インドネシア進出!ビジネス成功のポイント、特徴と国民性を知る

親日国と言われるインドネシア。インドネシアに進出する日本企業や、インドネシア人相手にビジネスをする人には、知っておくべき「日本との違い」があります。

インドネシアの人々はどのような特徴や国民性を持っているのでしょうか。2018年4月まで4年間の現地駐在経験を持つインテージ社員が監修した、インドネシアでビジネスを成功させるためのポイント、ぜひご一読ください。

【目次】

インドネシアってどんな国?

indonesia_01.png
※JETRO『ジャカルタスタイル』2018年3月をもとに作成

インドネシア共和国は赤道直下の1万3,000もの島々からなる国で、国土の総面積は約192万平方キロメートルと、日本の5倍ほどの広さがあります。人口は日本の約2倍にあたる2億5,500万人にのぼり、世界第4位の人口を有しています。首都ジャカルタの人口は全体の4%に当たる約1,018万人で、ジャカルタの位置するジャワ島に人口の約6割が集中しています。

民族は大半がジャワ人、スンダ人、マドゥラ人、バタック人などのマレー系で、その他中国系など約300民族で構成される多民族国家です。また信仰の面では、国民の約9割がイスラム教徒ですが、キリスト教や仏教、ヒンズー教なども国家公認宗教に指定されています。公用語はインドネシア語です。

2000年以降において、インドネシアは主要な新興国のなかで唯一、経済成長率がマイナスになったことがない国で、政情も比較的安定していると言えます。平均年齢29歳と若い人が多く、人口増加傾向が今後も続くため有望な市場です。

インドネシア市場に参入する前に知っておくべき生活者の実態

indonesia_02.jpg

インドネシア市場でビジネスを成功させるためには、マーケティングの対象となる「生活者としてのインドネシア人」について理解することが必要です。生活者への理解が不十分な場合、的確なビジネスプランが作成できず、スムーズな事業の展開が難しくなります。

豊かさの印象

インドネシアは新興国に属し、中間所得層や富裕層は増加傾向にあります。牧歌的なアジアの様子をイメージしながら首都ジャカルタを訪れると、都市化の波に驚くことになるかもしれません。一方で、ジャカルタのような都市部と地方での経済格差は大きく、また富裕層、中間所得層、低所得層の生活レベルの差がはっきりしているという特徴もあります。

続いて、ジャカルタの生活の様子をイメージするために、インテージが2016年に行った自主企画調査の結果から、いくつかの耐久消費財の保有率を見てみます。

まず家電に注目すると、「カラーテレビ」は74.3%と多くの人が保有していますが、「掃除機」の保有率は7.5%と少なめです。また、下表にはありませんが「電子レンジ」の保有率も3.3%(2014年時点、経済産業省)と低く、その背景には価格の高さ以外にも、電圧が不安定であるといった現地ならではの事情もあるようです。

次に移動手段を見てみると、自動車の保有率が32.7%に対し、バイクの保有率は99.4%とほぼすべての人が保有しており、バイクが現地の人々の移動手段として欠かせないものであることがわかります。

またデジタルデバイスでは、スマートフォンの保有率は87.5%と高く、Gojek(バイクタクシー予約システム)のようなスマホを使ったライドシェアサービスが日本より進んでいたり、SNSが活発に利用されていたりと、ITリテラシーは高めです。このように、インドネシアは最先端な面と発展途上の面が混在しています。そのため進出の際には商材ごとに市場調査による事前の市場把握が必須となります。

インドネシア(ジャカルタ)における耐久消費財保有率
indonesia_004.png
※インテージ自主企画調査(2016)より n=300

インドネシア人の性格的な特徴

インドネシア人は基本的におおらかで楽天的、明るくフレンドリーな性格で、家族や友人を大事にする人が多いようです。特に、家族や親戚が集まって行うイベントを非常に重要視します。また、家族や友人にだけでなく老人や子供に対しても優しく接する人が多いのも特徴です。

シャイな性格の人が多いとされる男性は、女性に対しても非常に紳士的で優しく接しますが、結婚をすると亭主関白になる人が多く、妻に家事も育児もやってもらおうとする傾向が強いようです。女性は色白であることが美人の条件と考えられており、化粧は丁寧にする傾向がみられます。ファッション意識は高く、ヒジャブ(頭や身体を覆う布)を活かしたファッションを楽しむ若い女性も増えています。

結婚を前提として交際をするため、恋愛に対してはとても慎重であることも特徴と言えます。なお、イスラム教では一夫多妻制が認められてはいますが、実際には近年減少傾向にあります。

日本人との大きな違い・注意すべき点

インドネシア人をビジネスの対象とした場合、日本人を対象とした場合とはどのような違いがあり、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。

