信頼できるのはリアルな体験?生活者のクルマの買い方

※この記事は、日刊自動車新聞の“インテージ生活者インサイト”コーナーにインテージのアナリスト三浦太郎・前田直人が寄稿した連載を再構成したものです。

スマホでクルマ購入?激変する中国のクルマ市場」でご紹介した通り、中国の新車購入事情は大きく様変わりしています。一方、中国と日本では品質に対する信頼度の違いなどを背景に、クルマに関する価値観は異なります。日本における新車購入事情は今現在どうなっているのかを探ってみましょう。

【目次】

日本における新車購入 求められている情報は?

日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると、2019年の新車販売台数は519万台で、前年比1.5%減でした。新車購入という一大イベントにおいて、日本の生活者はどのようなプロセスをたどるのでしょうか。インテージが2019年12月に行った全国1万人調査(新車を直近1年以内に購入した、20~69歳の男女が対象)の結果から追いました。

まずは新車購入を考えるきっかけになった出来事を聞いた結果です(図表1)。
30~60代の上位回答は「前のクルマが古くなったと感じた」、「前のクルマの車検時期が来た」であり、前に所有していた車からの代替が多いことが読み取れます。一方、初の新車購入となる人が多いと考えられる20代は、30~60代と違った傾向を示しており、「通勤・通学や転居でクルマが必要になったので」「自分の個性にあったクルマを持ちたくなった」が多くなっています。性別による傾向の違いはありませんでした。

図表1

新車購入を考えるきっかけになった出来事

続いて、具体的な車種の検討に入った後の「購入を決意する段階で役に立った情報源」を見ていきます(図表2)。注目すべきは「営業スタッフの話」の影響力の強さです。全年代を通して5割近い回答を集めており、リアルな体験・コミュニケーションが上位に来ています。特に若年層(20~30代)の「友人・知人・家族の話」の高さが目につきます。

一方、Web系のコンテンツは「メーカー公式ホームページ」を除き全般的に低くなっています。ここ数年SNSや動画サイト等のWeb系が台頭してきていますが、改めて新車購入における営業スタッフの果たす役割の大きさが理解できます。とは言え、20代ではSNSの割合がやや高い点は、今後の主購買層の傾向を占う意味で無視できないでしょう。

「スマホでクルマ購入?激変する中国のクルマ市場」でご紹介した通り、中国では、友人や家族の口コミを重視し、他の人と同じクルマでも良いという人々の考えが垣間見えました。実店舗の必要性が下がっている中国とは対照的な日本市場がつかめてきます。

図表2

購入を決意する段階で役に立った情報源

続いて、新車の購入プロセスにおける比較検討車種の数を見てみると、約4~5割がゼロ(指名買い)、約3割が購入車以外に1車種、約2~3割が2車種以上となりました(図表3)。

図表3

新車の購入プロセスにおける比較検討車種数

日本人の新車購入プロセスを示すこれらのデータから、現代の新車販売におけるディーラーの役割を考えてみましょう。営業スタッフの影響の強さ、比較検討車種の少なさ、さらには昨今の「Webで事前に一通り調べる」といったことから、いかにして「購入候補車種」のリストにあがるかが以前に増して重要になっていることが見えてきます。

また、最近新車を購入した人の口からは、「ディーラーはネットで調べてもわからないことの確認の場。良い面も悪い面も買う前に知っておきたい」という話も聞かれました。ディーラー(“確認の場”)において事前情報通りであれば購入に踏み切る可能性が高く、実際にシートに座ってみたら手触りが思ったより悪かった、3列目の足元が窮屈だった、といったネガティブな新情報が出てくれば、検討車種を見直し始める、ということだと考えられます。
とはいえ、悪い部分を隠すことは、数年後の次なる新車購入時を考えた際にロイヤルティを毀損することになります。ディーラーでは良い面も悪い面も含めたオープンな情報提供、体験価値がより必要になってきそうです。

新車購入時のオプション 今の注目は?

現在、最も盛り上がりを見せるオプションの一つは、ドライブレコーダーと言っても過言ではないでしょう。最近ではドライブレコーダー特約付き自動車保険を提供する保険会社も増えてきているようです。

図表4はインテージが毎月実施している、自動車に関する調査「Car-kit」を時系列で並べた結果です。新車購入時に、メーカー純正のドライブレコーダーを購入した割合を半年ごとにプロットしたところ、はっきりと右肩上がりの傾向が見られました。あおり運転や高齢者による踏み間違い事故といった報道を日々目にすることからも、証拠として役立つドライブレコーダーの需要は今後も伸びていくでしょう。

図表4

新車購入時の「メーカー純正ドライブレコーダー」購入割合の推移

新車購入後のアフターサービス 加入状況は?

ここまで、新車購入前~購入時のオプションと追ってきました。最後に、購入後も顧客との関係性を維持するのに有効な、アフターサービス・商品に着目してみます。

アフターサービスを通して日々のカーライフの困り事や安全安心に関するニーズを満たすことができれば、新車販売以外での収益確保が狙いやすくなり、加えて顧客のロイヤルティを高めることが期待できます。ロイヤルティの高い顧客は買い替え時に同一メーカーから購入する可能性が高いため、新規顧客獲得よりも効率的に「1台」を売ることができます。また他者へオススメするといった「擬似的な営業スタッフ」として顧客自ら動いてくれることも期待できます。さらにはリコールといったネガティブな事象が仮に発生した際にも、他メーカーへ流れてしまう割合を抑えることができ、平時から非常時まで幅広く収益確保に大きく貢献します。

では、実際に「Car-kit」のデータでその加入状況を見ていきましょう。図表5はメンテナンスパック(点検・車検やオイル交換数回分をパックにしたもの)の加入状況です。最も多いのは初回車検を含む「3年以上~5年未満」コース。次いで「車検を含まない3年未満」が多く、なんらかのメンテナンスパックに加入している割合は7割強です。

図表5

新車購入時のメンテナンスパック加入状況

メンテナンスパックは細々とした点検などもカバーした商品であることが多いため、気軽に来店してもらう効果も見込まれます。メンテナンス需要での来店を起点に、新たにフルモデルチェンジした車種を営業したり、試乗してもらったりといった営業接点としても役立ちます。また、対象期間が長いほど、顧客と接点を持てる機会も増加することが期待されます。

そこで、延長保証(ブレーキパッドやカーナビ、エアコンなど、一般保証では3年で満了するメーカー保証を5年に延長、等)の加入状況を見てみると(図表6)、「知らなかった・延長保証がなかった」が約4割におよんでいました。これらのサービスは新車販売時にしっかりと訴求することで、延長保証分の売上のみならず、次の1台へつながる活動となります。現時点では取りこぼしが多く、もったいない状況と言えそうです。

図表6

新車購入時の延長保証加入状況

自動車に関わる社会情勢や法整備は長いスパンで見ていくと大きく移り変わっていきます。ドライブレコーダーのように盛り上がりを見せるオプションもあれば、反対に陳腐化していく装備もあるでしょう。また、リアルな接点は変わらず重要ながら、新車購入にいたるまでのプロセスも変わりつつあります。そういったトレンドを過去と比較しながら見続けることで、新たな兆しや気づきを先行指標として捉えていくことができるはずです。

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