カーシェアリングサービスのユーザー像から見えた、サービス普及のカギとは?

※この記事は、日刊自動車新聞の“インテージ生活者インサイト”コーナーにインテージのアナリスト三浦太郎が寄稿した連載を再構成したものです。


国内で車離れと言われる中、徐々に存在感を増してきたカーシェアリング。マイカーを所有するのではなく、複数の人で、共同で車を所有し、好きなときに、好きなだけ、好きな車種に乗ることができるサービスです。
自動車を単なる移動手段と捉えている、もしくは購入する資金的余裕がない人を中心に利用が伸びているという見かたもありますが、果たしてそうでしょうか。

累積310万人の自動車情報を取得しているインテージの調査データ「Car-kit」と、このCar-kitに生活意識・価値観やさまざまな商品・サービスの購買・利用状況やメディア・情報の受発信行動といったデータを重ね合わせ、各車種のユーザーや購入検討者を立体的かつ細密に描写することができる、生活者360°Viewerという分析サービスを用い、カーシェアリングを取り巻く生活者の意識や実態を追ってみました。

【目次】

カーシェアリングサービス利用者の特徴は?

カーシェアリングを利用している人はどのくらいいるのでしょうか。全国の18~59歳の普通自動車免許保有者において、サービスを利用したことがある人の割合は、全国で見るとまだ5%程度という結果でした。

では、どのような人がカーシェアリングを利用しているのでしょう?
図表1は全国の18~59歳の普通自動車免許保有者における、カーシェアリング利用者と非利用者の基本的な属性を比較した結果です。

図表1

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カーシェアリング利用者の平均世帯年収は約628万円。非利用者の平均591万円を、わずかにですが上回っています。決して金銭的な余裕がないことが理由というわけではなさそうです。

男女比では約7対3と男性が多く、年代構成比では10代~30代までで全体の3分の2と若年層が多いことがわかります。
また、地域別では、一都三県で4割越えと全体の半分に近づく勢いで、続いて関西圏で2割超えとなっています。両巨大経済圏だけで6割超の利用者がいることになり、いかに都市部に集中しているかがわかります。これは各社のカーシェアリングサービス展開エリアや人口分布などに応じた部分もありますが、地方での利用が少ないことは明白です。

居住形態や普段の交通手段といった住環境でも特徴的な違いがあらわれました(図表2)。

図表2

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一戸建てに住んでいる割合が低いことから、駐車場が使える世帯が少ないことが予想されます。また、通勤・通学で自家用車を使う割合は非利用者の半分程度にとどまっています。

これらのデータからは、カーシェアリング利用者は決して収入は少なくはないが、公共交通機関が発達している都市圏に住み、あまり頻繁には自動車に乗らず、駐車場代などの維持費を払うくらいなら必要な時にカーシェアリングを利用できれば、と合理的に考えていることが推測できます。

社交的かつコスパ重視? カーシェアリング利用の背景にある価値観とは?

カーシェアリング利用者と非利用者の生活における価値観の違いを比較した結果が図表3です。

図表3

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顕著な違いが出たのが、「大切にしている考え方」についての項目でした。「新しいことにどんどんチャレンジしたい」、「変化に富んだ刺激的な生活を送りたい」、「ステップアップしていくことが大切」、「新しい時代の価値観と感性に触れることが大切」といった、『先進性』を示す項目において、「そう思う」と答えた人の割合は非利用者の約2倍程度と高くなりました。

大切にしている考え方以外にカーシェアリング利用者の特徴が出たのが、「自分についての認識」と「人との関わり方」についての項目です。「積極的に人との交流を広める」、「たくさんの人と交流できる場所が好きだ」、「イベントや友人との集まりなどに参加するのは好きだ」といった『社交性』を示す項目や、「何事にも、好奇心が旺盛なほうだ」、「休日には予定を詰め込んで活動的に過ごすほうだ」といった『活動性』を示す項目で特徴が表れています。

これらの傾向からはカーシェアリング利用者の、先進的で社交的、そしてアクティブという人物像が浮かんできます。

次に、消費における価値観の特徴を見てみましょう(図表4)。

図表4

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目立つのが、最新の技術への興味の高さ。「先進技術などは人に先がけて手に入れたい」と答えた人の割合は非利用者の倍以上となりました。
また、「新しいモノを積極的に取り入れたい」「生活を楽しいものにするためにはお金も時間も惜しまない」といった特徴からは、新しいモノ・価値を感じるモノへの購買意欲の高さが、「新しい商品やサービスは常にチェックしている」や「評判のよい商品やサービスに詳しい」といった特徴からは、新しいモノの情報に対してアンテナを張っている様子が見てとれます。

このような新しいモノに対する感度の高い人たちの中で、モノを所有せずにシェアを選ぶ傾向が出始めています(図表5)。

図表5

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「自分が使うモノはなるべく買って所有したい」と答えた人の割合はカーシェアリング利用者で38.7%と、非利用者の59.4%より低く、所有へのこだわりが小さいことが見えてきます。自動車に関する考え方でも、「コストに見合う利用をしないなら自動車を所有しなくてもよい」と考える人がカーシェアリング利用者では52.0%と、非利用者の33.6%に対して高くなっていました。カーシェアリング利用者が「自動車をコスパの面から捉える」傾向が強いことがわかります。