ここでは、インドネシア国民の大多数を占めるイスラム教に起因する注意点として、「手」に関するものをいくつかご紹介します。

  • 左手を使わない
  • 頭を触らない
  • 腰に手を当てない

イスラム教で左手は「不浄の手」とされています。そのため、握手するときや物の受け渡し、お金の支払い、食事などは右手を使わなければなりません。左手を使った場合は非常に失礼であるとみなされてしまいます。またイスラム教で頭は「神聖な場所」とされているため、子どもの頭をなでるといった他人の頭に触れる行動もタブーとされています。そのほか、日本では疲れた時や腰が痛いときなどに腰に手を当てながら話すことがありますが、インドネシアでは「怒っている」「威張っている」という印象を与えてしまいます。このように日本では一般的で何の問題もないような行動でも、インドネシアでは相手を不快に感じさせてしまうことがあるので注意しましょう。

インドネシア人とビジネスするために知っておくべき8つのポイント・注意点

インドネシア人をビジネスパートナーとする場合、仕事に対する姿勢や生活スタイルを理解したうえで、さらに「商習慣」について慣れておいたほうがいいでしょう。「日本のようにはいかない」ことも覚悟し、現地の人たちのペースをつかんで効率的に仕事を進めていくことをおすすめします。

1)性格と仕事観

indonesia_005.jpg

インドネシアでは親が子供を叱る習慣があまりなく、インドネシア人は人前で叱られることに慣れていません。また、人前で感情をあらわにして怒るという行為自体が、恥ずかしいことと考えられています。そのため、仕事を教えるときはできることから少しずつ、細かいゴールを設定して「積み上げていく方式」 をとるようにするとよいでしょう。注意をするときも人前では行わず、1対1の状況で行うように配慮することで、相手のインドネシア人との関係が悪化しないようにすることができます。

時間に対する考え方も日本と大きく異なります。

Jam karet「ゴムの時間=時間は伸びるもの」という概念があり、例えば日本の会社で普通に行われている「5分前行動」も、インドネシアでは期待できません。そのためスケジューリングには余裕を持つことが大切です。

また多くのインドネシア人がイスラム教徒であることにも注意が必要です。イスラム教では1日5回のお祈りが義務付けられており、何よりも優先されるので、仕事中であってもお祈りができるように配慮しましょう。宗教行事の1つであるラマダン(日の出から日没までの間断食すること)の期間は、空腹のため集中力が低下し、作業効率が上がらないこともあるようです。

このように宗教活動による仕事への影響は否定できませんが、宗教観の違いをきちんと理解し尊重することがインドネシア人と円滑に仕事を進めていくために重要です。

ほかにもインドネシア人は奥ゆかしい面があり、人前で思っていることをはっきりと口にしない、また物事を明確に「できない」と断ることは恥かしいことという考えがあるため、「できる」と言っていた仕事が、実際には納期に遅れてしまう、こちらが期待していたレベルに到達しない、ということもあるようです。そのため、細かな進捗確認が必要でしょう。

ただインドネシアのエリート層にはITやネットを自在に操る優秀な人材も数多く存在します。そのような人たちはビジネスに長けていて、日本企業にシビアな要求をすることもあるでしょう。

2)ビジネスマナーと服装

インドネシアのビジネスシーンでのドレスコードは、1年中を通して暑い日が続くこともあり、ビジネスカジュアルが基本となります。インドネシアの中でも、日系企業を訪問する際や比較的フォーマルな商談の場を除いて、スーツやネクタイの着用が求められるような機会はあまりありません。

またインドネシアでは、バティックと呼ばれるロウケツ染め布地の衣服が正装とされています。日本人もバティック柄のシャツを着用したほうが、現地の人たちからは好印象を持たれるでしょう。

ビジネスパートナーを「探す」段階ではフォーマルな服を着用し、「打ち解けてきた」段階になったら少しずつカジュアルな服装に落としていくのはいかがでしょうか。

3)通関手続きの注意

通関手続きは改善されたとはいえ「時間がかかるもの」と覚悟しておく必要があります。ジェトロが行った2016年の調査でも、インドネシアの「通関が煩雑」と感じている日本企業は約半数の48.8%にのぼります。同じくアジアのシンガポールやマレーシアでビジネスをしたことがある日本人なら余計に「インドネシアの通関は遅い」と感じるでしょう。

インドネシアの通関では、それぞれの貨物ごとに「物品」と「輸入者」の2つの観点から、検査なしで通関手続きが行われる「グリーンライン」、書類手続きが必要な「イエローライン」、開梱検査が必要で最も時間のかかる「レッドライン」の3つの区分にルートが分けられます。輸入社が「初めて」の場合には原則「レッドライン」での通関となり、インドネシアに輸出するビジネスを検討している企業は、空港や港湾で自社製品が「留め置かれる」ことを計算に入れたスケジューリングが必要になります。

4)交通渋滞に注意

indonesia_04.jpg

首都ジャカルタの交通渋滞は世界最悪レベルといわれることがあります。

ジャカルタの面積は661平方キロメートル、人口は約1,018万人であり、東京23区(面積619平方キロメートル、人口約950万人)よりやや規模が大きいといったところです。ところが自動車の保有台数は、東京23区の約200万台に対し、ジャカルタは倍以上の440万台にのぼります。道路インフラが東京より整備されていないうえに、ジャカルタだけでなく周辺から流入する自動車の数も多く道路上にあふれかえっているので、慢性的な渋滞に見舞われています。さらに多くのバイクも走行しているので、接触事故にも注意しなければなりません。ジャカルタでは、「東京のひどい渋滞が常に起きている」と考えながら行動計画を組み立てましょう。

