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インテージフォーラム 2016 開催報告
~セッション 第2クール~

セッション:第2クール

 
Y01

標本調査による計測(i-SSP)から、全数計測・質の評価へ

Y02

ブランド経験価値共創を促進するマーケティングのあり方

Y03

生活者との信頼関係に基づくパーソナルデータ流通がマーケティングを変える

Y04

シンガポール発アジアモバイル最前線!!!

Y05

そのデータ大丈夫?スマホ時代のネットリサーチ新基準

Y06

メディア接触×ノンバーバルデータにおけるクリエイティブ開発支援の取り組み

Y01:標本調査による計測(i-SSP)から、全数計測・質の評価へ

 
株式会社インテージ MCA事業本部 本部長 長崎 貴裕
株式会社インテージ MCA事業本部
クロスメディア情報開発部 部長
田中 宏昌

株式会社インテージ・ニールセン
デジタルメトリクス(インディジム) 取締役
李 相吉

株式会社IXT(イクスト) 取締役 塩塚 義雄

インテージの「i-SSP(インテージ・シングルソースパネル)」は、TV、PC、スマートフォンといったメディア接触データと購買履歴データをシングルソース(同一個人)から収集し、情報接触と消費行動の因果関係を視覚化するソリューションだ。インテージ田中はi-SSPの活用は「広告効果測定」からスタートしたが、現在ではメディアプランの最適化といった「プランニング支援」まで幅広く展開。デジタル広告の変化に対応すべくメディアやスマートフォンアプリなどの計測カバレッジの拡大を積極的に推進していると語った。

インテージとニールセンが設立したJVのインディジムでは、デジタル広告到達の詳細な計測が可能な「Targeting Metrics」を提供。インテージのi-SSPと、ニールセンのデジタル広告視聴率「DAR(Digital Ad Ratings)」を組み合わせ、ターゲットセグメント別に代表性のある計測指標を導き出すという。インディジム李は、現在のデジタル広告では小規模かつ出稿枠が分散したキャンペーンが多く、このフラグメンテーション化には標本調査での計測が難しく全数系データの利用が有効と指摘。一方で、計測実績から広告到達者にどれくらい本当のターゲットがいるかを調べると実は半分も含まれていなかったことから、パネルの正確かつ豊富な属性データを活用したキャンペーン計測の必要性を強調した。

日本全国で20万台を超えるSmartTVのログデータから、マーケティングに活用できるプラットフォーム作りを行うIXT。同社塩塚はSmartTVのログはまだマイナーなデータであるが、そのニーズは年々増加傾向にあるという。現在の特殊性を差し引いてもマーケティング活動での利用は十分にあり得るとし、平日朝8時台に放送されている民放各番組の地域別接触率比較から、同一番組であっても地域によって接触率が大きく異なることを示した。また15秒ごとの接触率を出せる点を強調し、これを企業のインフォマーシャルに置き換え、接触率の“谷”の早期発見と改善で大きな効果を上げられると語った。

その後インテージ長崎を司会に、登壇者3名のパネルディスカッションを実施。「生活者の情報行動の多様化と計測について」「設計されたパネル調査データと全数系データの関係について」等が議論された。最後に「スマホ版表情解析(セッションY06参照)」を筆頭とした、広告やコンテンツの質的評価への取り組みを披露。これからも積極的に情報行動を解明していくことを強く宣言し、セッションを終えた。

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Y02:ブランド経験価値共創を促進するマーケティングのあり方

 

環境のデジタル化、生活者のメディア化が進む中で生まれる重要概念のひとつに「ブランド経験」がある。近年、マーケティング実務においても注目されている概念だが、田中教授も学術的な見地からその重要性を語る。人間は広告などから得た情報よりも、自分自身の経験からより強い影響を受ける傾向があり、“ブランド経験のコントロール”は最重要課題の一つとなっていることを様々な事例から示唆した。

アジャイルメディア・ネットワークの徳力氏は、「従来のマス・マーケティングに加え、SNSが普及した現在は、情報の発信・循環役となるファンを大切にすることにより、ブランド・ロイヤリティの高い少数のファンの盛り上がりをきっかけに、売上を伸ばすことも可能となっている」と説明する。同社はアンバサダー・プログラム等、ファンとの共創マーケティングの事例をサポートしてきているが、カルビーのファンサイト「じゃがり校」の事例を紹介。毎年、期間限定商品の一つをファンと一緒に開発するなど、ファンを育てる試みを積極的に行っており、実際に売上にも大きく貢献している。同社の増田亮子氏は、「コアなお客さんの経験をコアじゃない人に伝えてもらえた」ことが成功の要因と語る。

