株式会社パピレス
電子出版・デジタルコンテンツ配信業界
ヒット作分析から世界観へ──Renta!が掴んだ新レーベルの“設計図”
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| 取り組み内容:大ヒット作品の分析から、レーベル全体のペルソナ構築、世界観の言語化へと調査を段階的に拡大 成果:新レーベルのコンセプトが誕生し、ビジュアルや関係者向け資料まで作成可能に |
電子書籍の老舗パピレス株式会社が運営する「Renta!」で、新レーベル「spRash!」が誕生しました。出版社、作家との気持ちの良い連携で喜んでもらえる作品を届けられているのは、綿密な調査、ペルソナ構築から始まり、ビジュアルまで落とし込んだコミュニケーション施策にあります。調査やワークショップで生まれた「スキマを埋める」というキーワードがレーベルの核になるまでの過程を、プロジェクトを牽引する中西氏に伺いました。

※パピレス中西氏の代理として、レーベル公式キャラクターを掲載しています
日本初の電子書店、30年目の新レーベル立ち上げ
――まず、パピレス様とRenta!について教えてください。
中西氏:パピレスは1995年創業で、日本で最初の電子書店なんです。30年の歴史になります。当時はパソコンで本を配信するなんて考えられない時代でしたが、創業者の天谷が出版社や著者と直接交渉するなどして、スタートしました。
元々、紙の本だと在庫がなくなると第2版第3版ってあまり出せない時代で、売り切れが続出していました。電子書籍ならその心配がないというところで、出版社と読者双方にメリットがあったんです。
現状、私たちの部ではオリジナルコンテンツの強化に非常に気を配っています。Renta!、特にspRash!というレーベルでは、あくまでも漫画はエンタメ作品なので、売り上げを立てることも大事だけど、読むと元気になったり癒されるなど、ポジティブな感情がうまれることを意識して、作品作りをしています。

――今回の新レーベル「spRash!」はどういった経緯で?
中西氏:私が与えられたミッションは、新規のユーザーを呼び込むということでした。今までのRenta!内のオリジナル制作のやり方とはちょっと違って、出版社さんとの共同スタイルでやっていくんですけれども、ジャンルを絞らず、手軽に読める作品を作る。ただジャンルを絞らないレーベルというのはあまりないので、どうやって打ち出していくか。やっていく中の裏テーマとしてレーベルを一つのブランドとして売っていくことにチャレンジするというのも与えられた課題でした。
良い作品を届けるために、世界観を共有するコミュニケーションが必要
――そのようなレーベルを成功に導くためには何が必要だと考えましたか?
1つはレーベル全体としてどのようなコンセプトで、どんな人に向けて作っていくのかということです。ジャンルを絞らず多くの作品を同じレーベルで展開して愛してもらうためには、明確な読者像から導き出された魅力あるコンセプトが必要だなと思っていました。
そして、そのコンセプトを通じて出版社さんや読者の方々とコミュニケーションできることも大事でした。例えば、出版社さんに企画を持っていく時も「こういう作品です」だけではなく、「このレーベルはこういう世界観で、こういう人たちに向けて作っています」と説明できないと説得力がありません。
新しいレーベルでは、良いものを届けるために企画ベースから出版社や作家さんとやり取りさせていただいて一緒に作品を届けていきたいと思っているので、コミュニケーションが円滑になるような明確なコンセプトが必要でした。
――そのためのインテージの取り組みが、ランディングページ作成のためのオリエンシートやワークショップということでしょうか?
インテージ 吉田:はい、その通りです。まずはペルソナを明確にするためにアンケートとインタビューを行い、その後ワークショップを行ってビジュアル作成のためのオリエンシートを作っていきました
オリエンシートは、出版社さんや作家さんに説明しやすい資料作りに活かすこと、そして読者の方々向けのランディングページ作りに活かすことが目的でした。
アンケートやインタビュー設計も工夫して、漫画のことだけでなく、その人の生活、価値観、他に何が好きなのかなども聞き、立体的にユーザー像が浮かび上がるようにしました。
中西氏:アンケートやインタビューでは結構わがままを言ってしまったかもしれません。こんなアンケート項目を作りたい、なども意見を汲んでもらいながらプロの視点で設計していただきました。
吉田:意気込みや、こうしたいんだという想いが伝わってきたので、応えたいなと思いました!その後のワークショップは実は少しドキドキしていました。自信はありましたが、最終的にどんなものが生まれるのかはわからなかったので…

中西氏:本当にあのワークショップは良かったです。アンケートやインタビュー結果を見た時に、「確かにそうだな」と思いつつ、じゃあそれをどう作品作りに活かすのかというのはまだ見えていなかったんです。
ワークショップで、実際にこういう人だよねっていうのを、みんなで言葉にしていく作業をすることですごく具体的になりました。この人だったらこういう漫画が好きそうだよね、とかこのシーンがすごく刺さるんじゃないかというのがすごくイメージがついて、社内でも話が弾みました。
▼ワークショップでの様子

