京浜急行電鉄株式会社
鉄道
CX戦略によって加速する、京急グループが掲げる「顧客視点の徹底」

取り組み内容:「顧客視点の徹底」を実践するためのCX戦略の立案・実行 成果:「顧客視点の徹底」のイメージの具体化およびグループへの共有 |
首都圏を中心に交通や不動産、レジャーなど、幅広い事業を展開する京急グループ。近年は経営計画として「沿線価値共創戦略」を掲げ、それを推進するために必要となる顧客理解を深めるために「顧客視点の徹底」にも取り組んでいます。
インテージは、京急電鉄 新しい価値共創室の吉田氏から依頼を受け、「顧客視点の徹底」を実践するために必要なCX(顧客体験)戦略を共に立案・実行してきました。今回はプロジェクトの現状と将来の展望について話を伺いました。

―まずは吉田様の自己紹介と合わせて、「新しい価値共創室」の役割について教えてください。
京急 吉田氏:「新しい価値共創室」は2024年に誕生したばかりの部署で、その名の通りお客様にとっての「新しい価値」を創出することがミッションです。京急グループには鉄道や不動産など多様なサービスがありますが、これまでは部署を跨いで連携する機会が少なく、結果として各事業が縦割りの組織で動いている状態になっていました。こうした課題に対して、我々が分断したサービスや部署をつなぐことで、顧客目線に立った新しい価値を提供していきたいと考えています。

―現在はインテージと共にCXの推進に取り組んでいますが、インテージをパートナーとして選んだ理由はなんですか?
吉田氏:実はインテージとの付き合いは長く、今回の相談をする以前から何年にもわたって鉄道サービスにおける顧客満足度調査を依頼しておりました。きっかけとしては、同業他社に勤める知り合いからのご紹介でしたね。自社の鉄道サービスのお客様からの評価を知ることで、我々の強みや弱みを把握したいという考えから調査をお願いしました。
インテージ 矢口:その調査を担当していたのが私の前任者で、私自身は2021年から吉田様とご一緒させていただいております。ちょうどその頃から「鉄道中心の顧客満足度調査からの方向転換を図りたい」という明確な意思をお持ちだったと記憶しています。

吉田氏:その通りです。もともと鉄道サービスの顧客満足度調査を始めたのは、従業員のモチベーションアップにつなげたいという考えからでした。実際、お客様からのポジティブな評価を可視化したことで、従業員のモチベーションが高まりましたし、お客様に対する意識にも変化が生まれたと感じています。また、こうした調査実績を経営層や他部署に共有した結果、いろんな部署から「このテーマについて聞けないか」と問い合わせが来るようになり、グループ全体で顧客満足度に対する関心が少しずつ芽生えていったように思います。
しかし、毎年調査を重ねても顧客からの評価に大きな変化は現れず、経営層や他部署も、満足度よりも顧客ニーズやライフスタイルに迫ったデータに関心を示すようになっていきました。また、新型コロナウイルスによって鉄道業界全体が大きな打撃を受けたことも重なり、鉄道中心の調査だけでは、次のアクションに繋がらないと感じるようになっていきました。
インテージ 野島:吉田様からご相談をいただいたとき、インテージも集中してCXに取り組もうとしていた時期でした。そのため実績が浅く、未知数な部分もあったかと思いますが、「お客様ファースト」の姿勢を大切に、どのような体制・方針で進めていくべきかを考えながら議論を重ねていきました。

吉田氏:インテージとは関係性ができあがっていましたし、我々の強みも弱みも理解してくれているという信頼感もあり、安心して依頼をすることができました。また、我々の要望やレベル感に合わせて、目指す先のステップまで丁寧にご提案いただける期待感もありましたね。「よくわからないことはまず質問してみよう」と思える話しやすさもあるので、困ったときに頼りになる存在です。
―今回、インテージと共にCXの推進方針をつくっていきましたが、まずどういったことから取り組みたかったのでしょうか?
吉田氏:京急グループでは現在「沿線価値共創戦略」を掲げ、お客様の人生に寄り添う新しい価値を創出するための取り組みを進めています。そこで大切になってくるのが「顧客視点の徹底」なのですが、まずはそのことをグループ全体に浸透させたいと思っていました。そこでインテージと一緒につくったのがこちらの図になります。

京急のお客様は、電車で通勤するだけではなく、京急ストアで買い物をしたり、沿線で会食やイベントに参加したり、もしかしたらマンションも購入されたりしているかもしれません。しかしこれまでは、こうした顧客データを部署ごとに管理していたため、サービスを横断して顧客像を描くことができていませんでした。そのため京急グループは現在DXにも注力し、分断されていた顧客データの一元化を図っています。これによってグループやサービスを横断して具体的な顧客イメージを描くことが可能になりますし、DX化によってCXのこともより深く考えられるようになります。DXとCXは、まさに表裏一体の関係だと考えています。
インテージ 森川:「沿線価値共創戦略」と「顧客視点の徹底」、そしてDXとCXが密接な関係であり、それらに取り組むことの重要性を明示したかったわけですね。現時点での成果や手応えについてはどのように考えていますか?

