

国内市場の成長余地が限られる中で、シニア市場は企業にとって重要なテーマになっている。なぜなら、日本における65歳以上の人口は2025年に3,624万人、総人口に占める割合(高齢化率)は29.3%(令和7年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府)。また、65歳以上の高齢者は、平均年収が現役世代より低くても金融資産の保有額が占める割合は大きく、企業にとって消費の有力なターゲットになるからだ。
中でも、年収や金融資産に一定の余裕のあるシニアはどのような暮らしをしているのか。また、節約志向なのか、それとも前向きに消費する層なのか。
今回の調査では、年収や資産に余裕のある層を抽出して「パワーシニア」として注目した。その実態と価値観、ニーズを明らかにする。また、パワーシニアを単なる年齢ターゲットとしてではなく、年収、資産や世帯状況による差異、消費・価値観のタイプ分けを行い、より生活者に即した商品、サービス開発の方向性を提供する。
本調査は65~84歳を対象として実施した。パワーシニア層、一般シニア層を以下の通り定義する。子供同居世帯は家族人数により年収・金融資産の意味合いが異なるため、今回は夫婦二人世帯と単身世帯に絞って分析した。また、夫婦二人世帯と単身世帯では生活に必要な費用、金融資産の規模も異なるため、定義を別にしている。
■パワーシニア層と一般シニア層の定義(世帯構成別)
| 区分 | 世帯 | 世帯年収(※) | 世帯金融資産(※) |
| パワーシニア層夫婦 | 夫婦二人世帯 | 700万円以上 | 4,000万円以上 |
| パワーシニア層単身 | 単身世帯 | 400万円以上 | 3,000万円以上 |
| 一般シニア層夫婦 | 夫婦二人世帯 | 300~400万円 | 1,000~2,000万円 |
| 一般シニア層単身 | 単身世帯 | 150~250万円 | 500~1,000万円 |
※世帯年収と金融 資産は、いずれかを満たせば対象とする(いずれも税込み)。金融資産には預貯金、株式、投資信託、債券、保険の満期金・解約返戻金などを含み、不動産は含まない。
まず、基本プロフィールからパワーシニア層の特徴を確認する。パワー層は、夫婦、単身ともに正社員・役員での就業率、個人年金・その他年金の受給割合、一都三県居住の割合が高い傾向にあった。都市部の利便性の高い生活を享受しつつ、就業継続や年金・資産形成を背景に、一定の生活余力を持つ層とみることができる。

また、ひと月あたりの生活費をみてみよう。パワー層夫婦で20万円以上が62.7%(一般層夫婦より+15.5ポイント)、30万円以上でも22.1%(一般層夫婦より+15.3ポイント)と多い。パワー層単身でも20万円以上が31.5%(一般層単身より+26.3ポイント)、30万円以上が8.5%と(一般層単身より+8.5ポイント)となった。夫婦二人世帯より少なく見えるが、一般層単身と比べると、パワー層単身は明らかに生活費が多い。
図表1

ここからは、世帯構成別にパワー層の特徴を確認していく。まず、パワー層夫婦は一般層夫婦に比べて何にお金を使っているのか?なお、本章の括弧内(ポイント差)は一般層夫婦との差分を示す。
「旅行・温泉・日帰りレジャー」72.2%(13.6ポイント差)、「外食・カフェ・食べ歩き」40.8%(同10.9)、「観劇・美術館・コンサート」28.8%(同9.0)などアクティブに生活の質や楽しみに関わる領域で、高い行動率がみられた。
図表2

また、チャートにはないが、「美容院・理容室に定期的にいく」56.6%(同14.6)、「歯・口元のケア」46.9%(同12.3)、「スキンケア・日焼け対策」40.0%(同13.1)、「服装やおしゃれに気を配る」33.9%(同13.2)。「サプリメントの習慣利用」36.2%(同12.4)など身だしなみ、健康への配慮を行う余裕もみられた。これらは「まだまだ外に出る」「人に会う」「自分らしく過ごす」ための消費であり、外向的なライフスタイル志向が窺われる。
また、パワー層夫婦の消費価値観をみると、多少高くても品質のよいもの、気持ちの良いことや快適なこと、自分の時間を増やせるものへの支出意向が高かった。パワー層夫婦は、お金があるから使うのではなく、品質や快適性にお金を使い、時間の価値を重視する層といえる。
図表3

一方、パワー層単身についてはどうか。一般層単身と比べると、一般層単身よりは外出や趣味の体験を積極的に楽しみ、家事をラクにする家電や美容・健康・エンタメに支出していた。「節約しながら穏やかに暮らす単身」のイメージとは異なり、自分のための体験、快適重視の消費スタイルと言えそうだ。詳しくは巻末のダウンロードレポートをご覧いただきたい。
こういった暮らし向きは、本人の“ゆとり”の自覚にも影響している。今回の結果では、パワー層は一般層に比べ、「お金と心のゆとり」を感じている人の割合が高い傾向にあった。
パワー層夫婦の70.8%、パワー層単身の65.4%が「お金のゆとり」を感じているのに対し、一般層夫婦26.0%、一般層単身では18.6%にとどまった。
一方、「時間のゆとり」に関してはお金・心ほどの大きな差はなく、一般層でも6割後半と高い。「時間のゆとり」は年収、資産、世帯構成に関わらず存在していると言えそうだ。
図表4