これらの人物像から、カーシェアリングサービス利用の背景を考えてみます。
カーシェアリング利用者は行動が活発であり、活動するときの移動手段としての自動車が必要になっていることが推測されます。そのようなシーンにおいて、新しい選択肢も含めて合理性重視で検討した結果、コスパの面で優れていると感じることを理由に、カーシェアリングという移動手段が選択肢としてあがってきている、と考えられます。

さらに利用者が価値として捉えている可能性があるのが、「日々違う車に手軽に乗ることができる」という点です。実際にカーシェアリングサービスを利用する際の判断軸になった、という筆者の体験に基づく実感でもありますが、先日、カーシェアステーションで男性の一人客が、そのステーション内にヴィッツやフィットなどのコンパクトカーがある中でハリアーを選ぶ姿を目にしました。そんな姿からも、彼がアッパーミドル向けのSUVを所有せずとも利用できるという点にメリットを感じたであろうことは、想像に難くありません。

コスパと新しい自動車の利用のカタチ、この2つが合わさることでカーシェアリングに対して積極的になっているのではないでしょうか。

カーシェアリングの拡大に向けて

前述の通り、情報感度が高いカーシェアリング利用者ですが、どこから必要な情報を得ているのでしょうか?新聞や雑誌、周囲の口コミなど様々な方法がありますが、非利用者との差が大きく出たのが、インターネットやSNSといったツールを活発に利用している実態でした。

図表6はカーシェアリング利用者のネットに関する情報行動の特徴をピックアップした結果です。

図表6

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まずスマホでのインターネット利用行動の特徴を見てみましょう。「お店での買い物中に商品情報を調べた」、「お店での買い物中に口コミ・評価を調べた」、「お店での買い物中に他店やネットショップでの価格を調べた」等、買い物中にもスマホを駆使して情報を得て、よりいい買い物をしようとする姿が見て取れます。

さらに顕著な差が出たのがSNSの利用実態です。大手ソーシャルメディアでの投稿・発信頻度を比較したところ、1週間に1回以上の発言のある人の割合は、Facebook、Twitter、Instagram全てにおいてカーシェアリング利用者の方が非利用者の1.3~1.5倍ほど高く、積極的にSNSで発信していることがうかがえます。
Twitterのフォロー数はカーシェアリング利用者134人に対し、非利用者は99人。フォロワー数はカーシェアリング利用者が124人、非利用者が82人と、カーシェアリング利用者の方が1.5倍ほど多くなっています。FacebookやInstagramでも同様に1.5倍ほど多いという結果が出ています。全体的にネット内における「顔の広さ」 がカーシェアリング利用者の特徴となっています。

カーシェアリング利用者は自身が情報強者でお得情報などを得ているだけでなく、人に情報を伝える能力も高いという側面も持っているようです。「人からおすすめの商品やサービスをよく聞かれる」、「新しいブランドや商品・サービスを友人に紹介するのが好き」という人は、非利用者の2倍以上で、3割程度に達します(図表7)。

図表7

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彼らは情報の拡散能力が高いので、この層をしっかりとつかみ、サービスを改良していくことが、今後さらに拡大していくためのカギになるかもしれません。

プロダクトライフサイクルの観点でいえば、まだまだ導入期にあたると考えられるカーシェアリングサービス。先行して利用している層のファン化や情報拡散を狙う一方で、利用を阻害するボトルネックの解消も必要です。インテージがカーシェアリング非利用者を中心にインタビューを実施したところ、「乗りたいときに予約が取れなさそう」、「トラブルや事故発生時の対応が不安」、「掃除はいつしているのか」などの声がでてきました。利用したことのない人々の持つ“ネガティブな気持ち”を解消していくことも、カーシェアリングの日本での定着に必要不可欠です。

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今回の分析は、インテージの提供するCar-kit(自動車パネル)のデータと生活者360°Viewerによる出力結果を用いて行いました。

【Car-kit(自動車パネル)】

株式会社インテージが毎月約60万人から前月の自動車情報を取得しているシンジケートデータです。現有車や次期意向などを聴取する市場動向把握調査と、契約者に対して購入理由や購入時の重視点などを聴取する契約者調査の2部構成で実施しております。
※Cat-kitは株式会社インテージの登録商標です。

【生活者360°Viewer】

多面的で精緻なターゲット像を描き出すことにより、生活者理解に基づいた商品・サービス開発やコミュニケーション・プランニングを支援する分析サービスです。インテージの持つさまざまなパネルデータを横断・連携した15,000項目におよぶ膨大なデータから、各お客様企業のマーケティング課題に応じて柔軟にターゲット・セグメントを設定することが可能です。
※さまざまなパネルデータを横断・連携するという性質上、出力結果のサンプルサイズはデータによって異なります。

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