リサーチフィールドサイエンス~マルチデバイスでのアンケート回答研究

いまや生活者向けのマーケティング立案に欠かせない手段となっているネットリサーチ。聞きたいことを手軽に聞くことができるというメリットがある一方、正しく実態を捉えて意思決定に用いるには、手法の特徴を理解した上で活用することが重要となってきます。インテージでは、「フィールドサイエンス&品質プロジェクト」を2009年に立ち上げ、ネットリサーチの特徴理解、品質確保のために必要なコントロールの把握などを進め、サービスに反映してきました。

フィールドサイエンスの意義については、こちらの記事をご覧ください。

この記事では、パソコンでの回答とスマホでの回答が混在するマルチデバイス時代のアンケート画面に関するテーマとして、選択肢の数と純粋想起の記入枠の数についての研究結果をご紹介します。

【目次】

アンケートの回答デバイスはスマホとパソコンが混在し、マルチデバイス化が進行

インターネット調査が普及し始めたころは、アンケート回答者はパソコンで調査に回答していましたが、スマートフォンの普及によってスマホで回答する人が若年層を中心に増え始め、今では10代や20代はほとんどの回答者がスマホで回答しています。それ以外の年代でもスマホでの回答比率は上昇し続けていますが、年代によってスマホでの回答率には差がみられ、40代や50代はパソコンでの回答が5割前後を占めています。パソコンでの回答とスマホでの回答が混在するアンケート回答のマルチデバイス化が起こっていることが分かります。

図表1
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インテージではこれまでにも、インターネットでのアンケート画面における選択肢の数やレイアウトなどについて様々な研究を行ってきましたが、今回はマルチデバイス時代に最適なアンケート画面を探るべく実施した、自主企画調査の結果をご紹介します。

表示される選択肢の数の上限は、パソコンとスマホで差があるのか?

最初に画面に表示される選択肢の数について検証します。スマホの画面はパソコンよりもはるかに小さいですが、いくつくらいが適当なのでしょうか。そこで、以下の4つのパターンで選択肢を表示して、パソコン回答者とスマホ回答者の調査結果に違いがあるかを検証しました。設問の内容は、飲食店チェーンの利用経験です。

図表2
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4つのパターンに共通して提示している15個の選択肢(A群)を、15個だけ表示した回答結果と、20個表示、35個表示、50個表示のそれぞれの回答結果を比較してみます。まず【図表3】はパソコン回答者の結果です。

図表3
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20個表示では有意差のある項目は見られませんでしたが、35表示と50個表示ではそれぞれ5つの項目で有意差が見られ、ポイント差では10pt以上の差がある選択肢もあります。

続いてスマホ回答者の結果を確認しましょう。

図表4
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表示される選択肢がいくつであっても、共通している15個の選択肢(A群)の回答傾向には大きな違いは見られませんでした。

スマホの場合は、表示する選択肢の数の大小による回答への影響は無いようですが、パソコンの場合は20個と35個を境に回答傾向に変化があるため、テキスト表示の選択肢の数は20個までに収めることが望ましいといえそうです。また選択肢が多い場合は、後半のチェック率が減る傾向があるため、選択肢表示のランダマイズなどで選択肢位置によるバイアスを減らす、小見出しをつけて見やすくするなどの工夫が必要です。

次にテキストだけでなく画像を伴う選択肢【図表5】で検証した結果をご紹介します。

図表5
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こちらも4つのパターンを比較しますが、全てのパターンで提示する共通選択肢を10個としました。比較パターンは【図表6】のとおりです。

図表6
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テキスト選択肢と同じように、共通している10個の選択肢(A群)が、10個だけ表示した回答と比較して、15個表示、20個表示、30個表示のそれぞれの回答結果を比較してみます。【図表7】はパソコン回答者の結果です。

図表7
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15個表示、20個表示で、いくつかの項目に有意差が見られ、30個表示ではすべての項目に有意差が見られます。

