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大学生と創る料理体験の未来
~産学連携生活者研究プロジェクトならではの気づき

大学生と創る料理体験の未来<br~産学連携生活者研究プロジェクトならではの気づき class="size-full object-cover">
  • 生活者研究
  • 産学連携

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取り組み内容:産学連携による大学生とのワークショップを通じて、若者の食や料理にまつわる意識や実態を探求した。
成果:若者の食や料理に関する意識や行動実態の捉え方をアップデートすることで、現代の若者の食や料理体験を豊かなものに導くヒントを得ることができた。
左からキッコーマン仲田氏、茂木氏、インテージ田中

キッコーマン おいしさ未来研究センターは「おいしさ」や「食にまつわる人々の暮らしと気持ち」そして「人々を取り巻く社会の変化」を調査・研究し、生活者の意識や行動の変化から潜在的なニーズを捉えるとともに、その知見を商品開発やマーケティングなどの事業活動につなげることを目的として2017年4月に設立された組織です。

今回は、2023年からインテージと取り組んできた産学連携生活者研究プロジェクト(企業と大学・大学生による探求)について、同部署に所属する仲田氏、茂木氏にお話をお伺いしました。

産学連携生活者研究プロジェクトとは
「オープン&フラット」を哲学として、複数の企業と大学がコンソーシアム形式で集まり、探求を重ねる。テーマはZ世代や健康など。2022年にスタートし、2026年は6クール目に突入する。2026年8月現在、参加企業募集中。

――はじめに担当している業務の紹介からお願いします。

仲田氏:おいしさ未来研究センターで得られたリサーチの知見を社内のさまざまな部門と共有し、商品開発やマーケティングなどの事業活動に活かしていくための連携や仕組みづくりを担当しています。

キッコーマン株式会社 おいしさ未来研究センター おいしさ未来推進チーム 
チームリーダー 仲田 真知子氏

茂木氏:私は産学連携プロジェクトのような国内における若年層を対象とした研究をやらせていただきながら、メインの業務として国内外のリサーチも担当しています。現在入社4年目ですが、入社して数カ月目から産学連携プロジェクトを担当しています。

キッコーマン株式会社 おいしさ未来研究センター 消費者解析グループ 茂木 春佳氏

田中:企業と大学が一緒に、かつ競合他社さんも交じって、という産学連携プロジェクトをご紹介したときはどのように感じましたか?

仲田氏:以前から社会全体で大きく捉えていくテーマを産学連携などの場で扱っていきたい、と思っていました。競合他社が入っているのも視点の広がりとしても、むしろ面白いかな、と思いました。それぞれマーケティングで競合するところはあっても、向かい合っている課題は共通するものも多いと思います。

田中:茂木さんは2クール目からのエントリーでしたね。

茂木氏:新卒で入社した直後だったため、キッコーマン社員の一員として大学生を前に立って話をすることに緊張しました。企画会議のとき、田中さん、仲田から「若年層の代弁者となって、両者をつなぐかけ橋になって欲しい」と言っていただいたことがとても印象に残っています。その言葉を受けて、「学生の気持ちを一番理解できるのは私かもしれない」と前向きに捉えられるようになりました。その後、学生の皆様との対話を重ねながら「キッコーマンは若年に向けて効果的にアプローチしきれていない」という課題を感じるに至りました。ミツカン様ともワークショップでご一緒させていただいて、みんなでディスカッションを重ねることで、多くの面白い発見がありました。そうした体験を入社1~2年目で経験できたのは本当に良かったと感じています。

田中:茂木さんは私たち企業サイドの視点に加えて、学生の皆様の視点や気持ちも考えながらミーティングで発言をされていましたね。より伝わりやすい質問の投げかけ方や彼らの発言の読み解きなど、茂木さんのリアリティーのあるアドバイスに良い刺激をもらいました。プロジェクトに茂木さんがいてくださって良かった!と思いました。

株式会社インテージ 生活者研究センター センター長 田中 宏昌

茂木氏:このプロジェクトが大切にしているオープン&フラットなマインドを感じていました。大きい組織の中では自由に発言するのが難しい場面もありますが、さまざまな会社の方が「日本の食の変化」や「若年層の理解不足」という同じ悩みを持つ中、興味深く自分の話を聞いていただけたことはありがたかったです。

仲田氏:若者のことは若者が捉えた方が理解も深まる場合もあります。茂木が若年層の感覚や価値観を私たちに伝える役割を担ってくれることを期待していました。ご一緒した中央大学の酒井先生に「ワークショップは茂木が責任者で全て彼女に任せています」と伝えたところ「すごいですね!でも茂木さんへの信頼の表われですね」と驚かれていました。実際に学生との対話を重ねる中で、茂木らしい強みがどんどん磨かれていきました。いまや社内でも「若年層研究」といえば茂木、と言える存在になっています。

田中:これまで5クールの探求を重ねてきましたが、続けてきた理由はどんなところにありますか?

