日世株式会社
食品
生活者を中心とした商品アイデアの種の見つけ方
- マーケティングリデザイン

- マーケティングリデザイン
取り組み内容:マーケター、開発担当者に対して「生活者中心のマーケティング研修」を実施 成果:社内のマーケター、開発担当者にアイデアを出す「観察」の手法を浸透させる。研修の受講者が、生活者中心の商品開発ができるようになる。 |
70年以上前に日本ではじめてソフトクリームを発売して以来、長きにわたり、パイオニアとして日本唯一のソフトクリーム総合メーカーに発展してきた日世。
今回インテージでは、日世の執行役員 岡本氏のご相談を受け、日世のマーケターや開発担当者20名ほどに対して「生活者中心のマーケティング研修」を実施しました。
なぜそこまでかけて、「生活者中心」のマーケティングを推進するのか、今の課題感、そしてありたい姿など、その背景をお伺いしました。

―まずは、改めて岡本様の普段取り組まれている業務も含め、自己紹介をお願いできますでしょうか。

日世 岡本氏:日世という会社に入社して3年目になります。一番大きな私のミッションとしては国内外の新事業開発などがあります。インテージさんとは普段マーケティングでご一緒させていただいていますが、私自身の業務としては、マーケティング外もかなりいろいろやっています。簡単に言うと、理念再構築、経営会議の新設、ブランディング強化や国内外商標構築等いわゆるガバナンスの強化ですね。また、なによりも部下の人材育成にも力を入れています。やはり社員の成長が何よりも大切だというふうに思っています。そこで今回の研修のお話にもなりました。
―インテージの研修の内容はどういったものだったのでしょうか?

マーケティング企画推進部 マネージャー 中澤数人
インテージ 中澤:研修はプランニングから開発、上市後のマネジメントまで、ビジネスプロセス全体をカバーするものでしたが、特に、「成長機会探索研修」と「インサイト探索研修」について時間を割いていただき、それぞれ2日間程度、個人ワーク・グループワークを伴った実践形式で実施しました。

はじめに、「なぜ、新たな商品・サービスのアイデアが出せないのか?」という問いから入ります。一般的に、アイデアの創出プロセスは、生活者の新たな問題を発見し、解決アイデアを発想していき、そのアイデアに対して創作していく、という流れです。
それに対して、アイデアの創出を妨げている落とし穴があります。例えば、社会が成熟化し、ニーズが概ね満たされた結果、問題そのものが希少化しているということ。また、生活者自身が問題を認識出来ておらず、言葉で説明できない、つまり、潜在化していて聞いても出てこない、ということがあります。
さらに、「解決アイデアが発想できない」ということもあります。アイデアは「思いつくもの」だと考えられており、個人の直感やセンスによると思われています。実際には、丁寧にプロセスを分解すると、推論・洞察・着想という流れがあるのですが、そういう方法論があまり知られていないという実態があります。
―岡本さんの課題感というのはどういったところだったのでしょうか。
岡本氏:研修の受講者が、生活者中心の商品開発が出来るようになることが目的で、今回インテージさんにお願いさせていただきました。
私は、潜在ニーズの定義を2つ置いています。
①渇望しているができるわけない、と諦めてしまっているニーズ
②気づいていないニーズ
の2点です。
①は妄想、私はアート思考と呼んでいますが、考えぬくことで可能ではあるのですが、②の気づいていないニーズに関しては行動観察あるのみだと思っております。潜在ニーズを把握して、顧客のペインを定義化してそれを解決することで、イノベーションに近い新事業開発ができると考えています。今回は、その「行動観察」の深堀りをお願いしました。
―研修で深堀りした点はどのような点だったのでしょうか?
中澤:観察をして、事実に気づき、そこから問いと仮説が生まれます。その仮説の視点から、新たな「観察・問い・仮説」のサイクルを回していきます。それを何度か繰り返していくことで、より深く、精度が高い(確からしい)生活者理解となり、その結果として潜在ニーズ(インサイト・新たな問題)を洞察することが出来るのではないか、と考えています。

潜在ニーズ(≒新たな問題)が洞察できる
このプロセスをステップとして示すとこういうことになります。

まずステップ1は、生活者を観察して新たな事実に気づくこと。ここでは出来るだけ数多く、ありのままの事実を押さえることが重要です。次のステップ2では、事実を起点として問いと仮説を立て、再び観察すること。仮説を持って観察をすることで、精度の高い推論になります。その結果として、ステップ3では、生活者が言語化出来ていない潜在ニーズを洞察することが出来て、最後のステップ4では、捉えた潜在ニーズを満たすアイデアを着想するという流れになります。
―実際に研修を受けて、社内の反応はどのようなものだったのでしょうか。
岡本氏:メンバーには、STPからインサイト探索まで一気通貫で理解して欲しいという思いがありました。その上で、観察方法・コツがわかったことが今回の研修の大きな学びです。段階を踏んでいるので、分かりやすくメンバーが理解できたと思います。
メンバーにはカフェで行動観察を促したことがあるのですが、実際のシーンは情報量が多く、着眼点が難しいという問題がありました。研修で扱う「静止画の観察」の方が、いきなり行動観察をするよりも入りやすいのはよかったですね。見えたもの全部書き出すことで共通項が見えやすいのだと思います。
仮説は出せるが、それをどう集約するかが依然として難しいですね。顕在ニーズをイメージできることはできても、潜在ニーズを発掘して顧客のペインを定義化していく、ということはまだまだ訓練が必要そうです。しかし、逆に言うと未充足の強いニーズがあります。
行動観察ということは決して楽しいだけではなく、非常に集中力が必要となります。その集中力を保つためには、プロとしてのプライドを持ち、会社の利益=儲けにつながることをしているという自覚を持つことですね。一朝一夕では叶いませんが、非常に良いマインドや思考パターンを持つきっかけになりましたので、ここから更に伸びていくと思います。
―最後に今後のインテージに向けての期待をお聞かせください。
岡本氏:私は、社員に公平に機会を与えて、全体の底上げをしたいと思っています。また、リーダーを育成したいとも考えています。さまざまな角度から、インテージさんにはそのお手伝いを期待しています。
中澤:そうですね、今回は「観察の手法」を浸透させるべく研修を行いましたが、「マーケティングRe:デザインシリーズ」ではさまざまな角度から、生活者を主語にした施策があります。マーケティングプランの説得力を上げる、また自信をもって意思決定できる状態をつくることをサポートしますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。
インテージでは現在、生活者起点のマーケティングを実現するソリューションを「マーケティングRe:デザインシリーズ」として開発を進めています。

このマーケティングRe:デザインシリーズは、従来のリサーチデータ・インサイトのご提供に止まらず、マーケティング理論をベースとして、よりビジネスに直結させたアウトプットを行い、お客様の課題解決をご支援するソリューションです。 他にも様々なソリューションがございますので、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがあります。ご了承ください。
-
業界
食品
-
お客様
日世株式会社
-
ご担当者様
執行役員 岡本明氏
食品業界で国内外の新事業開発に長く携わり、定性調査でのべ1万人以上の生活者のワードに触れ、オブザーブを経験。海外では生活者の行動観察が行き過ぎて、私立探偵に間違えられることも。3年前に現企業に転職し、多くの役割期待の中、最大課題が国内外の新事業開発で社員が実践できるようにすること。日々悪戦苦闘中である。