

新規事業の企画書に説得力を持たせるうえで、市場規模の調べ方は欠かせない知識です。この記事では、官公庁のデータ活用からフェルミ推定を用いた算出方法まで、市場規模を調べるための具体的な手順を解説します。根拠あるデータに基づいて事業判断を行うための実務的なポイントを整理しました。
市場規模を調べることは、新規事業の立ち上げや既存事業の成長戦略を描くうえで重要です。客観的なデータに基づいて市場の大きさを把握することで、事業の成功確率を冷静に評価できます。ここでは、市場規模を調べることで得られる具体的なメリットを解説します。
| メリット | 内容 |
| 新規事業や参入領域の妥当性を評価できる | 市場の大きさや成長性を数値で確認し、参入可否を客観的に判断できる |
| 経営陣や投資家への説得力が高まる | 事実に基づく市場の数値を提示することで、提案の論理性と信頼性が高まる |
市場規模を把握する大きなメリットは、参入しようとしている領域に十分なビジネスチャンスがあるかを評価できる点です。市場が大きければ、獲得できる顧客の数も多く、売り上げを伸ばすポテンシャルがあると考えられます。
一方で、市場が縮小傾向にある場合は、参入後に厳しい競争に直面するケースが多くなります。事前に市場の状況を数値で確認しておくことで、限られた経営資源を投資する価値があるのかを客観的に判断できます。結果として、勝算の薄い事業への投資を避けることにつながります。
客観的な市場規模のデータは、社内の決裁者や外部の投資家から協力を得るための材料になります。新規事業の企画を提案する際、担当者の熱意や主観的な見通しだけでは、大きな予算を引き出すことは難しい傾向にあります。
データという共通言語を用いることで、事業のポテンシャルを正しく伝えられ、意思決定を後押しする効果が期待できます。数値を根拠に語ることで、ビジネスとしての信頼性を確保できます。
市場規模を調べるには、すでに公開されている情報を効率よく探し出すことが基本です。世の中にはさまざまなデータが存在するため、目的に応じて適切な情報源を選ぶことが大切です。ここでは、代表的な方法と具体的な手順を解説します。
| 情報源 | 特徴 | 費用 |
| 官公庁・業界団体の統計データ | 信頼性が高く、幅広い産業の基礎データが揃っている | 無料 |
| 民間調査会社の市場調査レポートや市場データ | 特定分野に特化した詳細なデータが得られる | 有料 |
| 上場企業のIR資料・有価証券報告書 | 個別企業の視点から市場環境やシェアがわかる | 無料 |
信頼できるデータを探すうえで、最初に確認したいのが官公庁や業界団体が発表している統計情報です。国が実施する調査は規模が大きく、中立的な立場から集計されているため、事業計画の根拠として活用しやすい特徴があります。
具体的には、総務省や経済産業省などが公表する白書や統計レポートが役立ちます。これらは政府統計の総合窓口である「e-Stat」を利用することで、キーワード検索から目的のデータを効率的に見つけられます。まずは無料の公的データから、市場の全体像をつかむのがおすすめです。
参考:政府統計の総合窓口
官公庁のデータだけでは細かい業界の動向がわからない場合は、民間の調査会社が発行するレポートやデータの活用が有効です。調査会社は、独自のネットワークやアンケートを通じて、最新の市場動向を詳細に分析しています。
これらのレポートは有料であることが多いものの、セグメント別の市場規模や今後の予測など、踏み込んだ情報が網羅されています。購入前に目次やサマリーを確認できるケースも多いため、自社の課題に直結する内容が含まれているかを事前にチェックしてから導入するとよいでしょう。
また、調査会社によっては、完成されたレポートだけでなく、市場規模算出のもとになる「データ」そのものを提供しているケースもあります。代表的なものが、全国の小売店舗を一定数パネル(調査対象)として選定し、そこから収集したPOSデータをもとに市場全体を推計する手法です。個々の小売店が独自に保有するPOSデータだけでは、他チェーンや他業態を含めた業界全体の動きは把握できませんが、こうした店舗パネルによるPOSデータを活用することで、特定カテゴリーの販売数量・金額を全国規模で捉え、市場シェアや市場規模を精度高く推計することができます。
とりわけ食品・飲料・日用品などの消費財(FMCG)分野では、スーパーやドラッグストア、コンビニなど複数の小売チャネルを横断的にカバーしたPOSパネルデータが広く利用されており、自社製品だけでなく競合製品を含めたカテゴリー全体の市場規模や動向を客観的に把握する手段として活用されています。レポートが「分析済みの結論」を提供するのに対し、こうした市場データは「自社の視点で加工・分析できる素材」を提供するという違いがあるため、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
