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アルコール市場動向―酒販免許規制緩和の行方
PICK UP
  • 酒類の「完全自由化」も、市場は全般的に微減傾向
  • 規制緩和の進展により、酒類専門店(酒量販店、一般酒店)は縮小
  • 2006年には酒類の5割以上がスーパーでの購入
  • スーパー成長の牽引役は、低価格で買いやすい発泡酒
  • 規制緩和による販売店舗数の増加のみならず、取り扱い商品の広がりがスーパー成長の要因
  • 今後の成長のカギは、消費者のニーズをとらえ、各販売ルートの特色を生かした魅力ある市場の創出
マーケティングリサーチ最大手の株式会社インテージは、同社が提供するパネル調査サービスの一つであるSCI(*)の結果からアルコール飲料の市場動向に関する調査をまとめた。

国内の産業政策の一環として、さまざまな規制緩和が取り組まれてきたが、アルコール業界においても1998年から、酒販免許制度が段階的に緩和されてきた。2001年1月には販売店間に一定の距離を置く「距離基準」が、2003年9月には地域ごとに人口当たりの免許枠を定めていた「人口基準」がそれぞれ廃止され、さらに2006年9月には既存業者を保護する「緊急調整地域」の指定もなくなり、実質完全自由化となった。“酒販免許の完全自由化”から半年が経過し、アルコール市場はどのように変化したのか?インテージSCIをもとに、酒販免許規制緩和の行方の検証を試みた。

■マーケット・アナリスト 溝口 隆之(株式会社インテージ マーケティングソリューション部)
(*)SCI(全国個人消費者パネル調査)
わが国唯一の全国消費世帯パネル調査。2人以上で構成する12,008世帯のモニターをオンラインネットワーク化し、毎日の購入商品・購入ルート・購入金額などのデータを収集して、顧客企業に「マーケットシェア」、「ブランドスイッチ分析」、「購入価格分析」などのマーケティング情報を提供している。
調査結果

1. 全酒類の消費動向

図1はSCIで見た酒類の消費動向の長期トレンドである。酒類トータルでは、2001年、2002年に盛り返したものの、全般的に微減傾向にある。1992年に酒類の7割程度を占めていた「ビール」は、1995年の「発泡酒」の登場以降激減している。その発泡酒も2003年のいわゆる「第3のビール」の登場によって、市場は縮小傾向にある。
「日本酒」は市場が縮小する傾向にあるものの、「焼酎」は2003年ごろから本格焼酎ブームが始まったこともあり、やや拡大傾向となっている。また、2001年ごろからチューハイやカクテルなどの「低アルコール飲料」も伸びてきている。

[図1] 
SCI全酒類消費動向(容量ベース)

2. 購入ルートの変遷

図2はSCIでの購入ルートの変遷である。
1995年時点で、4割以上を占めていた「一般酒販店」は、酒のディスカウントストア(以下、酒量販店)に押される形で縮小していった。その酒量販店も1998年頃から成長が鈍化し、2001年の距離基準廃止以降、徐々に縮小してきた。
1998年以降、ドラッグストアなどの新規参入も見られるものの、構成比としてはまだそれほど大きくはない。この間、最も規制緩和の恩恵を受けたのは「スーパー」であった。酒類市場が漸減していく中、スーパーでの消費量は徐々に伸びていった。2006年には酒類の5割以上がスーパーでの購入となり、一般酒販店や酒量販店といった酒類の専門店をしのいでいる。
また、この間の主要ルートの伸張状況をみると(図3)、スーパーは規制緩和のたびごとに大きく伸ばしている。ここ2年ほど、伸びは鈍化してきているものの、依然前年比103%程度で成長を続けている。一方、酒量販店は2000年にマイナス成長に転じ、規制緩和の進展とともに苦戦を強いられている。2006年になって、ややマイナス傾向に歯止めがかかりつつあるが、2006年の規制緩和の影響が懸念されるため、引き続き予断を許さない状況にある。

[図2] 
SCI購入ルートの変遷(容量ベース)

[図3] 
主要購入ルートの伸張状況(容量ベース)

3. 規制緩和の影響

図4は、スーパーにおける各酒類の購入容量の変遷である。1998年以降、爆発的に伸びたのは発泡酒であった。ビールよりも低価格で買いやすいこともあり、規制緩和の進捗の中で、スーパーの成長を支えるけん引役を担っていた。また、全般的に市場が縮小傾向にある日本酒も、2003年には1996年ごろの2倍程度にまで成長しており、その後も購入量をほぼ維持している。他にも、ワインや低アルコール類の伸張もみられ、規制緩和による販売店舗数が伸びただけではなく、取扱商品にも広がりを見せていることが伺える。

[図4] 
スーパーにおける各酒類の購入容量の推移

このように、家庭内消費に絞ってみてみると、規制緩和の進展によって、酒類専門店(酒量販店、一般酒販店)が縮小し、それに対応してスーパーが大きく成長してきた構図が読み取れる。2006年9月から、酒販免許が完全自由化となったが、酒類の市場が全体的に縮小傾向にある中で、取扱い店舗の増加が市場の活性化に直接繋がることは難しいと考えられる。単に販売店舗数を伸ばすだけでなく、どのような商品を取り扱い、消費者にそれらの魅力を訴えていくことができるのか。今後の成長のカギは、それぞれのルートの特色を生かし、魅力ある市場を創出することができるかにかかっているのではないか。

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インテージ ビジネスパーソン意識調査『男性の美容意識』 2015年2月調査
株式会社インテージのビジネスパーソン意識調査『男性の美容意識』(2015年2月調査)によると・・

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調査会社概要

【株式会社インテージ】 http://www.intage.co.jp/
株式会社インテージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:石塚 純晃)は、「Create Consumer-centric Values 〜お客様企業のマーケティングに寄り添い、共に生活者の幸せを実現する」を事業ビジョンとして掲げ、様々な業界のお客様企業のマーケティングに寄り添うパートナーとして、ともに生活者の幸せに貢献することを目指します。生活者の暮らしや想いを理解するための情報基盤をもって、お客様企業が保有するデータをアクティベーション(活用価値を拡張)することで、生活者視点にたったマーケティングの実現を支援して参ります。

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