前章でみたようにパワー層夫婦は一般層夫婦に比べて、旅行やレジャー、外食、美術館・コンサートなど生活の質や楽しみに関わる行動が活発だ。差が大きかった「お金や心のゆとり」が、時間を豊かな体験に変える原資になっているのだろう。
そのため、パワーシニア層へのアプローチを検討する際には、「お金や心のゆとり」を前提として、それに見合う「時間のゆとり」を組み込んだ質の高い消費や体験をいかに提供するかが問われる。そうでなければ、商品・サービスの価値が伝わりにくくなってしまう。
すなわち「この商品、サービスなら自分たちの時間がより豊かになる」と感じてもらえるかが重要だ。パワー層夫婦では、外食、旅行、美容、健康づくり、美術館やコンサートの行動率が高かったことから、「時間の質を高める体験」としてこれらを掛け合わせることで新しい企画が作れるのではないか。たとえば、地方の美術館鑑賞に、美味しさと体調に配慮した食事と癒しを宿泊型で体験してもらう企画など、パワー層夫婦の関心を惹くのではないか。
さて、これまでパワーシニアを年収・資産・世帯構成といった切り口で捉えてきた。しかしながら、実際にはさまざまな価値観、お金や時間の使い方のタイプがあり、背景にある「なぜ」を理解して初めて、マーケティングのターゲット設定や商品開発・コミュニケーションの方向性を具体化することができる。
本調査では、パワー層夫婦、パワー層単身を横断したクラスター分析を試みた結果、以下の7クラスターに分類した。クラスター分析にあたっては、日々の生活に関する価値観、商品を買うときの考え方や行動に関する価値観を用いた。これにより、パワーシニアの中でも生活に求める価値や消費の意味づけの違いを明らかにすることを試みた。
図表5

こうしてタイプ分けしてみると、パワーシニアをひとくくりにはできないことがわかり、より具体的なターゲット設定、施策検討が可能になる。たとえば、「共感バランス層」向けには、夫婦の時間や地域、社会とのつながりを提供する体験ギフトはいかがだろうか。「自己完結層」向けには、ひとり時間の上質化を謳った旅や個食の高級レストラン、趣味を追求できる住まいの提案もありそうだ。
このようにパワーシニアの実情は多様である。なお、本分析では各クラスターの基本プロフィールや年収、資産、消費行動、アプローチ案についても整理している。
65歳以上の膨大な人口を対象にするとき、「シニア市場」とひと括りに扱うことはターゲティング戦略上、困難である。本調査では、2つの切り口が明らかになった。年収、資産、世帯構成といった経済・生活上の切り口と、もう一つは、価値観や消費行動にもとづくクラスター分析により、パワーシニア層の中にもさまざまなタイプが存在することが明らかになった。
図表5にみるように、たとえば、夫婦で生活を楽しみながら社会や家族とのつながりを大切にする層、安心と堅実、健康に配慮しながら生活を充実させる層、旅行や外食、美容や社会貢献など全方位に高感度でアクティブな層が存在する。一方で、単身の割合が高いタイプの中には、お金にも心にもゆとりを持ちながら一人時間の質を高めたい層、デジタルに強くブランドにこだわり消費にアクティブな層も見られる。
これらのビビッドなパワーシニアのイメージから言えるのは、価格や機能を打ち出すだけでは不十分であるということだ。価値観やライフスタイルをよく理解した上で人生の後半をより豊かにする商品、サービスが求められている。これからのシニアマーケティングでは、“誰に売るか”だけでなく、“その人の時間をどう豊かにできるか”を考える必要がある。
<ダウンロードレポート目次>
「パワーシニア攻略レポート 消費余力・世帯構成・価値観タイプから見る商品開発のヒント」では夫婦、単身、7タイプ別のパワーシニア分析を盛り込んでおりますので、ぜひ資料ダウンロードしてご覧ください。
・パワーシニア年収・資産分布
・パワーシニア年収・資産タイプ(フロー型/ストック型/フロー&ストック型)
・レジャー・国内外旅行頻度
・所有物や利用サービス
・美容、外見、身だしなみ行動
・今後の暮らしへの不安と対処
・パワーシニア7つのタイプ(基本プロフィール、アプローチ案)
など
また、個別の集計、ご説明については弊社営業担当や問合せ窓口までご連絡ください。
<調査設計>
調査地域 :日本全国
対象者条件 :65~84歳男女個人
調査実施時期 :2026年6月26日(金)~2026年6月29日(月)
標本抽出方法 :マイティモニターより適格者を抽出
<本調査>
標本サイズ:n=1,588
ウエイトバック集計:無し
※本調査条件…第一章に記載のパワーシニア層夫婦二人世帯、パワーシニア層単身世帯に合致
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