吉田:まさしくインタビュー結果をただ報告するだけじゃなくて、それをもとに一緒にペルソナを作り、オリエンシートにまとめ、レーベルのビジュアルなど「どう調査結果を使うか」まで一緒にやらせていただければと思っていました。
中西氏:最終的にオリエンシートとして形になり、作家さんや出版社さんに説明する資料まで完成し、新しいレーベルについて理解してもらいやすくなりました。
▼ワークショップを通じて作成したオリエンシート


みんなで掴んだ「スキマを埋める」。言語化がもたらした確信
――「スキマ」というキーワードが生まれたのもワークショップで?
中西氏:そうですね。2回目の「世界観のワークショップ」のときにみんなから出てきた言葉なんです。誰かが言った発言に、そうだね、じゃあこうかもってまた誰かが乗っかって、このターゲット像だったらこんなコーディネートが好きそうだよね、みたいな話にまで広がって。その中で”スキマ”というワードが出てきたんですが、このターゲットにはこんなスキマがあるけど、この人にはこのスキマがあるって、スキマの解釈も様々でてきて。最終的には心のスキマを埋めるとか、時間のスキマを埋めるといったコンセプトが良いのではという着地になりました。
人によってスキマは違うけど、でもそれを漫画で埋めてるっていうのが共通していたので。確かに、誰か1人が解釈したというわけではなく、みんなが重ねていく中で引き出されたのが面白かったですね。
インテージ 中村:ワークショップの良さは、いろんな人がいるから、1人でやると言語化が難しいところを、誰かの力を借りられる。イメージを共有するときに必要な言語を、一緒に作っていけるところにありますね。

中西氏:読者向けのキービジュアルもとてもいいものができました。最初はユーザーの方々が住んでいるシェアハウスみたいなレーベルをイメージしていたんですが、たぶん私たちのペルソナはシェアハウスに住まない(笑)。結果、アパートをイメージしたものになっています。
▼左:ワークショップからのラフ案 右:ランディングページの完成版

中西氏:今回の取り組みを通じて、私自身もどんどん熱量が上がっていって。ユーザーから生の声を聞けて、その先のビジョン、レーベルの先というのを思いめぐらせることができました。
説明する時も自信を持ってお話しできるというか、「こういうものを求めているんです」というのをはっきり伝えることができます。出版社さんからも資料を褒めていただけたり。ジャンルは絞らず短い話数から取り組めるというのが出版社としても作家さんも取り組みやすく、ただ何も土台がないわけではなくやりたいことは明確にあるので、作家さんとやり取りする時のコミュニケーションも円滑になったではないかと思います。読者さん、私たち、出版社さん、作家さんと一気通貫したコミュニケーション・作品作りができるようになっていたら嬉しいです。
– アウトプットとしては狙い通りでしたか?
中西氏:いえ、それ以上だったと思います。そもそも、ここまで一緒にやっていただけると考えていませんでした(笑)。
この調査自体は、弊社の大ヒット作品「聖女なのに国を追い出されたので、崩壊寸前の隣国へ来ました~力を解放したので国が平和になってきましたが元の国まで加護は届きませんよ~」のユーザー像から始めてもらったんです。

この作品はテンポの良い王道のシンデレラストーリーなのですが、奇をてらった作品ではありません。なんでここまで大ヒットになったのかは当時社内でもわかっていなくて。
この作品できてくれた新しいユーザーが、新しいレーベルの読者にもなってくれると思っていたので調査を依頼した形です。
ただ、正直どんなものが出てくるかは博打だと思っていました。読者像、ペルソナなんて全く出てこない可能性もありますし、形として整っても実際に使えるかどうかわからないなとも。なので、ここまで実務に使えて、作品作りにポジティブなアウトプットができたことにとても満足しています。
調査からビジュアルまで──一気通貫の成果が生まれた理由
――調査を広げて一貫したビジュアルまで作れたのはすごいですね。
中西氏:パピレスに入社したのは2024年夏頃なんですが、社員の人たちが皆マンガが大好きですごい詳しいんですよね。弊社のマンガ特集なんかも非常にクセのあるものが多くて。そういうマンガ好きな人に囲まれながらユーザー視点にたって作品づくりができたので、エンタメとしてサクッと受け入れられやすいコンセプトになったのかなと。例えば広告であたりやすいドロドロした復讐ものとか、そういった数字に束縛されすぎないで自分も読んでいて楽しいレーベルになったからこそ、熱意をもって一貫性のあるものになったのかなと思います。
吉田:今回のように段階的に調査を広げていき、伴走させてもらえたからこそ最後の新レーベルの誕生までコミットできたと思っています。最初は1作品の分析でも、そこから見えてきた課題に対して柔軟にご支援を拡張させてもらった。そういった取り組みが、深い成果につながったのではないでしょうか。
中西氏:本当にそう思います。調査は一回やって終わりじゃなくて、その結果を多角的に解釈してアクションに生かし、継続的にやっていくことで、レーベルと一緒に私たちも進化していけるんだなと実感しています。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがあります。ご了承ください。
この事例について、
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お客様
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ご担当者様
株式会社パピレス 新規プロジェクト部 中西優衣氏
メーカーでの営業職を経て、2024年にパピレスへ入社。
2025年より新規プロジェクト部にて、オリジナルコンテンツの推進や新レーベル立ち上げなどを担当。