

最終更新日:2026年10月14日
いまやマーケティング活動の意思決定に欠かせないアンケート調査の基本の調査プロセスや実施のコツについて、シリーズで解説します。
第4回のこの記事では、アンケート調査の結果をわかりやすくまとめるための集計の方法とコツについて解説します。
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アンケート集計作業の基本は、回答結果を数値化し、全体の傾向を客観的に把握することにあります。単にデータをまとめるだけでなく、現状の課題を発見し、今後のビジネス戦略や業務改善の具体的なアクションへ繋げることが本来の目的だと言えるでしょう。
ここでは、データから有益な情報を引き出すための、正しい集計の考え方について解説します。
アンケートで収集したデータを集計する主な目的は、個別の回答を全体像として把握し、ビジネス上の課題解決に役立てることです。データが一覧になっているだけの状態では、どの意見が多数派であるかを正確に判断することが難しくなります。集計作業を通じて数値を可視化することで、客観的な事実に基づいた意思決定ができるようになります。
たとえば、新商品の満足度を調査した場合、単に満足・不満足という声を眺めるだけではなく、全体の何割が満足しているかを算出することが重要になります。このような基礎的なデータ整理を行うことで、経営層やチームメンバーに対して説得力のある報告を行えるようになります。アンケートは実施して終わりではなく、集計と分析を経てより大きな価値を発揮する取り組みだといえるでしょう。
スムーズな集計作業を実現するためには、データを取り扱う前の事前準備が大切です。まずは回収したデータを見直し、回答の漏れや不自然な入力がないかを確認する作業から始めます。この確認作業を省略すると、集計結果に偏りが生じ、誤った結論を導き出す可能性が高まります。
定量アンケートの結果を読み解くには、回答データを集計して傾向や差を把握します。最も多く用いられる集計方法が単純集計とクロス集計の二つです。
単純集計は、回答した人数を分母にし、それぞれの選択肢を選んだ人の人数を分子にして割り算をすることで、選択肢を選んだ人の割合(パーセンテージ)を計算します。英語では「GrandTotal」というので、「GT表」という言い方をすることも多いです。
回答した人の総数が200人で、選択肢Aを選んだ人が120人の場合、図表1の様に計算し、集計結果は6割もしくは60%となります。
図表1

アンケート結果の全体傾向を把握するにはとても有効な集計処理なので、最初に全ての設問の単純集計結果を確認するとよいでしょう。
もう一つのクロス集計は、分母を複数設定して、それぞれごとに選択肢を選んだ人の数を計算する処理方法です。
図表2のように、男性・女性それぞれについて、選択肢Aを選んだ人の割合、率を算出します。「アンケート調査の結果を性別間で比較する」といった場合に行います。
図表2

実際には選択肢は複数あるので、集計結果は図表3のようなクロス表で表現されます。
図表3

クロス表を読むときのポイントを4つ挙げます。
1. クロス表の基本用語クロス表を読み解く際、表の構成要素にはそれぞれ名前がついています。
2. マーケティングに活きる「分析軸」の選び方
実務では「性別・年代」や「職業」といった基本属性を分析軸にすることが多いですが、より効果的な分析にするためのコツがあります。それは、マーケティング課題と関連する情報を分析軸に設定することです。これにより、単なるデータの確認で終わらず、課題解決や具体的なアクションに繋がるヒントが得られやすくなります。
【効果的な分析軸の例】
●自社ユーザーの特徴を把握したい
分析軸:「自社サービスのユーザー」対「市場全体のユーザー」
●利用頻度を高める(ヘビー化)ヒントを探りたい
分析軸:「ヘビーユーザー」対「ライトユーザー」
●市場での自社の立ち位置(ポジション)を確認したい
分析軸:「自社サービスのメインユーザー」対「競合サービスのメインユーザー」
3. 分析軸は「調査の前」に決めておく
このような効果的な分析軸は、アンケートが終わってから考えるものではありません。調査の設計段階や、アンケート項目を作成する時点で、「後でこれを分析軸として比較しよう」と見越して必要な要素を盛り込んでおくことが重要です。
4. データを読む際の注意点:サンプルサイズ
集計結果を見る際は、各項目(分析軸)の「サンプルサイズ(回答者数)」に注意してください。
●解釈は「50サンプル以上」を目安に:
1つの項目(例:「自社サービスのヘビーユーザー」など)あたりの回答者が50人を下回ると、データにブレが生じやすくなります。数値の差が大きいように見えても、解釈には慎重になる必要があります。
●最低ラインは「30サンプル」:
一般的に、分析に耐えうる最低限のサンプルサイズは30人程度とする考え方が多いです。
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データを集計し、結果をもとに分析を行う上で気を付けるべき点について説明します。
1つは、その調査で設計した「全体」が、「意味のある全体」をあらわさなくてはいけない、という点です。例えば、女性の20代から50代を10歳刻みで100人ずつを対象者として400人のアンケート調査を実施したとします。
総務省統計局が6月に発表した「人口推計」によると、令和元年6月1日時点での女性20代は610万人、一方、女性50代は806万人です。女性50代は20代の1.3倍多いことが分かります。 400人の調査結果を「女性の20代から50代の全体」として見たいのであれば、この世代間の人口ボリュームの差が調査設計に反映されている必要があります。
調査結果の全体を「全体」として見るためには、調査を設計する段階でアンケート調査の年代ごとの回収数を人口構成比に合わせるか(図表4)、それぞれの年代の回答データに人口構成比に応じたウェイトを与えて集計する「ウェイトバック集計」を行う形で対応します。(図表5)
図表4