市場規模を調べるもう一つの手段として、同じ業界で事業を展開する上場企業の公開資料を読み解く方法があります。上場企業は、投資家に向けて事業の現状や今後の見通しを説明する義務があるため、決算説明会資料や有価証券報告書のなかで、対象市場の規模や自社のシェアについて言及しているケースが多くあります。
競合他社が市場環境をどのように捉えているかを知ることで、自社の調査を補完するヒントが得られます。複数の企業の資料を見比べることで、業界全体のトレンドを立体的に把握できます。
新しいビジネスモデルやニッチな分野では、既存のデータが存在しないケースが珍しくありません。そのような場合は、自分自身で論理的に市場規模を推計する必要があります。ここでは、既存のデータがない状況で市場規模を概算する算出方法を紹介します。
| 算出方法 | 基本的な考え方 |
| フェルミ推定 | 人口や世帯数などの基礎データに複数の仮定を掛け合わせて概算する |
| ボトムアップ計算 | 顧客数・顧客単価・購入頻度などの実態データから積み上げて算出する |
フェルミ推定とは、実際に調査することが難しい数量を、手元にある限られた情報や手掛かりをもとに論理的な推論を重ね、短時間で概算する手法です。推定したい対象に応じて、国の総人口や世帯数、面積などを出発点として設定し、そこから段階的に分解・推論することで未知の数値を導き出します。
導き出された数字はあくまで概算ですが、どのようなロジックでその数字に至ったのかを説明できるため、新規事業の検討材料として機能します。論理の飛躍を防ぐためにも、各段階の仮説を丁寧に設定することが重要です。
もう一つの方法は、顧客一人あたりの購買行動から市場全体を積み上げて計算するボトムアップのアプローチです。この方法では、想定される顧客数と平均的な顧客単価、年間の購入頻度という三つの要素を掛け合わせて市場規模を算出します。
自社の事業計画において、サービスを誰にいくらで提供するかが決まっていれば、この計算式をそのまま当てはめられます。仮説の精度を高めるためには、少人数の見込み客に対してヒアリングを実施し、実際の購入意欲や妥当な価格帯を検証しておくことが大切です。仮説段階では、顧客の嗜好や価値観も踏まえて単価を設定するとよいでしょう。
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市場規模のデータは便利ですが、数値を鵜呑みにすると誤った経営判断につながるリスクがあります。正確な分析を行うためには、情報を扱う際の適切なリテラシーが求められます。ここでは、市場規模を調べる際に気をつけるべきポイントを解説します。
| 注意点 | 確認のポイント |
| データの定義や対象範囲の確認 | 調査対象の商材や領域が自社の認識と一致しているか |
| 複数の情報源の比較 | 複数の調査機関のデータを照らし合わせ、妥当性を検証 |
見つけた市場規模の数値をそのまま事業計画に使う前に、その調査の定義や対象範囲を確認する必要があります。ひとつの産業を指す言葉であっても、ハードウェアの売上を含むのか、ソフトウェアや付帯サービスのみを対象としているのかで数値は大きく変動します。
調査機関によって対象となる企業や商材の範囲が異なるため、自社が参入を検討している領域と合致しているかを精査することが重要です。資料の注釈や調査概要のページを読み込み、どのような前提条件で算出されたデータなのかを理解したうえで活用してください。
情報の正確性を高めるためには、一つの調査データに依存せず、複数の情報源を比較検討する姿勢が大切です。ある機関が発表した数値と、別の機関が発表した数値に大きな開きがある場合、どちらかの集計方法に偏りがあるか、調査の前提が異なっている可能性があります。
官公庁のデータや民間調査会社のレポート、自社での推計など、異なるアプローチから得られた数値を照らし合わせることで、市場の実態をより立体的に捉えられます。複数の視点を持つことで、説得力と信頼性のある結論を導きやすくなります。
この記事の要点をまとめます。
正しい市場規模の把握は、説得力のある事業計画を作成し、新規事業を成功へと導くための第一歩となります。 市場規模の調べ方にお悩みの方へ、インテージの「知るギャラリー」では、マーケティングに役立つ調査レポートを多数公開中です。テーマ別の市場規模や消費者の購買動向など、実務に直結する情報を把握できます。気になる資料は、一度に5つまで無料でダウンロードが可能です。市場分析や自社のビジネス戦略にぜひご活用ください。
【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2021年6月現在
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