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インテージフォーラム 2019 開催報告:X03

『リサーチ・ドリブン・イノベーション』生活者にとっての"イノベーション"を問い直す

東京大学 大学院 情報学環 特任助教
株式会社ミミクリデザイン代表
安斎 勇樹 氏

花王株式会社
ファブリックケア事業部 商品開発 開発マネージャー
水澤 公宏 氏

一般社団法人マーケティング共創協会
理事長
武内 美奈 氏

株式会社インテージ CR事業本部 CR事業企画室 デ・サインリサーチ マネージャー
鮎澤 留美子

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いかにしてイノベーションは生み出されるのか、本セッションではこうしたテーマについて活発なディスカッションが行われた。

東京大学/ミミクリデザインの安斎氏は、ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授が提唱する「意味のイノベーション」の考えから、イノベーションデザインの持論を展開。新技術にとって肝心なのはどれだけ生活者の生活や行動を変えたのかということであり、また「ユーザーを考える時には暮らしの文脈の中で、どういう意味を感じて消費しているのかまで視座を上げて考えていくべき」と話題提供をいただいた。さらに新しいものを生み出していくためには、作り手個人のモチベーションをリンクさせられる組織のあり方も考えていくべきと語った。

花王の水澤氏は、片手で洗剤を投入できる「アタック ZERO・ワンハンドプッシュ」開発の経緯を語った。この商品は、フィールド調査を行う中で、子どもをおんぶして洗濯をする母親に対し「何かできないか」と考えたところからも生まれたものだという。しかし、そのヒントは「こうしてほしいと生活者に直接言われたものではない」と語る。「ヒントは洗濯や商品だけではなく、その人の生活全体を通して感じ取ることが必要」と述べた。
マーケティング共創協会の武内氏は、生活者は常に揺れ動いている存在であり、こうだと決めつけてしまわないことが大切と述べる。「生活者のニーズに適合するだけではなく、能動的に生活者に働きかけることの両方が大事。投げ方や働き方次第で、未来に対する期待や不安が変容していくものではないでしょうか。」と述べた。

続いてイノベーションを生み出すための取り組みについても活発な議論が行われた。水澤氏は「ゴールから逆算してばかりでなく、スタート地点から発想を拡散させる仕事をしないと、商品の深さが足りなくなる」と指摘する。
安斎氏は「リサーチデータは正解探しばかりではなく、企業のビジョンや実現したい未来を形にする触媒にしていくべき」と述べる。インテージの鮎澤は、「未来の暮らしを創造するためのリサーチの活かし方は、当たり前を疑い、創造的な狙いをもってリサーチの“問い”を建てることが肝要。生活者が考えるこれからの暮らしへの期待心理を複雑性が富んだままに引っ張り出し、構造化させることが、イノベーションリサーチとして有効性を発揮している。」と述べ、セッションは終了した。