また、ジャカルタでは交通渋滞の解消のため、2019年3月のMRT(大量高速鉄道)開業を目指し市内各所で工事が進められています。ただ、その工事によって道路の幅員が狭くなっている箇所も多く、一時的にではありますが以前よりも渋滞がひどくなっている場所もあります。

5)洪水

インドネシアは5~10月が乾季で、11~4月が雨季とされています。サイクロン(北インド洋に発生する熱帯低気圧。台風と性質や構造は同じ)被害は日本の台風被害より小さいので、その点では「天候に恵まれている」といえます。雨季の季節でもスコール性の激しい雨が短時間降ることが多く、日本の梅雨のように数日にわたり雨が続くということはありません。一方で治水政策や洪水対策が十分でないため、短時間でも大雨が降ると首都ジャカルタでも道路が冠水するなど、洪水被害に見舞われることは珍しくありません。ジャカルタ周辺でも土砂崩れなども起こります。また洪水が起こると、上述の渋滞がさらにひどいものとなります。

6)ハラル認証

インドネシアでビジネスをする日本人は、インドネシアがイスラム国家であることに注意しなければなりません。イスラム教ではアルコールと豚を摂取することが禁じられています。これを商品に当てはめて考えると、例えば、豚から採った豚脂を使った食品や、みりんで味付けした加工食品をインドネシアで売ることはできません。しかも単に豚やアルコールを使わなければよいというわけではなく、ハラル認証の対象商品を流通させるにはイスラム教の戒律に違反していないことを証明する「ハラル認証」を受けることが必要です。

ハラル認証の対象となるのは、次のようなカテゴリの商品です。

  • 食肉や動物エキスが入った加工食品 
  • 食品添加物 
  • サプリメント 
  • 化粧品 
  • 医薬品

ハラル認証を得るには費用もさることながら複雑な手続きが必要で、工場や流通経路までチェックされます。ハラル認証のためにインドネシア進出を断念した日本企業もあるほどです。現在は上記のように食肉や畜産加工品、化粧品や医薬品等の一部の製品で必須となっていますが、2019年にはハラル製品保証法が施行予定となっており、施工されると上記以外の多くの製品に関してもハラル認証を受けることが義務化されます。インドネシアに進出する企業は、根気強くハラル認証取得に取り組むことが必要になるでしょう。

7)労働者保護政策

インドネシアの労働政策は、労働者保護の考えが浸透しています。日本と同様に、正社員を解雇することはかなり厳しく制限されているので、非正規で現地スタッフを採用する日本企業は少なくありません。ところが、労働者の労働条件向上に対する意識が高いため、ジャカルタ市内で正社員化を求めるデモが起きることもあります。一方で、労働者の転職も活発で、2~4年ほどのスパンで転職を繰り返す人も少なくありません。また、起業意識の高い人が多いのも特徴で、会社勤めの人でもオンラインなどで副業を行っているケースが多く見られます。日本企業は現地の労働環境や労働市場の特性を把握したうえで、計画的な採用を心がけたほうがいいでしょう。

8)外資が参入できない事業分野

インドネシア経済には保護主義的な傾向もみられます。国防産業(武器や弾薬の製造など)は外資をシャットアウトしている分野です。また国防産業以外の外資の禁止・規制業種は、インドネシア政府が発表する「ネガティブリスト」にまとめられています。これによると、化学産業(環境破壊や化学兵器に関する物質の製造など)、アルコール飲料産業、カジノなどは、外資だけでなく国内の投資も禁止されています。金融、保険、職業あっせんはインドネシアの国内資本ががっちり押さえているので、完全に参入できないわけではありませんが、日本からの参入は簡単ではないでしょう。一方、卸、倉庫、飲食、情報通信、製薬、病院などは外資に寛容です。

このように日本企業がインドネシアへの進出を検討する際は、自社の事業内容がどの程度の規制を受けるかを事前に調べることが重要となります。ネガティブリストはしばしば改定されることがあるため、専門機関を利用することをおすすめします。

インドネシアは経済発展が著しい国であり、なおかつ親日国なのでビジネス環境としては申し分ないといえます。しかし現地の商習慣や国民性、ビジネスへのモチベーションなどを「見誤る」と、思わぬロスやトラブルを抱えることになりかねません。そのため、インドネシアに進出を検討している企業や経営者は「プロのリサーチ力」に頼ることをおすすめします。

global-research_banner.PNG

監修者プロフィール

土橋 将行(どばし まさゆき)
2000年インテージ入社。国内で様々な業界のリサーチを担当し 、市場理解・ターゲット理解、施策の立案、そして評価と幅広い課題に対応。その後、2014年から2018年までインテージインドネシアに駐在。現在は、雑貨・化粧品メーカー様のなどの海外業務を担当。

関連記事