車の情報はどうやって調べる? 行動ログデータから見えたデジタル時代の情報収集

近年のインターネットの普及や様々なECサイトの台頭によって、実店舗へ足を運ばなくてもあらゆる商品やサービスの情報をオンライン上で収集できるようになりました。とりわけ自動車・大型家電など比較的価格の高い商材においては、従来は店頭での販売員の説明が重要な情報収集のルートでしたが、今ではメーカーサイトの情報や比較サイトでのレビュー、SNS上での口コミもスマートフォン一つで簡単に収集できるようになり、オンライン上の情報だけで商品を選択することも珍しくなくなりました。また、売り手側からのオンライン上の発信手段も進化し、Instagram やYouTube など、文字だけにとどまらないリッチなコンテンツでの情報発信が可能になっています。

こういった局面で、売り手側が実際に対面することのできない「目に見えない顧客」に対し、いかにオンライン上で自社商品・サービスに誘引し囲い込めるかが重要になっています。
この記事では買い手の「商品購入前の、オンライン上での検討行動」を明らかにすることを通して、オンライン上におけるよりよい導線づくりや顧客へのアプローチ方法について考察します。

【目次】

自動車購入にみる情報収集行動

自動車の購入者を例として、購入前のオンライン上における情報収集行動をみてみることにしましょう。メーカーやボディタイプによっても検討行動のプロセスは異なりますが、今回はCar-kit(自動車パネル)の情報を基に自動車購入者を「新車購入者」と「中古車購入者」の2つのセグメントに分け、購入前の接触サイトにどのような違いがあるのかをみてみました。このサイト接触行動の把握には、協力モニターのメディア接触ログデータであるインテージシングルソースパネル®(i-SSP®)を用いました。

図表1は新車・中古車の各購入者が車購入までの6ヵ月間でどのようなタイプの車関連サイトをより多く見たのか、接触量の内訳を表したものです。

図表1

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新着情報やレビューなどが確認できる「車情報サイト」や「自動車保険サイト」を見ている割合に大きな差は見られませんが、新車購入者は「メーカーサイト」に最も多く接触し、中古車購入者は「中古車情報サイト」に最も多く接触するという違いが顕著にみられます。中古車購入者が「中古車情報サイト」に多く接触するのは当然ですが、新車購入者の中でも「中古車情報サイト」の接触が一定あり、必ずしも最初から新車での購入に絞っているわけではないことがわかります。

では、車購入者はいつごろからオンラインでの検索行動を開始するのでしょうか。新車・中古車の各購入者における、タイプ別の車関連サイトへの接触量を時系列であらわしたものが図表2です。

図表2

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新車購入者からみていきましょう。まず目に留まるのが「メーカーサイト」への接触の多さです。常にどのタイプのサイトよりも多く接触しています。特に購入の3ヵ月前あたりから接触量が増加し始めることがわかります。一方で「車情報サイト」については購入直前の1 ヵ月前からようやく接触が増加し始め、購入当月に大きく伸びています。このことから、新車購入者は「メーカーサイト」を軸として3ヵ月程度検討を行い、ある程度具体的な車種が決まった段階で「車情報サイト」にアクセスし、目当ての車種に関する第三者による情報や試乗レビューについて情報収集を行っているものと推察できます。
また、新車購入者も「中古車情報サイト」への接触が一定あると先述しましたが、購入の1~2ヵ月前には「中古車情報サイト」への接触量の増加が見られています。この結果から、新車購入者の一部においては、直前まで中古車購入も候補に挙がっていると考えられます。

中古車購入者はどのような動きをしているのでしょうか。購入に向けて「中古車情報サイト」への接触量が大幅に増加する動きが目立ちます。ただし、接触量の増加は購入の2ヵ月前あたりからとなっていて、新車購入者と比べると購入までの検討期間は短いことがうかがえます。
各サイトへの接触傾向から、中古車購入者は「中古車情報サイト」を軸としながら、気になった車種の情報を「車情報サイト」で収集し、最終的に候補となった車種の詳細なスペック情報を「メーカーサイト」で入手する、といった動きが見えてきます。中古車購入に際しては、時期によって市場の在庫や価格が変わるため、必然的に「中古車情報」サイトの接触が中心となり、購入までの期間も短くなったと考えられます。

新車購入者・中古車購入者の間では、性別や年代の構成に大きな差はありません。つまり顧客のデモグラフィック属性のみを意識してコンテンツを作成しても適切な情報提供は行えません。新車か中古車かによって検討する期間や中身が異なることを踏まえ、その顧客が検討におけるどの段階で、何の情報を求めているかを見極めて情報提供を行うことが重要となってきます。