インテージの各種データからも、じゃがりこの売上にソーシャルやオウンドメディアが貢献している様子が紹介された。こういったブランド経験価値時代の新しいトラッキングのあり方について、インテージ三浦より「追うべき人(循環層、絆層)」「追うべき指標(経験価値指標等)」「追い方(ログで高速PDCA」の提案があり、あわせて、それを補完するカスタマージャーニーの可視化に有効な「コグニティブ・インタビュー」等、新しい定性手法が紹介された。

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中央大学大学院 ビジネススクール 教授 田中 洋 氏
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
取締役 CMO
徳力 基彦 氏

カルビー株式会社 マーケティング本部
素材スナック部 じゃがりこ課
増田 亮子 氏

株式会社インテージ
ビジネスプラットフォーム本部
マーケティング部 部長
三浦 ふみ

Y03:生活者との信頼関係に基づくパーソナルデータ流通が
マーケティングを変える

 
東京大学 大学院 情報理工学系研究科
ソーシャルICT研究センター 教授
橋田 浩一 氏

株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局
エクスペリエンス・テクノロジー部
シニア・マネージャー
日塔 史 氏

株式会社インテージ MCA事業本部
デジタルマーケティング部
伊藤 直之

プライバシーへの関心の強まりを背景に、企業による生活者のトラッキングや個人情報の活用はますます困難になっていく。その一方で、多くの生活者が自分で自身のデータを保有し、自分のために活用したいという考えを持ち始めている。橋田教授は「それゆえ今後は個人が自分自身のデータを蓄積・管理し、企業とセキュアに共有する「分散PDS(personal data store)」の普及が必定である」と指摘する。現在の“データの集中管理”では、管理コストも情報漏洩リスクも大きく、企業間の連携も困難である。しかし生活者自身が自分のデータを管理すれば、企業は必要に応じて顧客から直接データを提供してもらうことで、管理コストをかけずに安全なデータ共有が可能となる。個人データ流通の主役が企業から個人へとシフトすることには多くのメリットがある。

電通の日塔氏は、分散PDSによって個人の“深いライフログ”を安全に蓄積することで、「ユーザーの行動をディープに理解し、適切なコミュニケーションを築くことができる」と期待する。蓄積したディープデータとパーソナルアシスタントとなるAIを組み合わせることによって、これまで効率重視であったアドテクから新しい欲求(需要)を創出するマーケティングが可能になる。

インテージが実施した意識調査では、PDSの利用を希望する生活者の割合は6割を超えており、プライバシー意識が強く、データの所有者意識、および自身のデータの利活用意識が高い生活者ほどPDSの利用意向が高くなるという結果が出ている。個人データ流通の主役が個人へシフトすることによってマーケティングも変化し、ビジネス起点やエンゲージメント構築主体なども個人へシフトしていくと考えられ、またPDSの普及は、生活者自らが目的達成のために自分の情報を信頼する企業に託すというように、生活者と企業の関係を大きく変えていくと思われる。

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Y04:シンガポール発 アジアモバイル最前線!!!

 

2013年に設立したインテージシンガポールでは、これまでに様々なプロジェクトを成功させた実績がある。そもそも、新しいことへのチャレンジ精神が旺盛な現地の風土の中、モバイルアプリ開発を中心にノウハウを集積。インテージが持つ各国の拠点と連携できる強みを活かして、アジア各国のモバイル事情にも精通し、リサーチにおけるモバイルの活用を推進している。

同社では、変化のスピードが早いアジアのモバイル事情を踏まえ、行動記録による調査を実施。関連会社である株式会社ドコモ・インサイトマーケティングが独自開発した「レコーディングリサーチ(MyReco)」により、リアルタイムな情報入力を可能とし、行動した瞬間のニーズを確実にとらえ、新鮮で多頻度な情報の入手に成功している。

