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市場創造のカギは、お客様である生活者の可視化と着実なマーケティングPDCA

花王株式会社 デジタルマーケティング部データサイエンス室 広末守正氏

高いシェアを保つ一方で売上が飽和状態となっていた花王の「ビオレUV」は、卓越したデジタル・プロモーションによりマス広告では不可能だった需要喚起に成功しました。このプロジェクトのマーケティングPDCA(お客様理解、コミュニケーション、効果測定、課題抽出)を辿った、同社・デジタルマーケティング部データサイエンス室の広末守正氏の論文は高い評価を受け、「第44回 JAA広告論文」で金賞を受賞しました(*1)。「お客様は外で子どもと遊びたいのであり、日焼け止めが欲しいのではない」と語る同氏にお話を伺いました。

きっかけは梅雨明けを狙ったデジタル広告…お客様理解のスタート

まずは、広告論文金賞受賞の感想などをお伺いしたいのですが。

最初は一昨年(2016年)に書こうとしたのですがうまくいかず、結果的に2017年になって、(取り組みが)「なんとか終わったな」という感じがあったことで、ようやく完成させることができました。賞をいただいた時は、恥ずかしいという気持の方が大きかったです。

論文の内容は「ビオレUV」のマーケティングですが、取り組みにいたった経緯をお聞かせください。

花王の商材の売上は天気や気温にわりと関係していることが多いことはデータからわかっています。例えばヘアスプレーの「ケープ」は梅雨時期に売れるのですが、「髪」について書かれたブログを分析すると、どうやらお客様は髪が湿気で広がるのを抑えるために使っているらしいと。そこで、梅雨入りと連動したデジタル広告を都道府県別にやったのですが、その効果を見て、「梅雨入りがあるなら梅雨明けもあるんじゃないか?」、「UVでもやってみてはどうか」という話になり、「ビオレUV」のデジタル広告の取り組みが始まりました。

高いシェアをキープしているブランドですが、課題はあったのでしょうか。

当時、SKUが10個以上になっていまして、CMをやるにしても全部はだせないよね、という中、ターゲットを絞ったコミュニケーションでもうちょっと個別の商品の売り上げが立てられるのではないか、というのが課題としてありました。

花王株式会社 デジタルマーケティング部データサイエンス室 広末守正氏

ターゲットの絞り込みはどのように行ったのでしょう。

最初(2015年)は、「マイルドケアミルク」という少し前に出た商品について、きっかけを作りたいという話がありました。しかしプロモーションをするにしてもターゲットがつかめず、仮説もない状態でしたので、まずは「日焼け」という言葉を広く見てみようとブログを追跡していきました。すると、「子ども」という言葉がたくさん出てくる。ちょうど「マイルドケアミルク」はお子さんに使用するのにもふさわしい商品だったので、自然と「子ども」を軸にしようということになりました。翌年(2016年)にはSPF50+の「のびのびキッズミルク」という商品の発売が決まっていたこともあり、この軸で行きましょう、と。

ブログ分析でお客様を理解した上で、ターゲットを絞り込んでいったということですね。このあと、晴天と連動したタイミングで広告配信をされています。広告配信には「di-PiNK(*2)」を使用していただいていますが、どのようなメリットを感じていますか。

特定の商品を買っていただけた方の分析から広告配信、調査や購買率などの効果測定までをひとつのプラットフォームでできることが最大の利点ではないかと思っています。

お客様と向き合う “コト軸”におけるコミュニケーションと、独自データによる効果測定

論文を拝見すると、前述の広告出稿の効果測定、そこでの反省を踏まえた流通対策としてのデジタルクーポン掲載など、着実にマーケティングPDCAを回されています。さらに、2017年にはコミュニケーションの一環として、情報サイト「sotomo」を立ち上げていますが、これは宣伝色がほとんどない、純粋なお役立ちサイトですね。

お客様は子どもを日焼けさせたくない――それは「子どもと一緒に遊びたい」から、「外に出たい」からで、別に日焼け止めが欲しいわけではないんですよね。とすれば、まずは子どもと一緒に遊ぶところにフォーカスするのが自然であるはずです。順序としては、「晴れの日でお出かけにぴったりです」というところから、「お出かけ先にはこういう所があります」と繋がって、最後に日焼け止めが出てくる。単に「この製品にはこういう機能があります」ということだけだと、なかなかお客様には伝わらない。そういうところは気を付けています。