仲田氏:はじめは「若い人にもっとしょうゆを使って欲しい」というようなメーカー目線で探求を始めていました。ところが、調味料以前に「若い人はどんな料理をしているのか?」という問いに行きついて、そこから少しずつステップアップすることで若年層の解像度が上がっていきました。解像度が上がる中で、弊社としては「My First調味料」ではなく「My First料理」にアプローチすることが大事、というように舵を切っていきました。

田中:「若者にとってのはじめての料理とは?」といった問いでしたね。

仲田氏:そもそも何を食べているのか?作っているのか?をリアルな声で聴く。ゼミの片隅に身を置いて学生同士の自然な会話をそっと聴いている。といった感じです。最初の驚きが「普段どのようなものを食べているの?」と尋ねたところ、ごく自然に「白湯(さゆ)です」という返事がありました。「あっ、白湯って彼女にとって食事なんだ」という驚きがありました。その瞬間、今までの考えがガラッと変わりました。一方で、そういう発言をする人も、家庭で食べていた料理の思い出を大切にしていて、そのギャップも面白いな、と思いました。

田中:若者は何をご飯や料理として考えているのか?という根本的な問いの始まりでしたね。

茂木氏:その次のワークショップは学生の皆様とお母様あるいはお父様、さらに同じ食品メーカーであるミツカン様と一緒にワークショップをするという、ユニークな設計でした。もともとは第1クールで把握した食実態を元に「My First調味料」として弊社のしょうゆやミツカン様の酢との関係をどのようにデザインするのか?という話だったと記憶しています。ところが、いざ始まってみると調味料以前にそもそも料理に関して知識や時間がない、という問題が横たわっていました。共働き世帯の増加やコロナ禍だったこともあり調理実習機会の激減など、社会的な背景も踏まえて若者の料理を捉え直す必要性に気づけたことが大きな成果でした。

田中:成果、さらには新しい問いの始まりでしたね。

茂木氏:そうですね。一方で、若者の中でも「料理をしたい」と思っている人が一定数いるということも把握することが出来ました。ただ「料理をしたい」と思っていてもできていないのには理由があるはずです。そこをもっと考えたいなと思っています。

田中:「作ってみたい」という気持ちの中にもレイヤー(階層)がありましたね。実施後に皆様と振り返りを重ねながらレポートを作っていったのが懐かしいです。

茂木氏:「My First料理」と問いを置きなおしてから若年層の本当の思いが感じられるようになってきました。「料理をしていない背景にはこういうことがあるのかもしれない」や「こういうコミュニケーションの方がもっといいのかもしれない」と、私たちの理解も深まりました。

田中:ワークショップの設計も変わってきましたね。

茂木氏:5クールの時でしょうか。学生の皆様にただ「やってみてください」と投げかけるのではなく、「私たちはここまで探求して理解を深めているけれど、皆さんから見て違うところがあれば正直に教えてほしい。共感できる部分も『こうすればもっと若者に伝わる』という提案まで一緒に考えていきたい」というスタンスに変えたことで新しいものを創出できました。

田中:学生の皆様を一緒に探求するメンバー、仲間として、これまでの道のりを共有しつつ新たな発想を得るためのワークショップでした。本当に丁寧なオリエンテーションを茂木さんにしていただきました。学生の皆様が探求テーマを自分事化していく様子が伝わってきました。

茂木氏:メーカー目線だと、商品をどう若年層に売るか?ということが先行しがちですし、「料理をしてもらいたい」という発想になりやすいと思います。また、「料理上手を目指してもらう」という考えもあるでしょう。ただ私自身にあてはめても、料理上手になりたくて料理を始めたわけではありません。根底には料理していることで「しっかりとした暮らしをしている感覚が得られる」、「だれかに喜んでもらいたくて料理をする」という想いがあったように感じます。人それぞれの目的や目標、背景があるはずで、「料理が目的なのではなく、思い描く世界や体験を実現するためのプロセス」と捉えなおしできた回でした。

田中:(レポートを指し示しながら)山の頂に「推し活」があるのもイマドキですよね。こうした成果を他部署の方と共有しつつ連携することはありましたか?

仲田氏:メニュー開発を担当する部門や企業ブランディングを担当する部門などに調査結果を共有したほか、大学とのワークショップに参加してもらったこともあります。まだ本格的な活用はこれからですが、「若年層の生の声を直接聞けて良かった」という感想もいただいています。こうした気づきを社内でも共有しながら、それぞれの業務や課題を考えるヒントにつなげていければと思っています。

田中:あらためてですが、この産学連携というプロジェクトを振り返ってみると?

