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江崎グリコ株式会社

食品

進化を続けるブランドづくり~消耗戦から脱却するLTV志向マーケティング

進化を続けるブランドづくり~消耗戦から脱却するLTV志向マーケティング

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取り組み内容:飲料「アーモンド効果」のLTV向上のシナリオ作り
成果:シナリオの作成・戦略構築

現時点(2025年)で創業103年となる江崎グリコ。2022年に会社の存在意義(パーパス)を「すこやかな毎日、ゆたかな人生」と制定しました。あらためて「良質な素材に基づくおいしさの追求」と「科学的エビデンスを有する健康価値」を両輪として会社の価値を高めていこうとしています。「ゆたかな人生」としているのは、それがライフタイムバリュー、つまり長い目でみたときに生活者の人生のゆたかさにつながる健康の価値を継続的に提供していきたいという「時間軸」を意識した意味が込められています。

今回は飲料「アーモンド効果」をお客様に飲み続けていただくためのインテージとの取り組みについて、どのようにLTVを伸ばすシナリオを描いていったのかをお伺いしました。

左からグリコ 尾関氏、渡邉氏、山本氏、乙井氏

―まずは、改めて渡邉様の普段取り組まれている業務も含め、自己紹介をお願いできますでしょうか。

江崎グリコ株式会社 CR部 (Consumer Research) 執行役員 CR部長 渡邉 悦子氏

グリコ 渡邉氏: コンシューマーリサーチを担う我々CR部は、「調査」というのはあくまで手段と思っています。その手段である「調査」=「お客様の声」というのをどうやって会社の事業の機会や、ビジネスを伸ばしていくために反映させていくか、といったことを考える部署だと考えています。部のミッションとしても、【生活者のインサイトを導出する】ということが大きな役割ではあるのですが、そのインサイトを出すことで新しい事業機会を発見するということ、それが人々の生活をゆたかにするものを提供できるようにする、というところに重きを置いています。

インサイトを見つけ出したら
①事業を作る可能性があるか
②新しい機会を見つけられているか
③人々をゆたかにできていることの何かに関わることなのか
この3つのキーワードを常日頃問いながら、仕事に取り組んでいます。

―今回は、飲料「アーモンド効果」をLTVが高いブランドに成長させるため、インテージにご相談いただいたとのことでしたが、どういった経緯でご相談に至ったのでしょうか。

渡邉氏:昨年のインテージフォーラムがきっかけです。インテージフォーラムの振り返りでLTVの取り組みを紹介いただいて、その時にちょうどアーモンド効果で、どのように成長させていくか課題に上がっていたので、じゃあ一緒に考えてみませんかというところで提案いただいたのがきっかけです。

インテージ 伊田そうでしたね。インテージフォーラムがきっかけになって嬉しいです。「アーモンド効果のロイヤリティに繋がるドライバーを発見したい」というご相談をいただきましたが、御社ではロイヤリティをどのように定義されていて、どのような課題を抱えていたのか、改めて背景をお伺いしたいと思います。

株式会社インテージ マーケティングパートナー第1本部
マーケティング企画推進部 マネージャー 伊田 加奈子

渡邉氏:ロイヤリティには色々な定義がありますが、私は「生活者ひとりあたりのウォレットシェア及び胃袋シェア」で考えています。冒頭に申し上げたように、我々のパーパスは「すこやかな毎日、ゆたかな人生」です。だとすれば、生活者一人一人の毎日にどれだけ貢献できているか?を考える必要があります。そうであるならば、毎日・毎月・毎年生活者が支払う額の中で我々の製品がどれだけを占めているのか、そして、食べるものすべての中で我々の製品がどれだけを占めているのか、つまりアーモンド効果で言うと、飲料に占める金額シェア、及び杯数となります。

ビジネスではトップラインつまり売上とボトムラインである利益の両方を叶えていくことが必要です。
まず商品を買っていただける「生活者」の数を増やすこと。これは当たり前に重要です。一方、その生活者の方が「年間1個だけ買う」としたらならば、トライアルとしての「生活者の数」は増えますが、パーパスから考えると、あまり好ましい状態とは言えません。なぜならば小さなウォレットシェア、胃袋シェアでは、その人の「すこやかな毎日」はもちろんのこと長い目で見た「人生」に影響など到底及ぼせないからです。また、数字から考えても、ヘビーユーザーが売り上げの多くを支えているとすれば、ヘビーユーザーになってくださった方の獲得コストは長い目でみると低く、結果収益も向上します。

よって、ロイヤル化につながる優良なトライアルをどれだけ獲得することができ、継続的なリピートへとつなげていくことができるかを掘り下げることが必要でした。

伊田:アーモンド効果の成長に向けた取組課題を整理すると、「優良なトライアルを獲得するカテゴリーエントリーのシナリオ」「リピートによるロイヤル化のシナリオ」の2点になるでしょうか。

ブランドの成長に向けた取り組み課題

渡邉氏:そうですね。ブランドの成長はトライアルとリピートのかけあわせしかなく、どちらが大事ということはなく、いずれも必要になります。リピートは勝手についてくるものではなく、どうやってリピートしていただくかを考えないと、不完全になってしまいます。

伊田:おっしゃる通りですね。そこで、シナリオ作りに向けて、「なぜ生活者はアーモンドミルクを手にするのか?」「なぜ生活者はアーモンド効果を飲み続けるのか?」という問いを設定して観察-洞察-創発というフローでのアプローチをご提案しました。