本講演では、モバイルを活用した電子商取引の各国別の実態はもちろん、所有率や男女比、利用されるアプリケーションの差など、ニーズの違いについて分析した結果を紹介した。
また、シンガポールとタイを対象に、流行に敏感な現地メンバーと会場をスカイプで繋いだ。買い物だけでなく、宗教や教育など生活に密着したSNSツールの活用について現地のモバイル事情を語ってもらう時間を設け、大いに盛り上げた。インテージシンガポールでは、さらにリアルなモバイル事情を把握するため、Asia Ad Trace Panelを設立、広告識別子を利用した接触判定をモバイルパネルなどを活用してマーケティングする取り組みを始めている。当初は台湾、韓国、インドネシアを対象に各国3~10万人規模のモバイルパネルの立ち上げを目標としていたが、最終的にこれらを拡大し、2019年までにアジア全域で各国50万~100万人規模のパネルを設立する計画を掲げた。

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INTAGE SINGAPORE PTE. LTD.
Managing Director
Junichiro Hasegawa

Y05:そのデータ大丈夫? スマホ時代のネットリサーチ新基準

 
株式会社インテージ
カスタムリサーチ事業統括本部
カスタムリサーチ事業統括部
ダイレクトライングループ
五十嵐 修

近年スマートフォンが急速に普及し、インターネット利用機器としてPCを逆転しようとしている(出典:総務省「通信利用動向調査」)。また同社調べでは、インターネット調査の回答デバイスとして、10代で8割、20代でも6割がスマートフォンを利用していた。このような状況下で、PC回答を前提としたモニターだけで偏りはないのか。またPC回答用に作成された調査画面にスマートフォンで回答して正確なデータが集まるのか。その検証結果とネットリサーチの新基準を提唱した。

回答デバイスがPCからスマートフォンへ移行しつつある現在、PCを前提とした回答者のみで構成されたモニター組織では、正しく市場を反映できていない可能性が高いと指摘。また、従来のPC用調査画面をスマートフォンで表示した場合、画面をスクロールしなければすべての情報が閲覧出来ないという問題が浮上。同社の検証結果からも選択肢の読み飛ばしや複数回答の質問での回答数の減少が明白であり、調査結果からマーケティング判断をミスリードしてしまう可能性が危惧される。そこでPCに偏らず一定のスマートフォン回答者を含めたモニター組織の構築、デバイスによる回答差異が発生しない画面を新基準として提案。大手他社でも対応に乗り出しているが課題は残り、苦慮しているのが現状だ。

同社ではアンケート専用のPCモニターと、一般生活者であるスマートフォン会員の比率を組み合わせた「マイティモニター」により、市場反映性の高いモニター組織を実現している。さらにPC・スマートフォン間で表示に差異がない画面表示が可能な「i-タイル」により、読み飛ばし・押し間違いのない正しい回答を収集。デバイスによる差を抑え、回答品質の向上に成功している。

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Y06:メディア接触×ノンバーバルデータにおける
クリエイティブ開発支援の取り組み
生活者を理解し、信頼関係を作る
クリエイティブ開発および配信支援に向けて

 

スマートフォンの普及に伴って生活者の情報接触は急速に「モバイルシフト化」が進んでいる。持ち運び可能な情報端末によって、いつでもどこでもあらゆる種類の情報に大量に接触できる――生活者のそんな行動が顕著になっているのは周知の通りである。
企業側もこうした状況の下で、広告を通して生活者と積極的にコミュニケーションを取ろうとしているが、企業は生活者との間に本当に“信頼関係”を構築できているのだろうか? ところが調査によると実に9割超の生活者が、PCやスマートフォンの広告に対して「わずらわしい」と感じているという結果が出ているのである。

広告効果を最大化するためにも、この「わずらわしさ」の改善は必須である。そこで、当社はウェブレッジと共同である実験を行った。スマートフォン観覧時の視線や表情のデータを抽出して分析する技術を用い、被験者がスマートフォンの動画広告を視聴した時に、どのような表情・感情が表れるかを調べたのである。その結果、広告のわずらわしさを低減し、生活者の「好き」という感情に繋げるためには、生活者のニーズにあった広告を、生活者が求めているタイミングで提供することが重要であると分かった。

生活者のニーズにあったコンテンツを適切なタイミングで提供する、最適な広告配信を実現していくためには、生活者のデータを常に収集し、ニーズを把握できるソリューションが必要であると考えられる。両社はそうしたソリューション開発に向け、今後も連携して研究を行っていく所存である。生活者の求めに合致した広告配信が可能になれば、広告効果の最大化・最適化に繋がるとともに、真の意味で、生活者と広告主の“信頼関係”構築にも繋がっていくと考えられる。

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株式会社ウェブレッジ 渡辺 誠一郎 氏
株式会社インテージ 中村 勇揮