旅行の実態をデータから紐解く~地方から首都圏への旅行の「5W1H」~

コロナ禍が明け、旅行需要は一定の回復を見せました。しかし、中長期的に見れば国内旅行市場は縮小傾向にあります。また、SNSや動画サイトには常に旅行情報が溢れ、AIの活用も進んだことで、一人ひとりが自分に最適な旅行体験を自由に選べる環境になってきました。
こうした環境下では、旅行者を獲得するために生活者のニーズや行動変化を的確に捉え、それに基づいた販売戦略を立てる視点が不可欠です。
今回は10万人規模の大規模アンケート調査「うご-kit」のデータを活用し、日本の観光・レジャー市場において多くの市場ボリュームを占め、かつ多くのイベントや商業施設が集中する「首都圏(1都3県)」へ向かう旅行者の動態を5W(誰が・いつ・どこへ・なぜ・何を)」の視点で紐解いていきましょう。
目次
1. 【WHO/WHEN】首都圏を目指すのは誰か?8割がリピーターの実態
2026年春(3-5月)、宿泊を伴う旅行者のうち18%が首都圏を訪れました。回答者の居住地別で見ると、東北、甲信越、沖縄からの 流入が目立ちます(図表1)
図表1

注目すべきは、来訪回数の多さです。首都圏旅行者の約8割が「2回目以上」のリピーターであり、さらに5回以上訪れている「常連客」が38%も占めています(図表2)
図表2

また、旅行の同行者をみると「一人旅 」が約3割最も高く、フットワーク軽く移動していることがうかがえます。先ほどのリピーター率の高さも踏まえると、旅行者にとって首都圏は「特定の目的のために、一人でも気軽に、何度も通う場所」として選ばれている可能性が高いと考えられます。(図表3)
図表3

2. 【WHERE】テーマパークから温泉まで。都県別にみる「選ばれる場所」
旅行者は首都圏のどこに足を運んでいるのでしょうか。自由回答データからは、エリアごとの鮮明な役割が見えてきました(図表4)
図表4

このように3-5月の首都圏旅行では、東京都の都市観光・イベント需要を軸に、神奈川の温泉や港町観光、千葉のテーマパーク・リゾート観光、埼玉の歴史・自然観光へと広がる構図がみられました。旅行者は単一エリアにとどまらず、複数県を組み合わせ ながら、多様な体験を楽しむ広域周遊型の旅行スタイルを実践していることがうかがえます。
3. 【WHY】なぜ首都圏エリアに旅行をするのか。旅の目的は居住地ごとに異なる
では、なぜ首都圏エリアに旅行をするのでしょうか。まず前提として「家族・友人と交流する/思い出を作る」ことが最も大きな目的です。その他、今回の首都圏旅行の目的を居住エリア別に読み解くと、首都圏旅行に求めている「目的」として大きく3つの傾向が明らかになりました。(図表5)
図表5

①「話題の食」を求めて
特に中国エリアや北関東エリアの人々にとって、流行の最先端が集まる首都圏でのグルメ体験は、旅行を決定づける強力なフックとなっていることがうかがえます。
②「ライブ」
特に遠方からの旅行者の中でも中日本・西日本居住者では、「ライブ・スポーツ観戦」を目的に訪れる割合も高く、大きな旅行動機となっていることがうかがえます。
③「宿での非日常」と「温泉」
一都三県・北関東エリアなど近隣のエリアの人々では「温泉」「宿泊施設」が非常に高く、「宿泊体験そのもの」や「近場の癒やし」を求めてホテルや旅館を選んでいる実態がうかがえます。
このように、同じ首都圏旅行であっても、居住エリアによって「トレンドの食」を重視するのか、「特定のイベント」を重視するのか、その目的には大きな違いがあります。
このような旅の目的を決める情報源を見ると、まずベースにあるのは「家族・友人・知人からの話」といったリアルな口コミです。また「テレビ番組」「旅行情報サイトや宿泊予約サイト」「SNS」などを駆使し、自ら最新スポットや口コミを精査し、自分にぴったりの体験を「主体的に選び抜いて」いることがうかがえます。
図表6

4. 【HOW/WHAT】1回の旅にいくらかけるのか。また宿泊施設の予約方法の違いは?
最後に、旅行者が首都圏で具体的にいくら使い、どのような経路で予約をしたのかをエリア別に紐解いてみましょう。
宿泊を伴う首都圏旅行の1人あたり平均支出総額は、約7.5万円。全体の平均宿泊費は約2.3万円となっています。
一方で、宿泊費以外のお金のかけ方で特徴的なのが東北と沖縄です。東北からの旅行者は「チケット・施設料」に約3.1万円、沖縄からも約2.4万円と、全体平均(約1.0万円)を大きく上回る金額を投じています。前の章で見た様に、特定の大型テーマパークやイベントといった、明確な「目的」のために首都圏を訪れている様子がこのデータからもわかります。(図表7)
図表7

また、宿泊施設の予約チャネルについても、エリアによる違いが見て取れます。
全体ではOTA(オンライン旅行代理店)が45%と主流ですが、遠方エリアほどその傾向は強まります。
一方で、一都三県や北関東といった近隣エリアからの旅行者は、「宿泊施設への直接予約」が高く、リピート利用や特定の施設へのこだわりから直接予約を選択しているという、物理的距離に応じた予約行動の違いが示唆されます。(図表8)
図表8

5. 終わりに
今回の結果から、首都圏へ向かう旅行者は、「リピーターが多く、目的特化型のこだわり旅行へと」シフトしている実態が見えてきました。また、こうした首都圏への高い注目度は、今後も一定の関心を集める可能性があります。実際に「今年の秋(9月-11月)に来訪したい都道府県」を尋ねたところ、一都三県(首都圏)は19%と上位にランクインしています。一方で、首位は近畿エリア(24%)であり、季節ごとの魅力やイベントによって生活者の関心は常に変化し続けていることが分かります。
(図表9)
図表9

「うご-kit」では、四半期ごとの旅行実態を取得しているため、季節ごとの違いや最新のトレンド変化も把握することが可能です。自社の業績が「市場全体の動き」に連動しているのか、といった「市場要因」を正しく捉えるためのベンチマークとして、「うご-kit」を活用することが可能です。
更に、今回の分析のように大規模な定点調査による客観的な市場データを読み解いた上で、自社の内部データと重ねて分析することで、より根拠のあるPDCAを回すことができるようになります。
知るギャラリーでも「うご-kit」を用いて旅行の変化について様々な角度から調査を続けていきます。
今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
【調査方法】インターネット調査(うご-kitデータを活用)
【対象者条件】全国・15-79歳男女
【標本抽出パネル】キューモニター
【ウェイトバック】エリア×性年代構成比を、全国の人口構成比に合わせてウェイトバック集計
【サンプルサイズ】約10万人規模のデータのうち、該当エリアへの宿泊旅行者6179sを活用
【調査実施期間】2026年6月3日(水)~9日(火)
【旅行対象時期】2026年3月~5月の宿泊旅行が対象
今回の分析に利用した、「うご-kit」についての紹介は、以下のダウンロードページよりご覧いただけます。
著者プロフィール

矢口 翔太(やぐち しょうた)株式会社インテージ マーケティングパートナー第2ユニット企画営業3部
前職において、位置情報を活用した地方創成、観光および街開発に関連する企画・調査に約5年間従事。
多くの地方自治体の観光や街開発における調査を手掛けてきた。
インテージ社では観光領域を中心とした、企画・調査を主に担当。
転載・引用について
◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」
◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら