社ブランドの購買プロセスにおける課題を特定し、具体的なマーケティングアクションに繋げていきます。
消費者意識調査を行う際には以下の情報を取得します。

こうした情報から、購買プロセスにおける課題がどこにあるのかを明らかにします。主な視点は以下の通りです。
・どのくらいブランドが認知されているのか
・特徴は伝わっているのか
・買ってもよいと思われているか
・買った後に再度買いたいと思われているか
これらのどこにボトルネックがあるかがわかることで、コミュニケーションの量を強化すべきなのか、表現を変えるべきなのか、商品自体を改良すべきなのか、といった打ち手の方向性が見えてきます。

この商品認知や特徴理解、購入意向といった購買プロセスには「どれだけ店頭に置いてあったか」「どれだけ店頭プロモーションがされていたか」といった店頭での露出や売られ方が影響します。これらのデータを併せて捉えることができると、店頭での課題抽出、打ち手の検討にも繋げることができます(図表5)。

図表5 購買プロセスと影響する施策

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また、ブランドイメージをマッピングする「コレスポンデンス分析」を行うことで、ブランドが消費者にどう捉えられているか、どのブランドと近いイメージで捉えられているか、といった競合との関係を感覚的に俯瞰することができ、競合戦略の検討に繋げられます(図表6)。

図表6 コレスポンデンス分析のアウトプットイメージ

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カテゴリーの商品を買う際にユーザーが重視する点をブランドのイメージと比較する「ギャップ分析」を行うことで、購買プロセスにおける課題に対して強化すべきイメージがわかります。たとえば「ブランドAを認知しているけれど購入意向がない」人が何を求めていて、ブランドAに対してはどのようなイメージを抱いているか、よく買っているブランドBに対してはどのようなイメージを抱いているか、といったギャップから、購入意向を上げるために強化すべきイメージがわかります(図表7)。

※強化の必要性については、現存ユーザーが評価しているポイント(守るべきイメージ)も捉えて総合的に判断する必要があります。

図表7 ギャップ分析のアウトプットイメージ

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ステップ3でわかること例(ブランドAのケーススタディ)

・認知やリピート購入率は過去の事例と比べても十分取れているが、トライアルを広げられていない
・リピーターに評価されているポイントが、未トライアル者には伝わっておらず、イメージが似ている後発の競合ブランドに負けている

総合的な「健康診断」とネクストステップ

最後に、これまでのステップで見てきた市場全体の動き、ブランドの購入実態、消費者意識のデータから改めて課題点(自社ブランドの抱える“病気”)を整理します。総合的に捉えることで手を打つべき課題が見え、プロモーションやサンプリング、拡張戦略などのネクストステップを検討することができます。

総合的な「健康診断」でわかること例(ブランドAのケーススタディ)

これまでのステップから、ブランドAが新規ユーザーを十分取り込めていないというユーザー構造上の課題が明らかになりました。その理由としては、後発の競合ブランドが似たようなイメージを訴求しており、しかも未トライアル者においてはブランドBがブランドAよりイメージが強いことなどが挙げられました。
そこで、新規ユーザーの取り込みを重点目標とし、イメージ強化を行うコミュニケーションを次の手として検討することとなりました。

一見、大きな問題はなさそうでも、「健康診断」によって思わぬ“病気”が見つかる場合があります。ブランドの課題を早期発見するためには、こうした診断をマーケティングサイクルに合わせてできる仕組みを作っておくことが重要です。


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