続いてスマホ回答者の結果を見てみましょう。

図表8
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15個表示、20個表示ではほとんどの項目で有意差がなく、30個表示になると有意差のある項目がやや増加するものの、パソコンほどの差は見られません。パソコンでの結果を考慮すると10個までが望ましいようです。テキストのときと同様に、選択肢が多い場合は、ランダマイズをかける、見出しを付けるなどの工夫が必要です。

《まとめ~表示される選択肢の数の上限は、パソコンとスマホで差があるのか?》

選択肢の数が回答者に及ぼす影響はスマホよりもパソコンの方が大きいという検証結果になりました。これは、選択肢の数が多い場合には、全部の選択肢を見るためにスクロールが必要になることが影響していると考えられます。スマホの画面の大きさは、機種によってそこまで大きな違いはありませんので、スクロールする動作も回答者によって、さほど違いはありませんが、パソコンの場合は画面の大きさは様々であるため、選択肢の数が多いほど回答者によってスクロールする動作も異なってきますので、それが影響していると考えられます。このように選択肢の数が多いとパソコン回答者の回答に影響を及ぼす可能性があり、またスマホ回答者においても、スクロールが必要な選択肢の多さになると、その分、回答負荷が高くなりますので、その両面においても、選択肢の数は、できるだけスクロールする動作を抑えられる20個まで、画像を伴う選択肢は10個までに収めることが望ましいといえるでしょう。

純粋想起の記入枠の数によって記入量に違いはあるか、また中止率に影響するか?

最後に純粋想起についての検証結果をご紹介します。純粋想起とは、メーカー名やブランド名などの浸透度を測る際に用いられる質問で、選択肢や画像などを呈示せず、回答者に思い浮かんだ回答を文字入力で回答してもらう形式です。

図表9
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純粋想起の記入枠の数によって回答数に違いはあるのでしょうか。このテーマもパソコン回答者とスマホ回答者それぞれに、回答枠数を5個と10個の2パターンで検証調査を実施してその結果を比較します。順序効果も考慮して【図表10】の4パターンで実施しました。設問の内容によって回答個数が変わる可能性も鑑みて、飲食店とスーパー/ショッピングセンターの2つの設問を設けています。

図表10
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【図表11】は、Q1とQ2それぞれの回答記入個数を、パソコン回答者とスマホ回答者別に、記入枠が5個と10個のケースに分けて数えた結果です。パソコンでもスマホでも回答欄が5個より10個の方が記入個数が多いとの結果になりました。

図表11
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また、回答枠数が多いことによって回答中止率が高くなるかどうかを確認するために、回答中止率を示したのが【図表12】です。パソコンでは回答枠数が10個から始めた群の中止率がやや高い傾向となっていますが、スマホではほとんど変わりません。

図表12
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《まとめ~純粋想起の記入枠の数によって記入量に違いはあるか、また中止率に影響するか?》

純粋想起の回答枠数は、10個程度なら回答中止率への大きな影響はなく、回答枠数が5個の場合と比較して、より多くの回答が得られることが分かりました。ただし10個の回答枠数がアンケート画面に並ぶと、それを見ただけで回答者は負荷を感じてしまい、回答を中止してしまうこともありますので、純粋想起の質問を連続して聴取する場合は、5個にしておいた方が回答中止者を減らす効果はありそうです。

終わりに

様々な角度からパソコン回答とスマホ回答の回答結果を比較しましたが、いくつかの点で回答するデバイスによって傾向が異なるとの検証結果になりました。回答デバイスが調査結果に及ぼす影響も考慮して調査を設計、実施することはマルチデバイス時代には必要だといえそうです。インテージはビジネスの意思決定に資するデータとしてより的確に活用するために、今後もマルチデバイス時代に対応するための取り組みを続けてまいります。


今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。

【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】

調査地域:全国
対象者条件:20-59歳の男女
標本抽出方法:弊社キューモニターより抽出しアンケート配信
       スクリーニング調査を実施して、アンケート回答主利用デバイスを聴取し、
                        パソコン、スマホに割り付け
標本サイズ:n=3,335s
調査実施期間:2015年11月25日(水)~2015年11月30日(月)

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