大事なのは、お客様がどんなことに興味があるのか、どういうことをしたいのかということだと思います。それは日焼け止めだろうが、ヘアスプレーだろうが変わらないのではないかと思っています。

オウンドメディアを持つことによる広い意味での成果をどう捉えていますか。

子どもとお出かけすると服が汚れるし手も汚れる。「お出かけ」というお客様の“コト”をコンテンツに落とし込んだことで、日焼け止めに終わらず洗濯や手洗いなどについても、他の製品ブランドを通してサポートするというようなコミュニケーションができるようになったのではないかと思います。

“親子の体験”や“子どもの成長支援”といった方向性を決める上で、SCIユーザープロファイリング分析(図表1)をご活用いただいていますが、分析の内容や手法についてどうお感じでしょう。

多くの場合、自社製品のお客さん像を考えるときにはアスキングによる調査を行います。これはこれで非常に得られることが多く重要なのですが、限られた方々にしかご意見をお聞きすることができず、また、基本的には仮説を検証するためのものになります。

一方、SCIによる分析は多種多様な消費者情報を用いて様々な角度から分析できるので、読み解くことで仮説検証もできるし、ある意味新しい解釈ができることがあります。

図表1

効果測定はどのように。

WEBコンテンツに効果があったのかというのは非常に測りづらいところです。けれど、コンテンツの効果測定をインテージさんと一緒にやったことで、いろいろなことがわかりました。例えばWebサイトを訪れた人の購買ログ情報――購入意向や実購買、購入率など――によって、コンテンツを見た人が何を買ったのかという実際の効果を測ることができています(図表2)。他にも、サイト接触者へのアンケートでコンテンツがどう思われているのかもわかるので、そこから改善のヒントを探しています。

図表2

データの専門家視点でお客様を可視化し、チームのマーケティングPDCAをサポート

「ビオレUV」の一連の取り組みはインテージもサポートさせていただいていますが、どのような評価をお持ちでしょう。

そうですね。ひとつは効果測定がしやすいという評価でしょうか。購買動向に紐づけてターゲット設定をすることができるので、すごく役立っています。

また、データがあっても、我々だけでは理解できないところがたくさんあります。

インテージさんには、専門的なデータを理解できるように可視化するサポートをしていただいています。その結果、お客様の反応が少し見えるようになってきました。これは私どもにとって重要なことです。

今後、インテージに対してどのような期待をお持ちでしょうか。

市場をどう見るかが重要なのではないかと思います。私どもには「意外とこういうブランドが競合なのじゃないか」とか、「こういう方がお客さんなのじゃないか」というのをいち早く見つけて手を打っていくことが求められます。とはいえ、勘や思い込みだけで競合や(お客様の)属性を判断するのはよくないと思います。

仮説は必ずしもデータ起点でないと出せないというものではないですが、それをいかにデータに基づいて検証していくかは大事だと思っています。インテージさんには、今後もそういう部分をサポートいただきたいと思います。

花王株式会社 広末氏と、株式会社インテージ セールス・アナリスト/マネージャー 塩見健吾(写真左)

ありがとうございました。

2018年3月1日 インテージ本社内にて

  • *1 「お客様理解・コンテンツ開発・効果測定・課題抽出を繰り返すマーケティング事例 ~「ビオレUV」 における市場創造のチャレンジ」
  • *2 di-PiNK
    ドコモの位置情報やサービス利用情報、アンケート回答データ、インテージが保有する生活者購買データ、TV・新聞も含めたメディア接触データ、提携先から提供される3rd Partyデータ等、Webとリアルのデータを統合したDMPです。di-PiNKを活用すると、ユーザーニーズや顧客像を知る手がかりを得て、生活者のインサイト(新たな発見)を可視化することができます。また、これを基に生活者へのコミュニケーションを高度化することにより、既存ユーザーや見込み顧客に対してシームレスにコミュニケーションを図ることができるようになります。

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