茂木氏:私たちが大学に赴くことで、学生の皆様の生活圏内に私たちが入り込めているというのが大きいです。通常の座談会だと「初めての人と会うから緊張してしまう」という感情や「聞かれたことに一問一答で答えればよいのでは」といった気持ちもあると思います。しかしながら、普段一緒にいるゼミ仲間と何かを共創していく中では言いたいことも言い合えます。その空気が良いアウトプットにつながっていると思います。

田中:学生さんたちへの入り込み方がお二人とも上手ですよね。そして、いつも楽しそうにやりとりをしていらっしゃいます。

茂木氏:1年目の時は年齢が近いこともあり、「皆さんと同じ目線ですよ」というスタンスでしたが、4年目になるとさすがにちょっと上の世代として見られるようになりました(笑)。それでも学生の皆様が活発に意見を交わしている所に自然と入っていくことができました。学生主導でいろいろな発言があり、その中の1人として私たちも入れるというのが、他のインタビューとは異なるこのプロジェクトの醍醐味です。こちらから質問をするというよりも、学生の皆様が話したいことを話してもらう。盛り上がっている良い空気をあえて止めず、熱量や雰囲気ごとリアルな声を聴くことができる機会は、他ではなかなかありません。

田中:ゼミを受け持っている大学の先生が一緒に参加している、という部分はいかがでしたか?

茂木氏:私たちが一緒に取り組ませていただいた先生方は、私たちの課題感や関心をとても深く理解してくださっていたので、アカデミックな視点で「この結果はこうした理論と紐づいている」というアドバイスをいただけたのは非常に有意義でした。第5クールでお世話になった早稲田大学の上條先生は学生の方からの提案内容に対して、「ゲーミフィケーション」という視点からフィードバックをいただきました。この考え方は、最終的な学生提案の軸としても重要な位置づけとなっています。

田中:産学連携で得られた結果をもとに実際の実務への繋ぎ方、活用をどのようにされようと考えていますか?

仲田氏:他の部門に情報共有しつつ各部門の課題感に合わせて、若年層の方々の声をお届けしています。一方で、ワークショップで出てきた学生の皆様の生の声や気づきを事業へ活かすことの難しさも感じています。今後は学生の皆様の声や気づきを共有するだけでなく、それぞれの部署の課題と結び付けながら、商品開発やマーケティングなどの具体的な取り組みにどう活かせるかを一緒に考えていきたいと思っています。まだ本格的な活用はこれからですが、社内ウェビナーなども活用しながら対話の機会を増やし、事業につながる形を模索していきたいですね。

田中:探求を重ねて気づきを深める、そして、実際の事業につながる形を模索する。理想的な歩みですね。α世代・Z世代といった若年層に限らず、昔とは異なりエイジレスでアクティブなシニアの登場など、多様化の進む生活者の理解はますます複雑になっています。そうした中、生活者を理解するための新しいアプローチが必要になっているかもしれません。複数の企業や大学が集まって、社会や生活者をオープン&フラットなマインドを抱きつつ探求する。若者を知りたければ、大学生の世界にダイブしてみる、という今回の取り組みも一つのチャレンジだったと思います。
今後は「My First料理」や「目的としてではなく、手段としての料理」という気づきのその先にある「手段としての料理が組み込まれた新しい体験のデザイン」がテーマになりそうですね。今後も新しいアプローチも積極的に用いながら生活者理解を起点にキッコーマン様のマーケティング・パートナーとして貢献していきたいと考えています。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがあります。ご了承ください。

この事例について、
ご興味のある方はお気軽にご相談ください

  1. 業界

    食品

  2. お客様

    キッコーマン株式会社

  3. ご担当者様

    おいしさ未来研究センター おいしさ未来推進チーム チームリーダー
    仲田 真知子氏
    1999年、キッコーマン株式会社に入社。研究部門でおいしさや味覚の研究に携わり、その後は商品開発本部でたれ類の商品開発を担当。2017年のおいしさ未来研究センター設立とともに同センターへ異動し、食を通じた生活者理解と、センターで得られた知見を事業活動へつなげる取り組みに従事している。

    おいしさ未来研究センター 消費者解析グループ 茂木 春佳氏
    2023年、キッコーマン株式会社に入社。
    入社1年目より産学連携生活者研究プロジェクトに参画し、若年層(Z世代)の食意識や料理にまつわる調査・ワークショップ運営を担当。
    現在は国内外の市場リサーチや世代研究を中心に幅広くリサーチ・研究に従事。

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