図表5

例えば「自社サービスの認知者の、サービスに対する重視点を知り、その特徴を明らかにしたい」とき、自社サービス認知者と市場全体のサービスユーザーで、重視点を比較してみると、図表6のようにあまり違いがないという結果になりました。
図表6

実はこの結果、市場全体のサービスユーザーに対し、自社サービスの認知者が大半を占めていたために起こっています。(図表7)
図表7

「自社サービス認知者」の特徴を明らかにするには、回答者の重なりがない「自社サービス認知者」以外の「自社サービス非認知者」と比較するといいでしょう。
回答結果を加工することで、結果を解釈しやすくしたり、さらに詳細な分析をしたりできます。その方法をいくつかご紹介しましょう。
気持ちや意識の程度を「そう思う」から「そう思わない」といった強弱を選択肢で表現して答えてもらう質問を「段階評価」といいます。図表8はその一例ですが、「そう思う」と「ややそう思う」を合計し、少しでも当てはまる人の割合を捉えることで、調査結果の傾向が分かりやすくなります。
図表8

データをまとめることは、元の細かい情報を削ぎ落とすことでもあります。例えば、「商品を買いたいと思うか」という購入意向の場合、「買いたい」と「やや買いたい」を合算すると評価が甘くなる傾向があります。より厳密に意向を測る際は、「買いたい」と答えた人のみの割合(トップボックス)を指標にするのが一般的です。
通常、ブランドイメージは「そのブランドを知っている人(認知者)」全体に聞きます。しかし、集計のベースを「ブランドの所有者・使用者」に絞り込むことで、その結果を単なるイメージではなく、実際の使用経験に基づいた「評価」として解釈できるようになります。
調査項目間の関連性を整理する統計処理手法がいくつかあり、それらの集計手法を「多変量解析」といいます。なかでも、コレスポンデンス分析はよく用いられる手法です。コレスポンデンス分析は、「複数のブランドとそれぞれのブランドが持っているイメージ」や「ユーザー属性と商品選びの重視点」などを分析するときに便利な解析手法です。
コレスポンデンス分析に必要なデータは図表9のように集計されたデータです。
図表9

図表9のデータをコレスポンデンス分析にかけた結果は、図表10のように二次元のマップ上にプロットできます。この例ではAからEの5つのブランドとブランドイメージの関係性を示しています。
図表10

この図からはそれぞれのブランドがどのようなイメージを持たれているかということと、ブランド間のイメージの近さやポジションの独自性が視覚的にとらえられます。
例えばブランドBは「一流の」「信頼できる」「安心感がある」というイメージが、他のブランドと比較して強い、という解釈ができます。同様に、ブランドAとブランドCは「簡単な」「柔軟性がある」という共通イメージを強く持った類似ブランドと解釈することが出来ます。
ただし、このような多変量解析のアウトプットは、元の情報の一部を切り捨てて特徴的な要素だけを抽出して表現しています。マップで傾向をつかんだら、元になっている数表を読み込むことをお薦めします。
アンケートの回答形式には数字を答えてもらう形式や言葉や文章で答えてもらう形式もあります。その結果を読みやすくする方法を解説します。
図表11

大量の回答データから効率的に傾向をつかむこれらの手法は、実務において強力な武器となります。
今回は、集計結果を読むための集計処理の方法と使い方のコツを紹介しました。
この記事の要点をまとめます。
集計したデータを分析し次の施策に活かすことで、ビジネスを大きく前進させるための第一歩を踏み出せるようになります。
次回は、定量のアンケート調査の結果を報告書にまとめるときのグラフの選び方と、分析から得られる知見を解説します。
【関連記事】第5回の「わかりやすく伝えるグラフの選び方と作成手順」の記事へはコチラから
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