購入検討サポートとしてのメーカーサイト

図表1からもわかるように、新車購入者の情報収集の半分以上はメーカーサイトが占めており、購入検討者にとってメーカーサイトの情報が重要な情報源であることは言うまでもありません。
企業側にとっても自社のオウンドメディアは、顧客の検討段階において自社商品をアピールし、購入を後押しするための貴重な場となります。

ここからは新車購入者の「メーカーサイト」への接触について、企業ごとにどのような接触傾向の違いがあるのかをみてみましょう。図表3は新車購入者によるメーカー各社のサイトへの接触量の推移を表しています。

図表3

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各社とも購入当月にかけて接触量の増加が見られていますが、最も順調に接触量を伸ばしているのがA社のメーカーサイトです。最終的にどのメーカーの車種を購入するかで、購入直前に見るメーカーサイトは変わってきます。メーカーにとって、購入時期に近づくほど自社サイトへの関与が上がっているという実態は理想的と言えるでしょう。
また、実際に各社メーカーサイトを見ると、いずれのサイトにおいても購入検討者向けのサポートページがあり、販売店の検索や試乗車検索が可能である点は同じですが、A社のメーカーサイトでは現在乗っている車の下取り参考価格の検索ができたり、見積もりシミュレーションでオプションを人気順で選ぶことができたりと、メーカーサイト内だけで車の買い替えに必要な情報が網羅されていました。こうした購入者の検討プロセスを考慮したサイト作りが購入直前のサイト接触量を高め、最終的には検討者の囲い込みにも寄与していると考えられます。

情報収集としてのYouTubeの役割

ここまで車関連のサイト接触に焦点を当ててきましたが、車の購入検討者は必ずしも車関連のサイトからすべての情報を収集するわけではありません。例として、車購入者の購入前6ヵ月間におけるYouTubeの平均利用時間の推移をみてみましょう(図表4)。車以外の動画も含めての利用時間のため、検討開始時期の前から一定の利用量はありますが、購入月に向けて利用時間が上昇していることがわかります。

図表4

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YouTube内での検索ワードをみてみると、「インプレッサスポーツ」、「スズキ ハスラーG 4WD」など、具体的な車種名で検索をしていて、車購入の検討材料としてYouTubeを利用していたことがうかがえます。
最近では一般ユーザーによりYouTubeに試乗のレビュー動画が多く上げられていて、来店前に検討車の内装や実際の性能などを確認することができるようになっています。
こうした具体的な車種検討の段階において、ターゲットに向けた動画広告の出稿はもちろん、メーカーによる自社製品の検討者に向けた車両解説・製品メリットを訴求した動画投稿や、一般ユーザーにレビュー動画を投稿してもらうなどの施策を行うことで、同じ候補車の中でも優位に立つことができると考えられます。

ここまで、自動車購入者の検討段階におけるオンライン接触状況の分析を通して、検討プロセスの考察を行ってきました。
上述したようなオンライン上における買い手側の検討行動は、いわゆるA I S A S ※1 モデルにおける「Search」にあたります。認知や関心を得るための広告出稿や顧客のアクションを促すための販促などに比べて、オンライン上における買い手の検討行動は、企業側がコントロールできる範囲が限られています。しかしながら購入者の検討プロセスを細かく捉えて購入までの導線を把握し、それを自社サイトコンテンツ、マーケティング戦略に反映させていくことで、自社商品・サービスへの誘引と囲い込みを効果的に行うことができます。
時代とともに変わる顧客の検討行動の変化を捉えて柔軟に対応していくことは、売り手にとって永遠の課題ですが、同時に競合との差別化を図る大きなチャンスとも捉えることができるのではないでしょうか。

1 2004年に電通が提唱した消費行動モデル。Attention(注意)/Interest(興味)/ Search(検索)/ Action(行動)/ Share(共有)の5つの英単語の頭文字から名づけられている。


今回の分析は、インテージの提供するi-SSP®(インテージシングルソースパネル®)Car-kit(自動車パネル)のデータを用いて行いました。

i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)

インテージの主力サービスであるSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。

【Car-kit(自動車パネル)】

株式会社インテージが毎月約60万人から前月の自動車情報を取得しているシンジケートデータです。
現有車や次期意向などを聴取する市場動向把握調査と、契約者に対して購入理由や購入時の重視点などを聴取する契約者調査の2部構成で実施しております。

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