ヤマハ発動機株式会社
輸送用機器製造業
ヤマハ発動機が挑む、“愛着”の可視化と新たな価値創造
- マーケティングリサーチ

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取り組み内容:生活者「愛着」をテーマに、デ・サインリサーチを実施 成果:愛着に関する生活者の価値観や行動の傾向を可視化 |
ヤマハ発動機株式会社は、二輪車の製造を起点とする日本の大手輸送機器メーカーであり、モビリティ、マリン、ロボティクスなどの分野で多角的な事業を展開しています。1955年に楽器メーカーである日本楽器製造株式会社(現・ヤマハ株式会社)から分離・独立する形で設立されて以来、世界各地でオートバイをはじめとする製品を展開し、グローバルな成長を遂げてきました。現在では、船外機や水上オートバイなどのマリン製品、産業用ロボットや電動アシスト自転車PASなど、多様な領域において技術開発と事業拡大を進めています。
今回は、インテージと取り組んでいる「デ・サインワークショップ」の取り組みを中心にお話をお伺いしました。

デ・サインリサーチとは
デ・サインリサーチは、生活者の声を通して新たな価値やインサイトを探索・発見するために開発された、リサーチとワークショップによる共創・コラボレーション型のプログラムです。『「当たり前」を問い直す』をコンセプトに、「問いを立て直す」「生活者の声を集める」「関係者全員で取り組む」ことで、既存のビジネスプロセスを新たな視点・視座で捉え直します。組織パーパスの再解釈や浸透化、新規事業領域・機会領域の探索ブランドやプロダクトのアイデア、コンセプト開発、コミュニケーションなど、幅広い領域の課題に対応します。
――まずは自己紹介をお願いします。
ヤマハ発動機株式会社 長澤氏:所属はクリエイティブ本部のイノベーションデザイングループで、デザイナーが多く在籍している組織です。元々デザイナーとして量産開発のデザインを担当しておりましたが、今はデザインの部署にいながら、研究開発として人間研究を進めるヒューマンサイエンスラボグループと協業し、研究に携わっているかたちになります。プロジェクトとしては愛着研究を担当しております。

――インテージとデ・ザインリサーチを実施するようになった経緯はどのようなものなのでしょうか。
長澤氏: チーム内で「愛着」をテーマに研究を進めていくことが決まり、社内でワークショップなどを実施していました。ただ、それらはあくまで私たち自身によるもので、素人としての主観的な意見を持ち寄るかたちになっていました。また、社内の人間だけでは属性が偏ってしまい、多様な視点を得ることが難しいという課題もありました。そこで、より幅広い方々の考えを知る必要があると判断し、社内の紹介を通じてインテージさんとご一緒させていただくことになりました。
インテージ田中:最初にお伺いした時点で、すでに御社内では仮説がかなり明確になっており、視点も整理されていました。私たちは、それらをさらに広げ、俯瞰的に捉えていくためのお手伝いとして、お声がけいただいたという流れです。

――具体的には、どのような期待をもって外部の視点を取り入れようと考えられたのでしょうか。
長澤氏:主観的な見方から一歩離れたいという思いがあり、そのためには客観的なデータを取る必要があると考えました。私たちは、主観が集まった先に客観性が生まれると捉えていたので、多くの声を集めるという点では、やはり外部の力を借りるのが適切だと判断しました。
――具体的には、どのような気づきや発見があったのでしょうか。
田中:今回のプロジェクトとしてご一緒させていただいた中では、定量調査から得られたデータをマップ上にプロットし、傾向を読み解くためのワークショップも実施しました。そのプロセスを通じて、御社の中で得られた気づきや発見についてお伺いしたいです。
長澤氏:面白いと思ったのはマップの解釈が人によって全然違うという点です。また意外なワードがよく出てきたので、それは内部だけでワークショップをしていたら出てこなかったものなので、興味深かったです。
田中:実際にワークショップを実施した内容については、その後はどのように活用されているのでしょうか。
末神氏:ワークショップを通して意外な気付きも得られましたし、意外ではないですが弊社の仮説が確証に変わったこともあります。そういった知見は事業部に紹介するなど活用していますが、私たちのチームは事業ではなく研究がミッションですので、ワークショップの中ではスポットが当たらなかったけれど実は重要そうな部分をあえて研究対象にしようとしています。ワークショップでは、事業やビジネスに近い視点のアイデアが多く出ていたので、事業部が活用できる多くの示唆が得られたと思います。ただ、それらは事業部が得意な領域です。我々研究チームとしては、あの場では表面化しなかったものや、エッセンスとしては見えていたけれども、さらに掘り下げる必要がある領域に注目しています。そういった意味でもワークショップは意義深いものでした。

ヒューマンサイエンスラボグループ 末神 翔氏
――なかなか期間を定めづらいミッションかと思いますが、あらかじめマイルストーンを設定し、「いつまでにこういった成果を出す」といった目標を定めていらっしゃるのでしょうか。
長澤氏: まずは基礎研究を一区切りつけたいという気持ちはあります。製品・サービスに落とし込むのはその先だと思っています。
田中:そうなんですね。あのワークショップの後、大学の先生ともご一緒にプロジェクトを進めていらっしゃると伺いました。
末神氏:そうですね。現在は国内の大学と共同研究契約を結び、愛着が生まれる心理的メカニズムの解明に取り組んでいます。事業に直結させるというよりは、あくまで研究として基礎的な理解を優先し、学会での発表や論文執筆といったアウトプットを目指しています。
――今後の取り組みに向け、インテージへの期待をお聞かせください
長澤氏:ワークショップで非常に印象的だったのは、ファシリテーションを担当された方々のホスピタリティです。社内でワークショップを実施する際は、ファシリテーターや運営を担うのが2~3人に限られ、運営がどうしても手薄になってしまうこともありました。しかし、今回は役割分担がしっかりされていて、全体を計画的に進行することができ、大変助かりました。

末神氏:たしかに、ワークショップの運営の完成度は非常に高く、社内で実施するものとは比べものにならないほどで、私にとっても強く印象に残っています。もう一つ印象的だったのは、事前に質問内容をご確認いただいた際に、質問の順番まで丁寧に検討されていたことです。社内で実施していた際には、そういった点にまで意識が及んでいなかったので、表面的な部分だけでなく、見えにくいところまでしっかりと準備されていたのだと感じました。今後も、そうした調査のプロフェッショナルならではの視点で、引き続きご支援いただければと思っています。
田中:ありがとうございます。今回ワークショップがうまく進行できたのは、御社の皆さまが非常に議論に慣れていらっしゃり、職位や立場を越えて活発に意見を交わす土壌がしっかりと築かれていたことが大きかったと感じています。これからも貴社の知見と私たちの視点を掛け合わせながら、価値ある成果につなげていければと考えております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがあります。ご了承ください。
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業界
輸送用機器製造業
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お客様
ヤマハ発動機株式会社
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ご担当者様
ヤマハ発動機株式会社 クリエイティブ本部 プランニングデザイン部 長澤 美緒 氏
2013年ヤマハ発動機入社。入社以降は二輪のCMFG(カラーリング)デザインとメーターのUIデザインを中心に担当。現在はデザイナーとしての経験や視点を活かし、人間研究チームの一員として日々研究業務に携わっている。
ヤマハ発動機株式会社 技術・研究本部 技術戦略部 末神 翔 氏
国内外の大学での研究職を経て2014年ヤマハ発動機に入社。現在はヒューマンサイエンスラボグループのグループリーダーとして国内外の大学等とともに人間系の基礎研究を企画・推進している。博士(心理学)。