吉田氏:まさに今、サービスを横断して顧客を捉えることの重要性をグループ全体に浸透させようとしているところです。そのため成果が見えるのはしばらく先のことだと思います。しかし、企業や事業を成長させるためにはきちんと顧客ニーズを捉え、京急のリピーターになっていただくことが重要だと考えているので、早急に取り掛かっていきたいです。そこで鍵となるのが、KPIを構造化することで業績につなげることであり、そのドライバーとなるのがインテージのCXファクターの考え方だと思っています。
森川:では、そのCXファクターについてお伺いします。インテージでは顧客が商品やサービスの利用を通じて体感・実感する価値のことをCXファクターと呼んでおり、今回のプロジェクトでも検討を重ねてきましたが、改めてCXファクターの重要性についてどのように感じましたか。

吉田氏:一言にお客様が京急のサービスを利用してくれていると言っても、これまではどのタイミングで電車に乗ったりスーパーでお買い物をしてくださったのか、どんな気持ちでサービスを利用しているのかなど、具体的に捉えていませんでした。お客様の中には、不便に思いながらも仕方なく利用されている方もいるかもしれません。だからこそ、お客様がどういったタイミング・ポイントで京急の印象を決めているのかを、一連の流れの中で把握することが重要だと感じました。会社の人間としてではなく、お客様の視点で物事を捉え、当社の戦略とも照らし合わせながら、CXファクターを磨き込んでいきたいですね。
森川:CXを推進していくうえで、従来とは異なる調査の実施やKPIの設定が必要になってきますが、今後どのような取り組みをしいきたいと考えていますか?
吉田氏:過去に実施してきた顧客満足度調査では、お客様を点でしか捉えることができませんでしたが、やはりこれからは、お客様は複数のサービスを利用しているという前提に立って調査をしていくべきだと感じています。そのうえで、お客様の暮らしの中にある京急グループとのタッチポイントを見せていくことで、多様なサービスが存在していることを各事業の担当者にも意識してもらえるようになると思いますし、その積み重ねで生まれるサービスがお客様のライフスタイルをより豊かにしていくと信じています。
矢口:まさに顧客満足度調査は点の調査になりがちです。明確な課題意識を持って、それに対する仮説を立てたうえで実施しないと、ありきたりな答えしか抽出できないことがあります。我々もただ調査をお手伝いするだけではなく、何か良い回答を導きだすことのできる機会を創出したいと思っています。
森川:そうですね。もう一つあるとすれば調査で明らかにしたCXに関するKPIが業績にどのようにつながっていくのかを可視化するのも重要ですよね。このあたりの課題感について教えてください。

吉田氏:新型コロナウイルスの感染が収まり、鉄道利用のお客様自体は戻ってきていますが、今後人口減少が加速していくことを考えると、現状のままではいけないとの危機感があります。そのため、お客様視点でどうすれば支持されるのか、京急を利用してもらえるのかまでしっかり組み立てたうえで、利益へとつながる新しい価値を生み出していかなければいけないと思っています。役員からも「どのポイントを強化していけば業績が上がるのか、そのヒントを得て欲しい」と期待されていますので、このプロジェクトがグループ全体の利益に寄与できるよう、引き続き取り組んでいきたいところです。
現場も経営層も、「顧客視点の徹底」を追求しながら、京急グループの強みを活かした顧客体験をつくり、お客様に新しい価値を届けていきたいですね。
<インテージのCXマネジメント>
CXは、企業の成長を左右する重要な要素であり、その向上には現状把握から改善策実行までの包括的な取り組みが不可欠です。インテージは、リサーチ会社としての強みを活かし、CXの現状把握、理想のCX設計、改善策実行・効果検証といった各フェーズに合わせた幅広いサービスを提供し、顧客企業のCX向上を支援します。具体的には、業界指標に基づいた現状分析や競合比較を行う「CXヘルスチェック」、企業の想いと顧客期待を融合させた理想のCXを設計する「CXデザインサービス」、データに基づいた改善策実行と効果検証を行う「継続的なモニタリングと改善アクション」などのサービスを提供しています。インテージのCXマネジメントは、豊富な実績とノウハウ、多様な専門家チーム、そしてリサーチ会社としての強みを活かし、顧客体験を向上させ、企業の成長に貢献します。
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お客様
京浜急行電鉄株式会社
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ご担当者様
新しい価値共創室 顧客サービス担当 吉田 菜つみ氏