渡邉氏:問いが「なぜ」であったため、定量的な分析よりは「定性的に生活者をみる」ということに今回は着眼をしました。 

伊田:はい、そこで、ブランド体験の観察は、コグニティブ・インタビューという手法を用いて実施しました。コグニティブ・インタビューとは、見たこと、聞いたこと、その時の状況、生活者が記憶していることすべて話していただいて、「点」による理解ではなく「文脈」として、理解することができ、結果としてブランド体験につながる手法です。

―どうしてこの手法を採用されたのかお話いただけますか。

観察に用いたインタビュー方法
観察に用いたインタビュー方法

渡邉氏:ロイヤルティ形成の過程にあった、生活者自身も忘れている、気づいていない出来事と、単なる嬉しい・ワクワク…ではないバラエティのあるエモーションを引き出すことができるのがコグニティブ・インタビューの特徴で、前回も別の商品で実施した際、生活者のインサイトを知ることができる手法として手ごたえがあったので、今回もお願いしました。

伊田:マーケター・リサーチ・宣伝・デザイン、アーモンド効果に関わる総勢20名の方にお集まりいただき、観察による気づきからインサイトを探索し、コミュニケーションアイデアを創発するワークショップを行いました。

ワークショップの流れ
ワークショップの流れ

伊田:ワークショップ中の対話を絵や図を用いてリアルタイムで可視化する、グラフィックファシリテーションというものを用いて参加者の気づきを促進しました。絵を用いることで、生活者の行動だけではなく、「感情」を主語にした対話が成り立つというところがポイントだと思っています。

渡邉氏:そうですね。打ち手に繋げるうえでは、生活者のエモーションとブランドのファンクションとのリンケージがなくてはならないと思っています。このワークショップは、それを見出すサポートになりました。
今回の取り組みで分かったことは、優良なエントリー獲得とロイヤル化では別のアプローチが有用であるということです。ブランドでは今までも複数のアプローチでベネフィットを伝えていましたが、今回改めてそれぞれのアプローチが生活者のどのジャーニーに深く寄与をしているのかということを理解することができました。

伊田:カテゴリーのエントリー、ブランドのロイヤル化のシナリオ作りに対して、観察~洞察~創発というサイクルのアプローチから得られたラーニングについて振り返ってきました。渡邉様、ブランドが進化を続けていくためのポイントをまとめるとするといかがでしょうか。

渡邉氏:事業としてLTVにつながるような優良な顧客を獲得するために、生活者の「強い動機」と「ブランドの強み」が重なり合う接点を見つけることです。その際には、トライアルとリピートでは違う動機に働きかけないといけない可能性があるため、かならず生活者を「ジャーニー」で捉えていくことが重要です。また、課題発見とその解決方法を見出すには、データ分析と深い洞察(n1の声)の両軸が必要となります。
そして、誰の何のために事業をしているのか。パーパス・ビジョンに基づいて行動することで、ぶれない強いブランド作りができると考えています。

伊田:そうですね。「LTVが高いブランドを目指す=その人のそのものに寄り添い、一緒に経験値をあげていくもの」と仰られていたことが印象的でした。
生活者がゆたかになることとブランドの成長は密接に関わるもの。一方で、生活者もブランドも様々な影響を受けて変化していくもので、いつの間にかズレが発生してしまうものもあります。ズレを検知し、新たな接合点をつくっていくことに、観察~洞察~創発~実験~検証のサイクルを回しながら、今後も貢献していきたいと思います。

―最後に、今後のインテージに対する期待もお伺いしてよろしいでしょうか。

渡邉氏:手法のバラエティはいずれ限界が来てしまうと思うのですが、さまざまな業界をご担当されているインテージさんだからこそ、切り口や考え方、見え方の違いから気づきをいただける機会は今後も多いと思っています。例えば、それは違う業界でよく使っているけれども、あえて我々の業界で使ってみるなど、使い方次第、考え方次第、分析の仕方次第ということがあると思うので、そういったことを、今後もご一緒できればと思っています。

伊田:ありがとうございます。みなさまが常に新しい発見を求められる立場にあるからこそ、新しい気づきや刺激を与えられるようなパートナーであり続けるよう努めてまいります。

渡邉氏:そうですね。パートナーという存在は重要で、そのような方々とは常に対等でありたいですし、こちらにも意見を言ってもらいたい、自分ごと化した上で提言をいただきたいと思っています。どれだけパートナーとして提案をしていただくかというところに、非常に期待しております。

―本日はありがとうございました。


インテージの顧客体験マネジメント支援プログラムは、生活者データをもとに顧客との関係性を構築・強化し、顧客とともに成長し続けるブランドづくりに貢献します。

生活者起点のマーケティングを実現するソリューション
生活者起点のマーケティングを実現するソリューション

・コモディティ化が進むなかで「ブランドならではの価値」を見出したい ・生活者に価値を体感してもらうために何ができるかわからない ・短期の売上だけでなく、中長期のブランド成長に貢献する活動ができているか自信がない など様々なケースで、ぜひご相談ください。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがあります。ご了承ください。

  1. 業界

    食品

  2. お客様

    江崎グリコ株式会社

  3. ご担当者様

    CR部(Consumer Research) 執行役員 CR部長 渡邉 悦子氏
    大学卒業後、都銀、外資系消費財メーカーを経て、2013年に江崎グリコ株式会社に入社。以降CR(Consumer Research)部にて、国内及び海外事業における戦略、ブランド育成、新規事業立ち上げを消費者の起点から立案・推進することに取り組む。

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